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13 アンリエッタと仲良くなりたい!

「レルリルム様、おはようございにゃす」

「ン……おはよう」


 わたしは専属メイドになったシロノに朝の用意をしてもらい、王国学院に向かう準備をした。


「お嬢様、今日で一か月ですにゃ」

「そうね、シロノも仕事だいぶん慣れてきたみたいね」

「はい、獣人の仲間も孤児院で毎日頑張っていにゃす!」


 シロノは猫獣人の少女だ。

 メイド服から覗く猫耳とフワフワの真っ白な尻尾がとても愛くるしい。


 そしてこの子は覚えが早く、あのアンリの勉強を日に日に覚えて今やわたしにきちんと話がついてこれるくらいになっている。


「シロノ、出かけるわよ」

「はい、お嬢様!」


 馬車に到着したわたしを出迎えたのは白いライオンの獣人の少年だった。


「おはようございます。レルリルルお嬢様」

「ザフィラ、わたしはレルリルム、まだ名前を間違えてしまうみたいね」

「もうしわけございません、レルリルルお嬢様」


 もういいや、下手に名前を言おうとして舌を噛むこともあるみたいだし。

 わたしは馬車に乗って学院に向かった。


 今日は試験の日だ。

 運が悪いと言えば運が悪いのかもしれないが、わたしは編入一か月目で定期試験を受けることになってしまった。

 だが、あのスパルタ教師のアンリの猛勉強の成果がどれ程のものか見せるいい機会でもある。


 試験が怖くて学校に行けるか!

 ……そういえば前の人生では試験の度に体調不良で学校を休んでいたような気がする。


 教室に入り、試験官が監視する中で定期試験が始まった!


「試験開始!」


 わたしは試験問題を見て確信した!

 これは全部わかる! 全部勉強したことばかりだ!


 算学、国語、外国語、行儀作法、歴史、試験はこの五科目だった。


 完璧だ! むしろ一問でもミスがあればあのアンリにねちっこく問い詰められそうなくらいだ。


「試験を終了する!」


 終わったー。わたしはシロノが用意してくれた昼食を食べるため、カフェテラスの椅子に腰を下ろした。

 彼女が用意してくれたのはチーズとベーコンと野菜を巻いたクレープだ。

 お菓子だけでなく、クレープにはこのような食べ方もある。


「お隣、よろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ」


 わたしの横に座ったのは、アンリエッタだった。


「あれ? あの王子は??」

「彼は、オウギュスト殿下は……呼び出しされています」

「はっ?」 

「それが……あまりにも成績が採点不能だったので……」


 まああのバカ王子なら当然の結果か。

 でも前の人生ではわたしも同じだったので人のことは言えない。


「まあそんなことどうでも良いわよね。さあお昼にしましょう……って、アンリエッタさんそれ何?」

「レルリルム様こそ、それは肉巻きクレープ? それともブリトーですか?」


 ブリトー? 何それ??

 それよりもわたしはアンリエッタの食べていたものが気になった。

 彼女のお昼は、こんもりとした小さなパンを切った中に何か細かい肉を焼いたものと野菜を挟んだ不思議なものだった。

 こんな食べ物、わたしは前の人生でも見たことが無い。


「これは、ハンバーガーです。わたしが考えた……みたいなものかな」

「これって……」

「良かったら一つ食べますか? 同じ物作ったのですけどオウギュスト様が食べられなくなってしまいましたので」


 アイツがこんな貧乏ったらしい料理を喜ぶわけがない。

 彼は外で食事をする際ですら一流の店で無いと許せない男だ。


「と言っても、いつも作っても何か理由をつけて食べてくれないんですけどね。アタシ、許嫁失格なんです」

「そんなこと無いわよ! アンリエッタさんはとても魅力的な女の子ですわ!」


 思わず口走ってしまったが、これはわたしの本音だ。

 何故わたしは前の人生で彼女を憎んでいたのか、今なら理解できる。

 彼女は努力家で、そして頭が良かった。


 前の人生で努力が嫌いで頭の悪かったわたしは、そんな彼女が羨ましくて仕方なかったのだ。

 でも今の人生では、彼女と渡り合えるだけの勉強もした、そして彼女に負けないだけの人のために生きる人生も選んだ。

 だから今のわたしが彼女を敵視する理由なんて何一つ無いんだ。


「アンリエッタさん、是非……わたしとお友達になってください」

「え!? ええっ!??? お友達……ですか?」

「嫌……ですか?」

「いいえっ! そんなことはありません。是非とも仲良くしてください」

「よろしく、アンリエッタさん」

「こちらこそ、レルリルム様」


 やった! これでアンリに頼まれていた依頼を一つ解決することが出来た。

 これでようやくアンリエッタと友達になる作戦が成功だ。

 あのバカ王子がいたらここまで上手く進めることは出来なかった。


 さてこれからは婚約破棄をさせず、アンリエッタをあのバカ王子と婚約させるために友達として動くことを考えよう。


「おやおや、お前達、一体何をしていたんだ?」

「あ、オウギュスト殿下。アタシ、レルリルム様とお友達になったんです」


 バカ王子はわたしを敵視する目で睨みつけた。


「フンッ」


 嫌われたもんだ。

 でもこれで今後のアンリエッタの婚約破棄から免れることが出来た。


 あのバカ王子でも賢いアンリエッタが誘導できればこの国が破滅に向かわずに済むかもしれない。


 わたしは授業終了後、上機嫌で帰宅した。


「レルリルム、今日の試験はどうだったんだい?」

「あ、アンリ様。バッチリですわっ! それに、今日は素晴らしいご報告もありますのよ」

「ほう、それは楽しみだ」

「わたし、今日アンリエッタさんとお友達になりましたの」

「そうか、よくやってくれたね。これで離宮を売る計画も進めることが出来るね」


 そう言うとアンリは何かの書類を用意して計画を進めた。


「レルリルム、ところで僕に何か言いたい事があるんじゃないのか?」

「え? 何を」

「隠したってわかるよ。キミの癖はもう見抜いたから。それで、何か考えている事があるんだろう」

「はい……実は、離宮を売る際の話なんですが」


 わたしはアンリに父親のドリンコート伯爵の強欲さを伝えた。

 彼は一度売った物だったとしてもそれに価値が出てしまえば返せというタイプだ。

 だが一度金鉱から金が出て彼が経営権に手を出してしまえば、折角の奴隷から解放した獣人族の仕事をあの父親にメチャクチャにされてしまう危険性があるのだ。


「なるほど、一度売ったものでも返せと言う性格か、強欲丸出しだな……」

「それでわたしが考えたのが、売った後でもわたしが月金貨二十枚を工事費として提供する案なんです」

「ほう、それにどういうメリットがあるのかな?」


 彼は癖でメガネの真ん中をずり上げた。


「離宮を売った後、バートン子爵が金鉱の工事に着工出来るだけの財力が無いのは分かっています。それだといつまで経ってもあの土地には価値が出ません。ですからわたしがその工事費を出してあげるのです、その代わり金が出たら売り上げの一割をドリンコート家に渡す、そういう契約にすればどうかと」


 この話を聞いたアンリがニヤリと笑った。


「なるほどね、それなら下手にドリンコート伯爵も返せと言わないな。そして最初の投資はあくまでもレルリルムのお菓子屋の売り上げから出せるレベルの金額になる。その上で金が出たら売り上げの一割を定期的に献上することであの強欲な伯爵も目の前の金塊に飛びついてそれ以上言わなくなるってわけか。よく考えたね」

「はい、それもアンリ様がわたしに勉強を教えてくれたから思いついたんです」


 ここで彼を持ち上げておけば後後わたしに有利になるかもしれない。


「僕は薄っぺらいおべっかは嫌いだよ。でも、実際レルリルムは勉強を頑張ったからね。キミは僕の自慢の生徒だと言えるよ」


 彼はそう言うと眼鏡を外し、普段の悪魔ではない、天使の微笑みを見せてくれた。


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