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ネヴァースフィア  作者: 天城なぎさ
Connect login
1/17

#001

 《ようこそ。遥かなる大地、ネヴァースフィアへ》


 無機質な音声と、黒い画面に浮かぶ白い文字。

 とあるMMORPGの世界へ、俺は足を踏み入れることとなった。

 

 世界中で、不特定多数の失踪者が、話題となっている今日(こんにち)。警視庁サイバーセキュリティ課と、公安部が動く事態となり、何故か、生活安全課の俺に、白羽の矢が立ってしまった。


「日坂。ゲーム好きだったよな?」

「好きですけど、それが何ですか? 課長もゲームしたいとか?」

「そうじゃない。日坂も聞いただろ? 不特定多数の失踪者の件を」

「公安が動いていると、聞きましたけど?」

「それが、解決の糸口が見えないらしい。アメリカのFBIでさえ、難題だと言っているらしい」

「その件と俺は、何か関係あるんですか? 俺はただのゲーム好きなんですよ?」


 そう。俺はただのゲーム好きな、生活安全課。警察官と言えど、部署が違えば無関係。


「詳しい話は、わたしが」


 いきなり話し掛けてきたのは、サイバーセキュリティ課の、えーと、誰だっけ?


「日坂(こう)巡査長。お会いするのは初めてですね。サイバーセキュリティ課課長の竹川です」

「はじめまして。日坂です」

「挨拶はこの辺で。世界中で話題となっている、不特定多数の失踪者について、とあるゲームが関係していると、突き止めました」

「とあるゲーム? ゲームと失踪が関係している?」

「《ネヴァースフィア》という、大規模多人数同時参加型オンラインRPGです」

「MMOですか。問題が発生しているなら、制作会社の家宅捜索が行われるはずでは? 発売されている訳ですし、審査の通過だってしている」


 それがですね。と、竹川課長は一言前置き。


「ウイルスのように、世界中の不特定多数のパソコンに送られているそうです。制作会社は不明。勿論(もちろん)、審査は受けていない」

「それって、ヤバくないですか? 警視庁のデータが、そのゲームに盗られたら、それこそ国家レベルの話になってしまいますよ!」

「分かっています。サイバーセキュリティ課のパソコン一台に、《ネヴァースフィア》が送られています。データは、何も盗られてはいません」


 それなら、一安心。それで、俺に何の用なんだろう。


「日坂洸巡査長。君のゲーム好きは、警視庁内において、有名なのです。君に、このゲームをプレイして頂き、失踪者の手掛かりを、見つけ出して欲しい」

「俺がですか? 日本だけでも、千人以上もいるというのに?」

「公安の方も、意見は一致しています。君に、託したい」


 はい、そうですか。なんて、俺の口から出てくるはずもなく。


「MMORPGなんですよね? 課金以外のことは、自由にさせてくれますか?」

「勿論。君の自由にしてください。ただし、失踪者の手掛かりは見つけてくださいね」

「昇級の可能性はありますよね?」

「君次第。我々が言える立場ではないので」 


 二つ返事の後、サイバーセキュリティ課に、連れていかれた俺。薄暗い室内に驚きながら、竹川課長に案内された、片隅。


「これが、《ネヴァースフィア》が送られたパソコンです。カメラの設置は、許してくださいね」

「構いません。俺のペースでプレイするだけです」


 何台ものカメラが見守る中、俺は、《ネヴァースフィア》へアクセスした。


 《ようこそ。遥かなる大地、ネヴァースフィアへ。あなたのお名前は?》


 俺がいつも使う名前、それは、《KOH(コウ)》。名前を入力すると、新たな文字が画面に浮かんだ。


 《ようこそ。KOH(コウ)。あなたの種族と職業を教えて?》


 無難に人間(ヒューマン)で、職種は魔法使い(ウィザード)。後衛だけど、まぁ、なんとかなる。

 この二つを入力すると、《Connect login》の文字が出現。


「ログインします」

「お願いします」


 カチッ。と、クリックした瞬間。真っ黒な画面から一転して、(まばゆ)いばかりの光りが、画面いっぱいに溢れ出す。


「うわあああっ!」


 思わず目を塞ぎ、画面から目を背けた。

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