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21 悪代官を懲らしめたい!

 クローヴィス王子は日に日に元気になっていった。

 寒村の聖女教会の建物は相変わらずボロく、隙間風の入ってくるような場所だ。

 そこでわたしはクロフトに協力しながら聖女教会のボランティアをしていた。


 学校は試験の後で少し休んだとしても十分時間がある。

 それに学習内容的にはあの鬼畜眼鏡のアンリのスパルタ教育で習った箇所なので少し遅れたとしても取り返すのは簡単だ。


 ギュスターヴはわたしのために喜んで力仕事を引き受けてくれている。

 少し遅れてザフィラとシロノもこの村に来てくれた。


「わあ、もふもふのおねーちゃんだ」

「こっちのにーちゃんカッコいいなー」


 クロフトは獣人に対しての態度がまだ聖女教の経典を元にしているだけに少し懐疑的ではあるが、彼等がわたしの部下だというのを聞いているのでそこまで毛嫌いはしていない。

 でも子供達は素直なもので、ザフィラやシロノとあっという間に仲良くなっていた。


 この村は貧しいながらも人が協力して生活している。

 そこにわたしがドリンコート領から持ち込んだ食料や物資が届いたのでみんなが喜んでいた。


 だがそこに招かざる客が姿を現した。


「おやァ? 何故この村にこんなに活気があるのですかねェ」

「アンタ、誰よ?」

「この小娘! 口の利き方に気をつけろ。このお方は代官のアルブレヒト・ゲスラー様なるぞ!」


 偉そうな兵士がわたしに剣を突き付けてきた。

 それを見たギュスターヴがとっさに剣を抜き、兵士に対して大声で叫んだ。


「無礼者! このお方は俺の主、レルリルム様だ! この土地の兵士は女性に手を上げようとするならず者しかいないのか!」

「ギュスターヴ、あまり手荒な真似はしないでね」

「了解です、レルリルム様」


 ギュスターヴは強く踏み込むと兵士の持っていた剣を一瞬で弾き飛ばし、あっという間に数人をその場に叩き伏せた。


「ひいいー! 何じゃ何じゃお前らはァー!」

「申し遅れました。わたし、ドリンコート伯爵の娘、レルリルム・ドリンコートと申します。御機嫌よう」

「ドリン……コート? って……――伯爵様の、これはこれは失礼致しましたァー!」


 代官のアルブレヒトはあっという間にバッタのように地面に這いつくばりわたしに頭を下げた。


 この男、村の貧相さとはかけ離れたような豪華な服を着て指には宝石を飾っている。

 このわたしですらこの聖女教会の建物にいる時は薄汚れた動きやすい服装でいるというのに。


 アルブレヒトはあっという間にその場から姿を消した。


「クロフト、あのアルブレヒトってどんなヤツなの?」

「彼はこの村の代官です。彼がこの村にいる限りはこの村が発展することは無いでしょう」

「それは穏やかな話じゃないね。どういう事か教えてもらえるかな?」

「貴方はアンリ様でしたか。わかりました。自分の知る限りのことをお話致します」


 クロフトが語ってくれた悪代官アルブレヒトの話はとてもひどい物だった。

 この村では七公三民どころか九公一民の年貢が取られているとの話だった。

 しかも国に対しては六公四民だと言って台帳をつけているらしく、その浮いた部分の金は聖女教会への寄付と本人の贅沢の為に使われているらしい。


 だから少しでも貯えがあるとなると兵士が現れて取り立てていくという話だそうだ。

 今回わたしが持ってきた食料や支援物資もあわよくば全て取り上げようと考えていたらしい。


 何という非道な奴なの!

 でも前の人生のわたしはそういう連中が巻き上げてきた金や食料で贅沢な生活をしていたわけであって、人の事を非難できるほど立派なものではなかった。


 だけど今の人生ではわたしは誰一人不幸にしないと決めたので、この悪代官は絶対に許せない。

 何かいい方法が無いだろうか。


「アンリ、何かいい方法……」

「それくらい自分で考えてみるんだね。キミのその首から上の部分はミカンかリンゴでも乗っているのかい?」


 この鬼畜眼鏡、コイツはそういう奴だった。


 まあ悪代官を怒らせるのがまあ一つの手段かな。

 わざと村人達に食事を振る舞い、祭りをする。

 そうなれば確実に悪代官はそれを邪魔しに来るだろう。

 そこでどさくさに紛れて悪代官をとっちめる!


 この作戦で行ってみよう。


「そうね、それじゃあ村人達を村の真ん中に集めて食事をしましょう! そうすれば何か面白いことになるかも」

「フフフ、キミの考えたのはそういう方法か、まあいい。やってみなよ」


 アンリが頭ごなしに否定しなかったということは、この方法がダメということではなさそうだ。


 わたしはドリンコート領から取り寄せた食事を振舞うために村の真ん中に人を集めることにした。

 幸い天気は雨がしばらく降らないというのは以前勉強した内容で分かったことなので、村人を集めるのは問題がなさそうだ。


 しかし村の真ん中には変な帽子が飾られていたので、真ん中そのものを使うことが出来ないようだ。


「一体なんなのあの帽子?」

「あれは代官のアルブレヒト様が刺した竿の上にかぶせている帽子です。あれは常に村を監視している代官様そのものなので、村人はあの場所を通るたびに帽子に向かって頭を下げないと処罰されるのです」


 何という馬鹿馬鹿しい話なの!

 でも現に帽子にお辞儀をせず通り過ぎた子供が兵士に棒で打たれたり、荷車を引いた男の人が頭を下げていないからと荷物を没収されたりしている。


 この村はメチャクチャだ!

 こんな村で生活していたらそりゃあ笑顔も無くなるし明日に希望も持てなくなる。


 この村は絶対に助けないと。

 わたしはザフィラやグスタフ達、それにギュスターヴの部下に協力してもらい村の真ん中で大きな芋煮をつくることにした。

 ここで美味しい食べ物を用意すればあの悪代官は間違いなくしゃしゃり出てくる。

 そのタイミングを狙ってあの悪代官を懲らしめればこの村を助けることが出来る。


 わたしの狙い通り、お腹の空いた村人は用意した芋煮を食べる為に全員が食事に集まった。

 すると村人の大半が集まったところに悪代官のアルブレヒトが姿を現した。


「おやおやァ、ワシの目の届かんところでなに好き勝手やっとるのかのォ!」


 そう言うと代官の部下はそこにいた子供を捕らえ、竿の下に縛り付けた。


「とうちゃーん、とうちゃーん‼」

「フハッハッハハ、お前の父親は確か猟師だったなァ。その腕で頭のリンゴを射抜いたら許してやろう。ワシは寛大だからのォ」


 子供の父親らしき猟師が弓を持たされ、リンゴを射抜くように命令された。

 もし失敗すれば子供の命が無い、何という非道な仕打ちなの!


「ギュスターヴ……あの子を助けれられる?」

「残念ですが監視が多すぎて、このままでは子供を助ける前にあの子が兵士になぶり殺しにされます」


 ここはあの子の父親を信じるしかないのか……。


「これはこれはお代官様、どうかこの子供の為に祈りをささげてもよろしいでしょうか?」

「ンー? お前は誰だァ?」

「僕はただのお嬢様の付き人です。ですがここには聖女教の神父様がいますからせめてお祈りくらいは……」

「まあ良いだろう、それくらいなら許してやろう」


 クロフトが猟師の男の人に何かを呟いた。

 そしてその後その猟師は狙いを定め、息子目掛けて矢を放った!


 矢は見事に頭のリンゴを居抜き、子供は無事助かった。


「な、何故じゃァ!? 何故こうなる??」

「なーに、先程の祈りで命中率の上昇を付加しただけですよ」

「流石ですね、アンリさん。この方法を思いつくなんて」


 子供が無事だったことで兵士達は戸惑い、どう動いていいかわからない状態だ。


「ザフィラ、ギュスターヴ、お願い! みんなを助けてっ」


 混乱の一瞬を突き、ザフィラやギュスターヴは子供を助け、代官の兵士を次々となぎ払った。


「ひいいぃいー!」


 悪代官のアルブレヒトは這う這うの体で逃げ出し、森の方に向かった。


「ヒいぃー。何故ワシがこんな目に逢うんじゃァ。許さんぞォ」

「許されないのはお前だ……!」

「誰じゃァ!?」

「貴様に名乗る名前は無いッ!」


 アルブレヒトは一刀の元に袈裟斬りにされ、一瞬で絶命した。

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