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ネヴァースフィア  作者: 天城なぎさ
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8/17

#008

「何が必要か、分かってる?」

「馬車は必要だよね。屋根と壁のある、荷馬車にしないと」

「他にも、焼くための型とか、調理道具一式」


 無一文の俺たちでも、手に入れる方法はあるのか? 否。あるわけない。


「ここからちょっと歩くけど、KOH(コウ)も一緒に来て」

「何処に行くつもり? 危険な場所は、行かない」

「大丈夫だよ。危なくないから」


 市場エリアを離れ、どんどん歩いていく。半ば強引に袖を引っ張られ、やって来たのは、謎めいた、摩訶不思議な店。

 店内に入るのを、躊躇いたくなる程、奇妙な雰囲気を醸し出している。


「ここは?」

「ここはね、不要品広場だよ。ここなら、調理道具一式、手に入るでしょ?」

「分かっているだろうけど、無一文なんだぞ、俺たち」

「分かってるよ。壊れてたりしてて、使えないような物ばかりが集まってるの。だから、ここにあるのは、全て無料!」


 ドヤァ。なんて顔を向けられ、無理矢理腕を掴まれ。

 サーラに身を任せ、渋々店内へ。

 見た感じ、店内には俺たちだけらしい。

 ろうそくが灯された、薄暗い店内には、服やら木材やら金属類やらが、ごちゃごちゃ。


「えーと、荷馬車は、こっち」

「何処まで連れていくんだ。俺はもう出たい」

「私だけで決められないよ。ほら、歩いて」

「そもそも。大判焼きなんて、作れるわけ? 俺は、無理だから」

「大判焼き屋さんで、バイトしてた。だから、大丈夫」


 何が大丈夫なのか、誰か教えて欲しい。


「箱形の荷馬車にして。あ、この箱形の荷馬車、後方だけじゃなく、両側面にも、扉が付いてる!」

「御者台、ボロいけどね」

「これにしよう!」

「勝手にどうぞ~」


 もう、俺は嫌だ。

 今すぐ逃げ出したいけど、腕を掴まれていては、逃げられない。


「テントも欲しいね。あとは……」


 ようやく解放されたと思った矢先、欲しいと思った物は全て、俺の足元に置かれていく。


KOH(コウ)は、御者台を直してて。その辺りに、木材があるから」

「はぁ。仰せのままに」


 俺の冒険は、大判焼きを作る為ではない。

 パンデミックを終わらせるため、この世界の創造者である、《カゲロウ》に会わなければいけないのだ。


 適当な木材を手に取り、『ご自由にお使いください』の文字とともに、何故だか壁に掛けられた、工具を手に取る。


 バールを使って傷んだ座席を剥ぎ取り、新しい木材を当てていく。

 釘は、元々のやつが使えそうで、それを使うことに。 


「はぁあ。何で、こんなことをしなきゃ、いけないんだよ」

「お金を手に入れる為だよ!」


 聞こえてたのかよ。独り言だったのに、サーラといると、全て狂わされる。


「てかさ、馬はどうする予定?」

「心配ご無用! ハイド原野に行けば、ポニーロップっていう、ユニコーンみたいな角の生えた馬が、いるんだって」

「手懐けて、馬車を牽いて貰うと?」

「イエス! よく分かったね」

「それは良いけど、材料はどうするつもり? 小麦粉と砂糖、あんこ、カスタードクリームが必要でしょ?」


 あっと、驚いた表情のサーラ。材料の問題を、忘れていた様子。


「うーん。ハイド原野に行って、材料を探そう。無ければ、大判焼きは、諦める」

「ここまでやって、諦めるわけ? 必要な道具は一通り揃えたんでしょ? あとは、俺たちの寝袋」

KOH(コウ)、良いの?」

「一緒に行くって言ったの、俺だし。ここまでやらされて、諦められるのも、嫌なんで」

KOH(コウ)って、良い人だよね。出会えて良かった」

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