第29話 作文のコツ
第29話 作文のコツ
国語の授業で作文を書くことになった、題名は『自分の学校生活』
国語の担当の男の40代位くらいの先生が言った。
「いかにいい子ぶって嘘をうまく書くかが勝負どころだ、作文に書くことなんてほとんど嘘だからな」
「国語の教師がそれを言ったらお終いだよ!」
「だって、そんなきれいごと思っているわけないだろ、もっとクソな感想本心は思っていないよ、本音と建前を上手く使い分けるのがいい作文を書くポイントだ」
「本音で書いてたら先生に怒られるからなあ」
「大体書いているのは建前だ、覚えとくといい、あと、感想とか、本音だと特に何も感じない、だが、建前ではとても素晴らしい○○でした、と、嘘でもいいから書くんだ、ぐっとマシになるぞ」
「長谷川は作文書けるのー?」
「言うより、作文の書き方を習った事がない」
「はー?」
「俺、学校行ってなかったんで、作文を書く機会もなかったし、書き方を教わりもしなかった」
「どうやって乗りきったんだ?」
「報告書のように書いた、作文に何時何分に何をしたかしか書かなかったから」
「例えばー?」
「『12時半、俺達は昼飯を食べた。美味かった。1時5分、店を出た。1時半、○○行きのバスに乗った。2時18分、目的地に到着』とか」
「それは作文じゃない、『報告』だよー」
「もっとひどい作文も書いた事もある」
「と、言うとー?」
「一行ずつ間隔をあけて、箇条書き、とかポエム書くとか」
「さすがに許されなかったでしょー」
「締切ギリギリに違う先生に出して、その先生がそれを見て『これは担任の先生はいいってい言ってたのか?』と言われたが、『はい!、良いって言っていました』と嘘をついた、今思うとめちゃくちゃ、すごいぞ、何時何分に○○に行った、した、○○だった(小並感)、の繰り返しで突き進んでいくんだ」
先生は付け足して言った。
「あと良い作文書いたからってそいつがいい人間だとは限らない、すごいいい作文を書いた人間の屑もいたからな、あれは人間性が出るとか言うけど出ない、書く文字の綺麗さに人間性が出るとも言うが出ない、字が綺麗な人間の屑がいたからな。やろうと思えばクズでも作文で賞を取ることもできるぞ」
「クズの考え多分で賞なんて取れるんすか?」
「取れるよ、簡単だ、自分の考えと逆の綺麗事を書けばいいだけなんだから」
「そういう考えもあるのかあ…」
「いいこと書いて文字が下手だと読んでくれないんですが」
「本当に丁寧に書けば字が下手な奴でもうまく書けるぞ、お前ら、文字を書く時早く書くだろ、それをやめろ、一文字に十秒かけてもいい、とにかく丁寧に、落ち着いて書けば大丈夫だ、字を早く書いてへたくそな字を書いてると書いたカンジがしないし、頭に入った気がしないから字を丁寧に書くのを心がけて勉強するのはお勧めだぞ、字が汚いと漢検の時に字があっていても点数に入らなくなるからな、あと作文をよく書けるようになるより小論文やレポートをよく書けるようになった方が役に立つぞ、」
「小論文ってAO入試とかで使う奴ですよね」
「僕ら一般で受けるつもりなんでいるのかな…?」
「京王大は国語の代わりにに小論文だぞ」
「自分に必要じゃないではないですか!」
山口君が言った。
「作文は適当でいいんだ、平常点に反映されないから小論文とレポートは本気で、じゃないと不可とられるからな」
「身もふたもないこと言った!」
「小論文は大切だぞ、昔、体育の先生が国立大学の推薦入試を受けた時小論文白紙で出したら落ちたからな、曰く、何もしなくても受かると思ってた、と」
「それは落ちますよ」
俺が答えた。
「作文は白紙で出さなきゃそれでいい、小論文は本気で書かないと落ちる」
「作文の授業なのに身もふたもないこと言った!」
「反省文は作文だけど真面目に書かなきゃ怒られるけどな」
「作文は適当って言ったのに反省文は作文だけど真面目に書かなきゃダメなの!?」
「これは社会出た時にも通ずる」
「じゃあ作文も真面目に書かなきゃダメですよね」
「あっそうだ」
自分の言って言っていたことの矛盾に気付いた先生であった。