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ネヴァースフィア  作者: 天城なぎさ
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6/17

#006

「ごめんねぇ。ローブを買ってくれた上に、杖探しまで」

「杖の無い回復術師(ヒーラー)は、ただの村人と変わらないでしょ。無力な村人に投資する程、余裕なんて無いから」

「ホント、ごめんなさい。そこの角を曲がった先に、水辺があって、そこに空き家があるんだよ」


 俺は何故、こんなことをしているんだろう。

 サーラと出会って数時間。まだ日は高く、冒険日和だというのに。


 最初のクエストが、杖探しになってしまうとは、誰が思っただろう。


「ここだよ。私が寝泊まりしてた、空き家」


 市場の外れなのだろうと思われる、人気(ひとけ)のない、一角。

 ドアのない、土壁の小屋に到着した。


「空き家ってより、小屋だろ。ドアはないし、窓は板で閉められてる」

「何だか、減ってる?」

「この辺で、家畜を飼ってるとは思えない。市場の片隅で家畜を飼っていたら、臭いで分かる。」


 大量の干し草の中から、30センチ程の杖を見つけ出す。

 干し草が減っているなら、大歓迎だ。手間が省ける。


「よし。片っ端から探していく。減ってる理由なんて、知った事か」

「うん! 頑張ろう!」


 ***


 捜索を始めて、体感15分くらい。一向に、見つかる気配は無く。


「ここじゃないのか……」

「うーん。他に立ち寄った所なんて、あったかな……」


 持ち主ですら、何処に置き忘れたのかを、忘れる始末。

 このままでは、冒険になんて出られない。


 いや、待てよ。


 サーラとは、正式にパーティを組んだわけではない。それなら、俺一人で冒険に出るか。


「このままじゃ、日が暮れちゃうよぉ」

「1日目は、この市場で終わり。って、セーブされるんだろうな」

「どうしよう?」

「考えるな。手を動かせ」

KOH(コウ)の予定、狂わせてない?」

「大幅に狂った。必要なものを買い揃えたら、すぐに出発する予定だった」


 そんなこと言ったって、サーラに罪は無い。それは分かっている。

 それに、サーラを再び一人にしていては、また、襲われかねない。


「また買わなきゃだね」

「買い直すって、お金無いでしょ」

「そうだけど、でも……」

「ここがダメなら、立ち寄った場所を、全て捜索する。それでもダメなら、考える」


 干し草全てをどうにかしたいけど、小屋の持ち主に無許可でなんて、そんなことは不可能。

 ひたすら掻き分けて探すしか、方法はない。


「ここで、何をしている?」


 振り向くと、麦わら帽子を被った、オーバーオールの農夫らしき人物が立っていた。

 サーラが対応するべきだけど、ここは俺が。


「この小屋の、持ち主ですか?」

「そうだ。勝手に、干し草を(いじ)りやがって。どうしてくれる」

「すみません。探し物をしていたんです」

「探し物?」

回復術師(ヒーラー)の杖なんですけど、長さは30センチくらいで、色は黒に近い茶色。先端には緑色の宝玉が付いています。恐らく、エメラルドかと」

「エメラルドの杖か。それなら、これの事か?」


 すると、農夫は荷馬車の荷台から、一本の杖を持ってきた。


 それは、黒に近い茶色で、先端にはエメラルドの宝玉。そして木の根が絡まったような杖。

 サーラの言っていた特徴と、ピッタリ合っている。


「これです! 私の杖!」

「ネエちゃんの杖か。しかしまぁ、何でこんな所に?」

「ごめんなさい。少し、寝泊まりをさせて貰っていました」

「寝泊まり!? この干し草の場所で!?」

「フカフカで、暖かくて、気持ち良かった」

「そ、そうか。うん。気に入ってくれて、何より」

「でも、それも終わりなので。ようやく、冒険に出発出来ます!」


 いや、それは、キミに言われたくなかった言葉。誰のせいで、予定が狂ったのだろう。

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