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43 聖女教会を潰したい!

 居抜きという方法。

 つまりは前に入っていた店が立ち行かなくなってしまった場合にその店の内装をそのまま使い店を作ってしまうやり方だ。


 この方法を使えば本来数週間から一か月くらいかかる店の開店が一週間以内に可能。

 内装さえ整えれば、数日で店を開ける。


 子供の頃私がお菓子屋を作る際に使った方法だ。


 これを私は大規模にやってみる事にした。

 王立美術館はフーバー元枢機卿が国民にも娯楽は必要だと言い、枢機卿だった時に国王に推進して建設された建物だ。


 だが、フーバー元枢機卿の肝いりだった王立美術館は、彼の失脚後誰も近寄らない廃墟になっていた、

 だが廃墟とはいえ、何階建てにもなっているこの建物は、美術品を展示する目的で作られたので強固で堅牢な造りになっていた。

 それが幸いし、老朽化はほとんど見られていない。


 私は人材ギルドの人員を総動員し、ここを大幅改修させて軍学校の施設として使う事にした。

 政治に興味の無いバカ王子のオウギュストは勿論だが、フランクリン、スティムスン、グローヴス、オッペンハイマー、全員今は戦争の事や結婚式の利権の事を考え、こちらには全く目が向いていない。

 私はそのチャンスに一気に作戦を進め、一週間もかけずに王立美術館を王立軍学校として改修し、テオドール将軍を招待した。


 正式な辞令が出るまではまだ彼は王国騎士団副団長である。

 その彼が王立軍学校の建物を見て感想を述べた。


「これは、懐かしい……フーバーが建てようと奮闘していた王立美術館の跡地か……」

「はい、こちらの建物、今はどこの貴族も団体も使っていませんでしたので、私が手に入れました。ここがテオドール校長の新たな職場になります」


 私は館長室になるはずだった立派な場所を、軍学校の校長室に改装させ、テオドール将軍をそこに座らせた。


「このような立派な椅子をこの老いぼれに……」

「テオドール将軍、この国を変えるのは……ここに集まる者達です」

「ここに集まる者?」

「はい、余所者、若者、馬鹿者。これこそが国を変えるのです!」


 私が読んだ本に書いていた内容、それがこの余所者。若者、馬鹿者だった。

 この国で当てはめるなら、余所者は獣人達、若者は孤児院の子供達、そして馬鹿者はこの私!

 この三つを揃える事で国が変わるのよ!


「ハハハハ、自らを馬鹿者とは、だが……それくらいの意気込みがあるから今まで躍進的に動いてこられたのでしょうな。今の儂にはできん事だ」


 テオドール将軍は椅子に座り、羊皮紙に何かを書き始めた。


「レルリルム様、今書いたそれをすぐに揃える事は出来ますかな?」

「はい、これなら問題ありませんわ!」

「そうか、それなら思ったより早く始める事が出来そうですな」


 彼の私に必要だと言ってきたものは、武器防具と決められた制服だった。

 工業ギルドにアンリエッタの考案したベルトコンベアを取り付けた事で、流れ作業でやれば制服はすぐにでも量産可能。

 ミスリルとはいかないものの、武器は鋼鉄の剣が既にこの二年で大量に作られており、軍学校が千人を超えたとしても十分賄えるレベルだ。


 私とテオドール将軍は軍学校の準備を進め、一週間で学校は開校可能になった。

 ザフィラ、グスタフ達は伝書鳩で王都に来るように伝えておいたので、獣人達はもう到着したところだ。

 また、冒険者ギルドもギルド長ユリシーズの呼びかけで冒険者が全員軍学校に呼ばれた。

 他にも複数の男達が王都は勿論の事、レオ・レオニ村や旧バートン領、ドリンコート領等から集まり、軍学校は大軍勢になっていた。


 全員が集まった次の日、旧美術館の外の広場に軍学校入学者が全員並ばされた。

 そしてテオドール将軍による号令が伝えられた。


「よくぞ集まった、我が国の精鋭達よ! これより王立軍学校、入学式を執り行う。それではこの学校の設立者であるレルリルム様より御教示いただく! 皆の者よ、傾聴して聞くように!」

「皆様、私が軍学校設立者のレルリルム・ドリンコートです。皆様にはこの軍学校でこの国の軍人となるべく、努力、勉強をしていただきます。その際にかかる一切の費用は国が面倒を見ます。ここは、国の為に命を懸ける者ならば、誰でも入学歓迎致します」


 だがこの挨拶でイマイチ納得していない参加者が大半だった。

 そりゃあ何が悲しくてこの国で貴族や聖女教の手下にならなければいけないんだと思う人が大半だ。


「この国といいましたが皆様が仕えるべきは聖女教でもなければ悪徳貴族でもありません! この国に生きる国民の、皆様の家族、親類を守る為に戦うのです!」


 この発言で先程までと参加者の目つきが変わった。


「この国はもう腐敗しきっていて、このままでは滅びてしまいます。ですが皆様はそんな国家に忠誠を誓う必要はありません。国家ではなく、国に忠誠を誓って欲しいのです。皆様が守るべきはこの国に生きるあなた方の大切な家族、恋人、親類、そして友人です。その人達の為に命を、力を私に貸してください!」


 群衆の中から拳を掲げる者が出てきた、その数はどんどん増え、最終的には全員が拳を掲げていた。


「皆さん、ありがとう!」


 そして軍学校の入学式はなにごとも無く終わり、参加者たちの結束はとても強い物になっていた。

 その中にはフルフェイスの兜をかぶり続ける金髪の男もいた。

 ――あの背格好、間違いなく……。

 私は彼に問いかけた。


「赤い魚の……」

「目は黒い」


 声で分かった、彼はジュリアス王子だ。

 という事は、この軍学校にいるのは全員、私の前の人生での革命団で間違いない!


 やった、私は今の人生で革命団を全て自らの味方にする事に成功したんだ!


 軍学校の生徒達は全員がテオドール将軍監修の正規の騎士団と同じ訓練を受け、みるみるうちに強くなっていった。

 私はその間、軍人以外の人材ギルドの人材を総動員して結婚式パレードの準備を進めた。


 そして、二週間が過ぎた。


「よくぞ耐え抜いた、我が国の精鋭達よ。もうお前達は正規の騎士団にも負けはしない立派な力を身につけた。その力でこれからもレルリルム様の、新たな女王陛下の為に力を貸して欲しい!」


 え!? えええーぇっ!?

 テオドール将軍が訓練に耐え抜いた軍学校の参加者達に挨拶を述べたが、その中で彼はよりにもよって私を新たな女王と呼んでいた。


 その自覚は無かったのに……私はいきなり大きな期待を押し付けられてしまった。


 ――もういいわ、やるとこまでやってやろうじゃない!

 聖女教を……ぶっ潰す‼


 軍学校から出たザフィラ、そしてグスタフと他の獣人達、冒険者ギルドのアーネストとその仲間達、そして兜をかぶったままのジュリアス王子とその仲間達は、私につき従い、パレードの準備を開始した。


 明日はついにパレード開始の日だ。

 私はバカ王子の飲み物に睡眠薬を入れさせ、そのまま拉致して夜の内に天領まで移動した。


 クロフトが神父として私とオウギュスト王子の馬車の前に座った。

 そして私はオウギュスト王子と屋根の無い豪華な馬車の上に座り、パレードは開始した。


 今頃ビックリしているのはフランクリン達聖女教の連中だろう。

 私が裏金を回し、彼等の業者を全て買収したので彼等のやろうとしていた演出は何一つ時間も金も足りずに実行不可能になっている。


 ざまあみろ、いい気味だ。


 私は音楽隊の演奏と共に馬車でパレードを開始した。

 天領から始まったパレードは最初の人数が少なく、たった百人いるかどうかだった。


 そして最初の演出、悪代官の帽子が見えてきた。

 馬車の上にいる冒険者ギルドの腕利きの弓使いがミスリルの弓を使い、火の付いた矢で帽子を射抜く!

 すると帽子が真っ赤に燃え上がり、竿が兵士達に押し倒された。

 そして私の馬車が竿を轢いて潰した後、後ろにいた天領の住民達により麦や白麦――コメ――、ソバ等の穂を豊かに道に植えて実らせていった。


 辺りから歓声と拍手が聞こえる。


 そして馬車は移動を続け、天領からドリンコート領に到着した。

 私の父親ドリンコート伯爵には城で待機するように伝えられている。

 自分の娘が自分よりよほどの大金を稼ぐようになり、彼は城に引き籠って外に出ようとしなくなった。


 まあそのおかげで今の人生ではあの父親もタダの役立たずで、悪人にはなってないんですけどね。


 ドリンコート領に到着した私達は冒険者ギルドの面々と合流、彼等は聖女教騎士団ですら全員が持っていないミスリルの武器防具で全身を固め、力強く私の馬車の前を歩き始めた。


 途中で演出用に放たれた大型モンスターが出現したが、彼等はそのモンスターを何の問題も無く斬り捨て、道を切り拓いた。

 その後、馬車は旧ワイン工場で工業ギルドのスタッフ達と合流、この時点でパレード参加者はすでに五百人以上になっていた。


 聖女教関係者や没落した商人ギルドの連中が彼等を見たらビックリして悔しがるでしょうね。


 そして馬車はドリンコート領を抜け、旧バートン子爵領の鉱山の町に到着した。

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