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31 長持ちする保存食が欲しい!

「この方法はどうでしょうか?」

「駄目だ、底が抜けてしまう」

「入れる具材は長持ちするものを選んだ方がよさそうだな」


 わたしの提案で工業ギルドの工員達は今缶詰を試作中だ。

 ここは元々盗賊ギルドとして使われていた場所で、今はわたしの部下達が仕事場兼住居としている場所だ。


 ここで今工員達はわたしの提案した缶詰を再現しようと努力している。

 しかしいざ作ってみるとなると、どうやって作ればいいのか、みんなが試行錯誤しているみたいだ。


 鉄板を曲げて作ればいいと言うのもいれば、板そのものをプレス機にかけて抜き出す方がいいと言うのもいる。

 そうかと思えば砂か粘土で作った型に溶けた金属を流し込むやり方が一体形成でやりやすいと言うのもいて、どの方法で缶を作ればいいのかが分からない!


 工員達はわたしの為と言ってみんな寝る間も惜しんで試作品の缶詰を作ってくれている。


「あなた方、寝てなくて大丈夫なの?」

「大丈夫です、二徹三徹くらいでは寝てないうちに入りません。お嬢様の理想の缶詰を作るためには寝てなんていられませんよ」


 この人達、せっかくわたしがあの劣悪な環境から脱出させてあげたのに、今でも寝ずに作業をしようとしているの!?

 これじゃあ意味が無いじゃない!


「ふざけないで! まともに寝ていなくていい仕事ができるわけないじゃない! 何なのその変な形……。いいこと、あなた方は全員寝なさい! これはわたしからの命令ですわ!」


 工員達は作業場から離れ、渋々自分達の部屋に戻っていった。

 まあわたしからの命令とあっては仕方なく従うわよね。


 その後わたしは部屋越しにも聞こえるようないびきと歯ぎしりにビックリしてしまった。

 とりあえず全員寝たみたいなので明日の朝また来ましょう。


 次の日、わたしは工員達に訪ねてみた。


「どう? 頭はスッキリしたかしら?」

「お嬢様! どうなっているんですか。オレ、今までにないくらい身体が軽いんですけど!」

「俺もだ、たかだか数時間寝ただけなのに……」

「おじょうさまのいうとおりだったかもしれません、おら、どこかおかしくなってたのかも」


 工員達の顔から疲れた感じが抜けていた。


「いいこと、これからはこの工業ギルドは夜しっかり休みを取るように。そうね、朝日が明けるころまではしっかり寝るのよ」

「はい、お嬢様!」


 これで今後はもっといい仕事をしてもらえそうかしら。

 やはり睡眠は必須、それをわたしは前の人生でつくづく思い知らされた。


 前の人生で革命軍に捕まった私は、牢屋の中で寝させてもらえない苦痛を味わった。

 寝たいのに寝れない、この辛さは経験した者でないとわからない。

 だからわたしはこの工業ギルドの人達に寝る事を許されるすばらしさを教えたかった。


 実際きちんと夜眠るようになった工員達は缶詰の試作品を作るのにとてもいいアイデアを次々出してくれるようになった。


「お嬢様、中身は漏れるくらいピッタリに入れるのが良いと思います。何故なら樽や壺の中とかでも量が少ないとカビが生えますが、いっぱいいっぱいに注いでいる時はいつまでたってもカビが生えなかったからです」

「そうなのね、それでは缶詰はなみなみと注いで下さいませ」

「お嬢さま、缶を作ってみたのですが、やはり中身がふたを閉めようとすると底が抜けてしまうので溶接して作るのは止めた方がいいみたいです」

「わかりました、そこの汚れた場所は綺麗に掃除しておいてくださいませ」


 工員の人達は日々努力してわたしの理想の缶詰を作るために頑張ってくれている。

 さて、もう一つの工場は今どうなっているかしら。


「ザフィラ、シロノ。出かけますわよ」

「はい、わかりましたにゃ」

「レルリルル、わかった!」


 わたしは工業ギルドのギルド長ドワイトのいる元ワイン工場に向かった。


「おお、これはこれはレルリルムお嬢さん。お待ちしておりました」

「ドワイト、ミスリルの武器は用意できたかしら」

「はい、あと数名分で完成です。今はこちらにある分をお納めください」


 ドワイトは完成したミスリル武器を見せてくれた。

 凄い! これは、剣だけではなく、ハンマーに双剣、斧に槍、それに鞭に弓。

 冒険者ギルドの冒険者それぞれに合わせた注文で作られた武器は、リーダーのユリシーズによってそれぞれの冒険者に配られた。


「凄い! この剣ならジャイアントトードでも簡単に切り裂ける」

「この斧ならロックゴーレムでも砕けそうじゃな」

「このハンマー、ビッグシザーズの硬い殻でも叩き割れそうだ!」

「この弓なら、ビッグバードでも射抜けます!」


 冒険者達は手渡されたミスリル武器を手に、とても喜んでいた。


「そうそう、これもあるんじゃ」


 そう言ってドワイトの渡してくれた物は、胸当てや一部にミスリルの使われた手袋、兜などだった。


「余った材料で作ったもんじゃ。これくらいあれば十分じゃろうて」

「助かるよ爺さん! これならB級モンスターどころかA級モンスターでも戦えそうだ!」


 冒険者達はとてもいい笑顔をしていた。

 それじゃあそろそろ働いてもらおうかしら。


「良かったですわね、皆様。それではさっそくお仕事をお願いできますかしら?」

「はい、お嬢様!」

「そうね、まずはこのドリンコート領と隣の領の境目の関所付近のモンスターを一掃してもらおうかしら……それだけの武器があれば出来るわよね?」

「勿論です! この武器があればどんなモンスターでも倒してみせます」


 彼等の自信のほどは実際の働きで見せてもらう事にしましょう。

 そうですわ、それなら実際に仕事に行く彼等に缶詰を持って行ってもらいテストしましょう。


「あなた方、旅をしている時の食料ってどうなさっていますの?」

「そんなもの現地調達に決まっていますよ。取り立てのモンスター肉は美味いんですよ!」

「そう、そうなのね……でも、もしモンスターがいない場合の依頼だった時は、どうやって食事を摂られるのでしょうか?」


 この質問には冒険者達も顔を曇らせた。


「難しい質問ですね、そういう場合は出来るだけ食べる物を節約して、持参した干し肉をその辺の草で煮たりするくらいですかね」


 これなら缶詰の重要性を証明できるかもしれませんわ。


「ドワイト、全員分の武器が出来るまであとどれくらいかしら?」

「そうですね、あと五日ってとこですかね」


 あと五日のうちに缶詰を試作できれば、冒険者の方に持って行ってもらえますわ。


「わかりました、五日後また来ますから、期待しておりますわよ。あ、そうそう。わたしの言っている四日に一日の休みは……きちんと守っているのでしょうね!?」

「はい、お嬢さんのご命令通りスタッフは当番で休みを取っております。今日は十五名ほどが休んでおります」

「わかりました。これからもよろしくお願い致しますわね」


 わたしは工業ギルドのもう一つの缶詰を試作している場所に向かった。

 この移動、何気に馬車でもキツイものがある。

 これは早く道の整備もしなくてはいけませんわね。


 わたしが元盗賊ギルドの建物に入ると、中から良い匂いがしてきた。


「この匂いは? 何かしら?」

「あ、お嬢様、お帰りなさいませ。今缶詰の中に入れる食べ物を色々と施策していた所なのです」

「そうなのね、この匂いは肉の煮込みかしら……?」

「はい、郷土料理の肉の煮込みに香草を入れたもので、これは数日は持つように作られています」


 成程、それなら確かに缶詰の材料には良さそうね。


「わかりました。それで……肝心の缶はどうなりました?」

「それが、なかなか難しく……」


 どうも缶作りは上手く行っていないようだ。


 私が作業場に入ると、様々な機械を使い、工員達が缶を試作していた。

 しかしこのネジと歯車とハンドルの組み合わせだけで複雑なモノを作るって、わたしは改めて彼等の技術の高さに感心した。


「どうかしら、缶作りは成功しました?」

「おじょうさま、それがどうしても底が抜けるか上の蓋がきれいに閉まらないかで……」


 どうも缶作りは難色を示しているようだ。

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