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1 人生をやり直したい

悪役令嬢の話を作ってみました。どうぞよろしくお願いします。


登場人物に合わせて物語を修正しました。

後々の主要キャラに関する話を追加しています。

更に指摘箇所があったので修正しました。

「ワガママは私の人生よ! 文句あるの!?」


 私の人生ははっきり言ってよくわからないものだった。

 母親と死に別れ、孤児になったと思ったら伯爵令嬢に……。


 そしてなんだかんだで聖女になり王妃になった私は、自身をワガママ放題に何でも言えば与えてもらい、聞いてもらえる特別な存在だと思い込んでいた。

 だから知らないうちに人に利用され、自らが枢機卿や悪徳貴族の操り人形として大勢の人達を泣かせていた事を知らずにいた。


 夫の王は私に輪をかけたバカ王で、浮気に側室にと好き放題やっていた。

 それが気に入らなかった私は負けてられるかと毎回男をとっかえひっかえ弄び、時には証拠隠滅で男を処刑までしたくらいだ。


 そういった時に動いてくれていた騎士団長は忠実な部下だったが、いつも私を冷徹な目で見下していた。


 騎士団長は最後まで革命軍や獣人の傭兵団、隣国の英雄王と戦ったが、部下を次々と失い、私は最後、牢屋から脱出し、王都を見捨てて逃亡した先で革命軍に捕まってしまった。

 騎士団長は最後まで私を庇いながら、革命の暴徒になぶり殺しにされてしまった。


 ああ、私はなんと愚かだったのだろう。

 いや、愚かでは済まない。

 あまりの情けなさに涙が止まらない私は顔をグシャグシャにしながら何時までも泣き続けていた。傍から見るとさぞ無様に見えたのだろう。


 今や、私は怒号と罵声の中で国中の憎しみを受け、処刑されようとしている。

 ギロチンの台に私の身体が固定された時、大きな歓声が上がっていた。

 そんな私を見下ろしているのは、私がかつて貶めたはずの子爵令嬢のアンリエッタ。


 彼女は救世の聖女として隣国を豊かにし、悪政に苦しむこの国を攻め滅ぼしたのだ。


「魔女を殺せ!」

「断罪を! 断罪を!」

「うちの人を返してよ、返してよぉぉぉ!」


 もう声も聞こえない。いや、本当は聞こえているが聞きたくないのが本音だろう。

 かつてはこの人達は私の結婚披露パレードで盛大に祝福してくれた人達だ。


 もう疲れた。

 所詮私はニセモノだった、努力も無く、与えられた地位を横取りしただけで何もしなかった。

 いや、しようとしたが、ニセモノには所詮何もできなかったのだ。


『白き聖女』


 この国に伝わる王妃の称号だ。


 だがそんな私には当然聖なる力など無く、ニセモノである事をどうにか誤魔化してその場をしのいだ。

 その際には聖女教会が力を貸してくれたので奇跡まがいのものを見せる事はできた。

 しかし、そんな事で本物の聖女には勝てるわけがなかった。


 何故なら彼女は起こりえる未来の困難を全て回避したのだ。

 まるで未来を全て知っているのか、または二度目の人生でも送っているのかというくらい彼女の予言は全て的確に当たった。


 何よりも恐ろしかったのは、私が企てた妨害や離間工作、小さな陥れに至るまで、その全てを彼女は不思議な力で回避していたのだ。


「これより偽聖女、レルリルム・アングレームの処刑を行う!」


 歓声が一段と大きくなった。

 そして私は目を閉じた。コレで人生が終わるのか。

 私は死にたくないと暴れることも無く、断頭台の露に消えた……。

 願わくば……人生をやり直したかった。



「……あ、ああ……あれ? わたし、生きてる?」

「レルリルム! 何を作業をサボってる!!」


 ビシッ!


「あうぅっ!」


 痛い、この感覚は……忘れたくても忘れられない。

 ギロチンの痛みは感じなかったのに、この鞭の痛みは脳に焼き付いて離れない。


「え、こ……ここは?」


 ビシッ! ビシッ!!


 今度は鞭が二回に増えた。


 間違いない、ここはわたしが昔いた孤児院だ。


「せ、せんせい。ごめんなさい、ごめんなさい!!」


 私は顔をグシャグシャにして泣き続けた。わたしってこんなに泣き虫だったかな……。


「何度も言ってますわよね。働かざるもの食うべからず。今日の夕食は抜きです!」


 お腹の虫がぐうぐう鳴っている。

 よく見るとわたしの体はやせっぽっちで、髪もボサボサだ。

 大体これはわたしが12歳くらいの頃だったかと。


 これは悪い夢なのだろうか?

 わたしが一番思い出したくない時代の経験を今再び体験している。

 他の子供達もみんな同じようなものだ。

 何だか今までの人生が覚めない悪夢のように感じたわたしは、粗末な寝床でメソメソと泣き続けていた。


 この時わたしは神様に願った。

 どうかこの地獄から救い出して下さい。良い子になりますから。

 そして私は思わずつぶやいた。


「――神様、お願いです。どうかわたしをこの地獄から助けてください。わたしは良い子になります」

『本当ですね……今度こそ、その言葉に偽りはありませんね? もし偽れば、貴女は悪魔となり、二度と救われる事はありません……』


 まさか、あの時には聞こえなかった神様の声がわたしの頭の中に響いた。

 これは、夢ではないのか。


『はい! 神様に誓って良い子になります!』


 わたしは夢が本当かわからないまま、お腹を減らした状態で夜眠りについた。

 そして次の日、孤児院は大変な騒ぎになっていた。


「子供達を隠せ! レルリルム、早くこちらへいらっしゃい!!」


 これは、覚えがある。

 この後わたしはいきなり風呂に入れられ、化粧で全身や顔のあざを隠されて長袖とロングの服装に着替えさせられたんだ。


 そしてその記憶は間違っていなかった。

 わたしは風呂に乱雑に入れられた後、服装を着替えさせられ、孤児院の応接室に連れていかれた。


「レルリルム。くれぐれも、伯爵様に粗相のないようにするのですよ!」

「はい……」


 この後の事はしっかり覚えている。


 わたしはドアを開けられて入ってきた髭の立派な男に見下ろされていた。


『セドリック・ドリンコート伯爵』


 わたしの父親……いや、父親とすら言いたくない男だ。


 何も知らなかったわたしは、コイツにここから出してもらえたことを感謝し、その時は本当にこの地獄から救い出してくれるパパが迎えに来たと思った。


 だが、この男はそんな優しさでわたしを引き取ったのではなかった。


 この男は野心家だった。

 息子がいた時は王家の王女に自分の息子を結婚させることで国の政治を牛耳るのが目的だった。

 しかし、流行り病と戦争で息子が全て死亡してしまったこの男は、次の手段に出た。

 それが、わたしを使って王子の婚約者にすることだったのだ。


 その計画には聖女教会も絡んでいた。

 いや、聖女教会が黒幕で、この男はその欲を利用されていただけにすぎない。

 しかしそれすら知らずに利用されていたわたしはもっと愚かだったのだ。


「はじめまして、儂の娘よ」

「は、はじめまして。伯爵様」


 わたしはぎこちないカーテシーをこの男に見せた。

 この男は私のカーテシーを見てニヤリと笑った。

 今どういう算段で、あの馬鹿王子にくっつけるのかを考えたのだろう。


 前の人生では、わたしはこの男を妄信していた。

 この地獄みたいな環境から救い出してくれた立派な父親だと思ったからだ。


 だがこの男、セドリック・ドリンコート伯爵はこの国における黒い話全てに係わる男だったのだ。

 聖女教会、奴隷商人、死の商人、王国騎士団といった全てとつながり、国の政治と財政を我が物にしていた男がコイツだ。

 わたしは革命の時、初めて妄信していたこの男が尊敬に値しないクズだと知らされた。

 だが何も知らなかったわたしは父親と組んで国を我が物にした毒婦の偽王妃だとして民衆に捕らえられたのだ。


 聖女に憧れたわたしを利用したのがこの男だった。

 いや、聖女に憧れるだけで、何もなさずに王妃という立場を好き放題にしたわたしにも責任はあったのだろう。


 わたしはもうこの男を信用しない。

 だが、この男の持つ財力と権力はとても魅力的だ。

 彼の地位は伯爵だが、数年後には金鉱から出た金で大成功する。


 未来の分かっているわたしなら、このお金が使えれば今までに不幸にした人達に何かをして罪滅ぼしできる。

 ――でもどうやったら良いんだろう……。


「レルリルムさん、良かったですね。本当の父親がみつかって本当に良かったです」


 孤児院の副院長のイザベラが泣き真似をしている。

 コイツらは絶対に許すわけにはいかない。

 だが今はまだ何もできないので従うことにしておこう。


「私が執事のジェファーソンです。レルリルム様、馬車がお待ちです、さあこちらへどうぞ」


 そしてわたしは孤児院を後にした。


 ――神様との約束、今度の人生こそ良い子になる。――


 でもわたしは聖女ではなかった。

 それなら、聖女でないわたしなりに……地位や財力を使ってできる事をする。

 もうあの頃の夢見る少女ではいられないのだ。


 この人生でもわたしは間違いなくあの男や聖女教会にまつり挙げられて聖女にされるだろう。

 そうなった際にわたしが生き残るためには力が必要だ。

 前の人生で嫌がっていた勉強、ならいごと、それらを全てやりとげて、わたしは生き延びる!


 これは神様がわたしに与えてくれた最後のチャンスだ。


「レルリルム、これからは儂がお前の父だ。お前の望むことなら何でもしてやろう。さあ、何でも言うがいい」

「お父様、わたし……メレンゲのレモンパイが食べたいです」

「そうか、では屋敷に戻る前にレストランに行こう」

「ありがとうございます、お父様」


 わたしは昨日から何も食べていなかったので、思わず食べたい物を無意識に言ってしまった。


 これが、わたしがこの男に言った今の人生での偶然最初のワガママだった。


 前の人生、わたしのワガママで人を苦しめてしまった分、それだけ多くの人を助けたい。

 それが今のわたしの思った事だった。

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