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46 最終話 この国に生きる全ての人達に、私が亡くなっても私の事を覚えていて欲しい

ついに最終話です!

後程登場人物紹介もアップしますのでよろしくお願いします。

 戦いは終わり、私達は王宮に戻ろうと軍勢と帰路に着いていた。


 だが、事件はその時に起きた。

 何と、私達の帰路の途中で盗賊が現れ、その連中を返り討ちにし、アジトに踏み込むと……その連中はバカ王子を捕らえていたのだ。

 どうやら彼は言葉巧みに騙され、聖女連盟に合流する為に移動中だったのを盗賊に捕らえられ、捕まっていたらしい。


 オウギュストは憔悴しきり、放心状態だった。


「うへぇ、へへへあああへぇ……ぼくぅは、おうさま……だぞぉ……えらいぃ……ンだぞぉ……」


 彼は完全に壊れていた。

 盗賊が彼相手に何をしたのかはわからない。

 だが、一般人は彼を聖女教の操り人形のバカ王子だと思っている。

 あの盗賊も元々食うに食えず落ちぶれたとすれば、怒りも心頭だろう。


 可哀そうとはいえ自業自得だ。


「レルリルム様、オウギュスト王は俺が連れていきます」

「ええ、頼むわ」

「……我が弟とはいえ、哀れだな。お前もレルリルムに人生を変えてもらえたかもしれないのに、その機会を自ら失ったのか……」


 オウギュスト王子が捕まり、聖女連盟を名乗っていたフランクリン以下、聖女教と悪徳貴族が全員連行された。


 旧聖女教の関係者と悪徳貴族はその尽くが処刑された。

 その処刑法は凄惨極まるもので、中でも特に凄まじかったのは王宮前の広場にフランクリン、スティムスン、グローヴス、オッペンハイマーの四人が吊るされ、道行く人達が好きに棒打ちをするものだった。

 それは彼等全員が絶命した後も吊るされ続け、腐って骨になっても半年以上住民達に棒で叩かれ続けた。


 隣国のウッドロウ大公以下聖女連盟に加担した者達も、英雄王クローヴィスによりその尽くが処刑され、旧体制派の貴族の大半に血の粛清が行われた。


 多くの血を流し、ようやくこの国にも平和が訪れた。


 ――そして数年が経った……。


 元王だったオウギュストは王宮の高い塔に幽閉され、一生外に出る事は許されなかった。

 だが彼は壊れてしまい、空想の中の理想の国の王になっているようだ、これはこれで彼にとっては幸せなのかもしれない。


 私の父ドリンコート伯爵は聖女、王妃の肉親という事で温情を貰い、自らの城から一生出られないようにされた。

 だが既に重度の引き籠りになっていたドリンコート伯爵にとっては別に拷問でも刑罰でも何でもないようだ。

 これはこれでアリなのかもしれない。


 冤罪で捕まっていたバートン子爵は解放され、聖女教を倒した聖女アンリエッタの父親として恩賞を与えられ、陞爵して侯爵になり、鉱山町と元々彼の領地で親類の男爵に譲った土地も管理する事になった。

 どうも領地が増えた事でやる事が増えて頭を悩ませているようだが、それも受け入れての爵位だとあきらめてもらいましょう。

 彼には息子のアンリ・バートンが伯爵として補佐する事になり、政治面はどうにか落ち着いたようだ。


 ザフィラ達獣人には国内に自治区を与え、彼等の国を復興させた。

 その小国の王となったザフィラはシロノと結婚し、二人の間に子供が生まれたらしい。

 彼等は国民全員で私の国に忠誠を誓ってくれている。


 軍学校はテオドール公爵の元、軍人達の町として新たに旧レオ・レオニ村に設立され、村だった場所は大病院と軍港を持つ国の防衛の要になった。

 クロフトは新たに出来たこの軍港都市の市長として任命され、適切に街を運営してくれている。


 何というか以前この軍港都市を訪れたアンリエッタが、ヨコスカとかアナポリスみたいだと言っていたが、意味はよく分からなかった。

 テオドール公爵とギュスターヴ元帥がいる限り、この国が外敵に脅かされる事は無いだろう。


 そして私は王妃ではなく、女王として戴冠し……ジュリアスと結婚した。

 今、このお腹の中には――彼の子供がいる……。


 ワガママ娘だったはずの私は……国民を幸せにした事で、神様に最高の贈り物を頂いた。

 これ以上の願いを望むのは本来許されないはず。でも、私にはどうしても一生をかけて叶えたいワガママがある‼ それは…………。




 ――王国の城を見下ろす小高い丘に、訪れる人の絶える事無い墓がある。

 その墓は決して派手ではないが、いつも綺麗に手入れされ、たくさんの花が飾られている。


 『最後の聖女』

 『救国の母』

 『国母』

 『慈愛に満ちた女性』

 『誰よりも気高く、愛されたワガママ娘』


 彼女の事を言い表す言葉を数えればキリが無いだろう。


『レルリルム・アングレーム』またの名を『レルリルム・ドリンコート』


この墓に眠る女性の名前だ。


彼女は決して裕福な家に生まれたわけではない。

いや、むしろ最底辺に生まれたという説すらある。

その貧困の中で最愛の母を亡くし、引き取られた孤児院では想像を絶する筆舌しがたい仕打ちを受けたと言われている。


 その後、実の父であるセドリック・ドリンコート伯爵に引き取られた彼女は、ワガママで周りを振りまわす少女になったそうだ。

 しかし彼女の不思議な事は、これらのワガママが全て後の国の発展につながっていたのである。


 彼女は最初にレモンパイを食べたいと言って国中の砂糖を全て買い占めた。

 しかし、それは詭弁であり、彼女はその砂糖を自ら考案したお菓子のおまけとして二束三文で庶民に売ったのである。

 この事により、砂糖を牛耳っていた商人ギルドと悪徳貴族は砂糖の独占価格崩壊により、その商売をやめざるを得なくなった。


 その後彼女は奴隷市場に現れ、言い値で奴隷だけではなく市場そのものを買い叩いたという。流石の彼女もその資金を工面するのは苦労したらしく、父親の別荘と鉱山を友人の父親に売りつけたという。

 だがその鉱山からは金が発掘され、そのきっかけとなった落盤事故は騎士団と彼女の部下になった獣人達により一人の死者も出さずに済んだ。


 この事が後に、獣人の奴隷解放運動につながり、彼女の豊富な人材の礎になったと後の歴史家は論づけている。


 そして彼女は自らのいた孤児院を欲しいと言い、若干12歳で孤児院の経営者になった。

 人身売買や犯罪ギルドへの斡旋になっていた孤児院の経営陣を刷新した彼女は、後の国の重臣となる人材を次々と発掘した。


 この孤児院出身者の事は、今では『レルリルム学校』と呼ばれていて、軍人や政治家、芸術家など、各方面で活躍し、年に一度は彼女を慕って卒業生全員が集まる盛大なパーティーを主催している。今ではこのパーティーに末席として参加できるだけで国のトップに認められたと言われている程だ。


 王国騎士団長ギュスターヴ元帥、獣人兵団団長白獅子ザフィラ、名宰相アンリ、最高司祭クロフト。

 彼等は全てレルリルムの忠実な部下だったと言われている。

 今となっては、我が国で誰一人として子供ですら知らぬ者の無い名前ばかりだ。


 その後、彼女は後に名宰相と呼ばれたアンリ・シュターデンの元で勉強し、学校で優秀な成績を修めた彼女は、愚王と言われている『オウギュスト・アングレーム』の婚約者となった。

 彼には婚約者として『アンリエッタ・バートン』という人物がいたが、絶世の美女であり、国一番の才媛と呼ばれたレルリルムに対し、移り気なオウギュストはアンリエッタとの婚約を破棄し、彼女を追放、その後レルリルムを自らの妻にした。


 国を追放されたアンリエッタだったが、隣国の英雄王クローヴィスを支え、後の女王になったレルリルムと友情を超えた厚い信頼で結ばれていたという。


 だがレルリルムの人生はここからが本番だった。

 この国では王妃とは聖女と呼ばれる力を持つ者の事だった。

 しかし、レルリルムは聖女の力を持っていなかったのだ。


 本当の聖女だったアンリエッタを失い、王国は未曽有の大災害に何度も襲われた。

 しかし、聖女の力を持たなかったはずのレルリルムは、自らの勉強と努力で予言にも等しい未来予測をし、彼女自らが築き上げた財力を使い、それらの災害全てを自らの権限で指揮した為、被害を最小限に留める事ができた。


 災害の原因はニセ聖女が国にいる事だと決めつけてきた聖女教枢機卿フランクリンは隣国の大臣ウッドロウ大公と組み、聖女連盟を名乗り、王国に戦争を挑んできた。

 だがレルリルムは刷新した王国軍の力でそれら反乱軍とそれに加担する隣国の悪徳貴族を征し、聖女アンリエッタや英雄王クローヴィスと共に聖女連盟を倒した。


 その際にレルリルムの味方になった者達には人語を介する猫や異形の姿の戦士、巨大な空を飛ぶ鉄人形がいたと言われているが、それは聖女の奇跡によるものだと言われている。


 その後も彼女は国のために生き、奴隷解放、農地改革、流通の安定化、灌漑工事、格差是正、国営病院の設営、社会整備の構築、貧困撲滅、犯罪の根絶、国土強靭化、それらの偉業をたった一人で指揮し、全て成し遂げた。


 その後聖女教を廃止し、貧しい国民達のリーダーとして愚王オウギュストを幽閉した彼女は、女王に就任。

 彼女は隣国との協力の上で、この国の危機を全て回避し、幼い頃に関わりのあった第一王子ジュリアスと結婚し、沈まぬ王国を築き上げた。


「わたしはこの国と結婚したのです」


 そう言った彼女は、自らの息子を立派に育て上げ、それ故に今、この国が存在する。


 ――彼女が亡くなった時……国中の全てが泣き、喪に服した。

 そして彼女の亡骸は国の全土が見えるこの場所に葬られたのである。


『レルリルム・アングレーム』


 国の母と呼ばれたワガママ娘はこの地で最後の願いをかなえた。

 それは……。


『この国に生きる全ての人達に、私が亡くなっても私の事を覚えていて欲しい』


 という願いだった。


 この国で、国の母とも呼ばれたレルリルムの名を知らぬ者は、誰一人としていない……。


 ワガママ娘は最後の最後まで自身のワガママを貫き通したのである。

最終話まで書き終わりました。

初の完結作品が書けて良かったです。

ティアムーン帝国物語や外科医エリーゼみたいな悪役令嬢系のやり直しや内政立て直し作品が好きなので挑戦してみましたが、いざ自分で書いてみると大変でした。


今後は不定期で他のキャラサイドからの話とかも書いていきたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


次回作は全く毛色の違う、子供の頃見ていたロボアニメの超絶不人気悪役転生のロボットエンジニアの男主人公の話をスタートしますので、こちらもよろしくお願いします。


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