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第一章 ⑦

カーマインに連れられて僕達は赤薔薇家にある“絶炎の間”へと向かっていた。

名家と呼ばれる家々にはそれぞれ初代当主が遺した魔力の象徴がある。

赤薔薇家には、初代当主が巨大な結晶に魔力を注ぎ込み灯したと言われる最初の炎が納められているのだ。

炎がある場所は城の最奥にあり、見張りのついた厳重な扉に守られている。

赤薔薇家の象徴を拝められるなんてまたとない機会だ…!僕の心は沸き立っていた。


「開けてくれ。」

そう言ったカーマインは見張りに命じるとゴゴゴッと重い扉が開かれる。


わぁ…綺麗。

結晶の中には今も燃え続ける炎があった。


「…とっても、美しいです。」


「ええ。穢れなき始まりの炎です。」


圧倒される美しさにしばらくの間、皆口を噤み思わず見入ってしまっていた。

その為か、小さなトカゲが部屋の中に1匹入り込んでしまった事に誰も気が付かなかった。


チチッ‥チチッ‥

(ドクンッドクンッ。グゥ‥。)


ん?なんだこの魔力は。そう思い、はっと後ろを振り返ったカーマインの視界に映ったのは、鱗の体は炎に包まれ口から涎を垂らしながら火を吹くサラマンダーだった。


「サラマンダーだ!くそ、何故こんなところに…!

衛兵!みんなを連れて逃げろ!」


「お兄様!」


(扉は1つ、窓もない。

くそっ、小さなトカゲでも入り込んだか?)

「おいトカゲ、炎の魔力はそんなに美味いか?」


サラマンダーは大口を開けカーマインへと飛びかかった。

カーマインは炎を纏わせた剣を構えて思い切り振るった。

だがサラマンダーの鱗は硬く簡単には刃が通らない。


「皆様大丈夫ですか?!今のうちにこちらへ!」


衛兵がそう言った瞬間、サラマンダーは私達の方をギラっと向くと“逃がさない”と言わんばかりに火を吹きながら、紅くギロギロとした瞳でこちらを見た。

まるで蛇に睨まれた蛙の様に私達は動けなくなってしまった。


「おい!こっちだトカゲ!こっちだ。」


そう言ったカーマインは少しの隙も見逃さなかった。サラマンダーが私達の方を見た一瞬の隙に、腹を突き刺した。

グァァー…!!

サラマンダーはカーマインの足元に倒れた。


(はぁ、はぁ、倒したか?)


「お兄様…!!」


ローザが駆け寄ると兄の額には汗が滲んでいた。


「…大丈夫だ。だが、この部屋は魔力が溢れている。早く移動させなければ、衛兵!手を貸せ」


「はっ!」


衛兵とカーマインが共にサラマンダーを運ぼうと手を掛けた瞬間、閉じていた瞳がギラっと開いた。

グァァー!!

サラマンダーは衛兵に向かって思い切り火を吐いた。


「うわぁっー!!」


「…ッくそ、浅かったか。」


サラマンダーは間髪入れず、衛兵が離れたローザ達の方に向かって炎をはいた。


「ローザッ!」


カーマインは咄嗟に手を伸ばしたが間に合わない。



瞳いっぱいに迫り来る炎が映る。

僕はカナリアを庇う様に咄嗟に自分の後ろに隠し、地面に手を付ける。

しかし土魔法を使うには場所が悪かったのか上手く魔法を発動できない。

もう駄目だと思い、目をぎゅっと閉じて願った。どうかカナリアだけは。と抱きしめた刹那───…

僕の傍らを駆け抜ける気配にハッと目を開き、その視線の先、熱風に舞う美しい赤い髪の正体に目を見張った。


「火炎球!」


凛々しく響く声と共に彼女の手のひらから大きな炎の球が放たれた。

それは、サラマンダーの放った炎と大きな音を立てて衝突し相殺し合って消え去った。


「──終わりだ!!」


そう言ったカーマインの剣が今度こそサラマンダーをの心臓を貫いた。




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