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ネヴァースフィア  作者: 天城なぎさ
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7/17

#007

 サーラの杖が見つかった。これで、冒険へ出発出来る。

 農夫のおっちゃんに礼を言い、小屋を出た。


「チーズの香りがする。ねぇ、KOH(コウ)も分かるでしょ?」

「あぁ。でも、何だ? チーズではあるんだ。この香りは……。草だな」

「俺が作っている、チーズだろう。 荷馬車に積んでいるんだ」

「チーズを作っているんですか。それで、チーズの香りが」

「《カゲロウ様》が教えて下さった。何処か別の世界で、作られているらしい。干し草で熟成させるなんて、俺でも、度肝を抜かれたさ」


 干し草で熟成!? そんなチーズ、聞いたことないぞ。《カゲロウ》とやらは、何処でそんなチーズを知ったんだ!?


「それって、セイラス・デル・フェン? 《カゲロウ》って人、かなりのチーズ好きですね」

「ハハハ。ネエちゃんも、その名前を知ってるとはな。ここでは、セイラスチーズと呼んでる。《カゲロウ様》が、その方が良いと、仰ってな」


 何だと? 《カゲロウ》と会って話しているのか!? 

 だとしたら、おっちゃん経由で、《カゲロウ》に会えるかもしれない。


「《カゲロウ》に会ったことあるんですか!? 俺たち、《カゲロウ》に会いたいんです」

「《カゲロウ様》に会ったのは、かなり前のことだ。何処に居られるのか……」

「そうですか。すみません、お仕事のお邪魔をしてしまって」

「ここで出会ったのも、何かの縁。一つ持って行きな」


 農夫のおっちゃんは、荷馬車に積んでいたセイラスチーズを丸々一つ、俺たちにくれた。

 良いおっちゃんと出会えて良かった。しかし、俺たちは無一文。


「ありがとうございます。代金を支払いたいんですけど、俺たち無一文でして」

「このチーズを知っていた、ネエちゃんの顔に免じて、俺からのプレゼントさ」

「わぁ! ありがとうございます! おっちゃん、良い人だ! たくさん売れるといいですね」

「ありがとよ。冒険者と話せて、楽しかったよ。じゃあな」


 おっちゃんと次こそ別れ、俺たちは途方に暮れた。何処に行こうかと、その辺を右往左往。


「モンスターを狩りに、市場の外に出るか……。それとも、ここでもう少し過ごしてみるか」

「お腹空いたね」


 サーラは呑気で、良いご身分だ。

 誰のせいで、こうなったのか、本当に理解しているのか?


 それにしても、朝食を食べて以来、何も食べていない。

 俺だって、スタミナ切れだ。この状態で狩りに出るのは、危険過ぎる。


「大判焼き、食べたいなぁ」


 どんだけ腹がへっているんだ。食べ物の話をしたら、もっとへる。


KOH(コウ)は知ってる? 大判焼き」

「知ってる。俺的には、あんこ派」

KOH(コウ)も知ってるんだね。良かった」


 ほんのり甘い生地を、丸い型に流し入れ、焼いていく。あんこかカスタードクリームをのせ、同じように焼いた生地で挟むようにしたら、出来上がる、雪国定番の冬のおやつ。


「今はまだ、その季節じゃない」

「でも、食べたいなぁ」

「食べるにしても、この世界から出ない限り、一生無理」

「作れないかな?」

「小麦粉も、小豆も、カスタードクリームも、調理道具、その他諸々無いのに、どうやって作ると?」

「揃うかもしれないの。そうだ! 大判焼きを作って、冒険しながら売るのはどう? 素材集めと、所持金集め、両方出来るでしょ?」


 サーラの考えている事が、何も分からない。理解しようとしても、斜め上を行ってしまう。

 どうしてその考えに至るのか、俺は知りたい。

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