妖精との旅路 ヴィルム海底洞窟編その1
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海と村を見下ろす、高台にて・・・・。
「おっ、見えてきた」
「ルド様。あの村が今日の目的地なのです?」
「あぁ」
エリエルとの旅が始まった次の日、ヴィルム海底洞窟手前の村に到着した。村は、主に漁師の住む村で、小さいが港があり、その光景はのんびりと和やかでとても落ち着く。
「うんーーー!! ふう、やっぱり落ち着くなぁーこの村」
「綺麗なのです。あっ! あれが海なのですね!」
「エリエルは・・・海、初めてか?」
「はいなのです! とても広い湖だと、ユミアに聞いてるのです」
「はっはっはっ。それだけじゃないぞ、海は塩っぱいんだぞ」
「そうなのです?! 凄いのです!!」
エリエルは、オッサンの頭の周りを飛びまわり。初めての海と、塩っぱい、と言う事実に、はしゃいで飛び回る。
「落ち着けエリエル。村の人に見られないように、ポケットに入っていてくれ」
「・・・・何故なのです?」
「村の人がビックリするからな。それに・・・この村の人は大丈夫たろうが、妖精を捕まえようなんて、考えるような奴が、いるかもしれんからな」
「こ、怖いのです!」
「大丈夫、俺がいる。ほら、胸ポケットに・・・・」
エリエルは「はいなのです」と返事をすると、オッサンの胸ポケットにすぽっと入った。そして、頭だけ、ちょこっと胸ポケットから出した。
「よし、行くぞ」
「はいなのです」
*******
「ここに来るのも久しぶりだな」
村はそこまで大きくなく、人口も三百といない。爺さん婆さんが多く、過疎化が進んでいて、それが問題となっている。
「おや、もしかしてルド坊かい?」
「ん? おっセン婆! 元気してたか?」
村の中を歩いていると、縁側に座る見知ったお婆さんに話しかけられた。来るたびに世話になっていた、センばあさんだ。
「元気元気じゃよ。ルド坊こそ元気してたかい? ここ最近こないもんだから、心配してたんだよ」
「それなりに忙しかったからな」
「そうけぇそうけぇ。茶でも飲んでいきな」
「じゃあ、遠慮なく」そう言うとオッサンは、縁側に腰掛ける。この辺りの漁村の家は、何故か日本風だ。ただし、畳はないし。土足で普通に上がる。
「そう言えば、ダン爺は? 元気にしてるの?」
「爺さんかい? 爺さんなら相変わらず元気だよ。爺さんやぁー! ルド坊が来たよぉーー!」
セン婆が、奥の部屋に向かって叫ぶ。すると「うるさいのぉー! デカイ声だすな!」と懐かしい声がした。
どうやら、ダン爺は元気そうだ。
「ルド坊が来てるんだよ」
「んん? ルド坊が? ・・・・おぉ! ルド坊じゃねぇか!」
「どうも、ダン爺」
「まったく、近頃顔見せんで何してやがった」
「いつも通りさ。依頼を受けて、モンスターを狩るってな感じで」
「はぁーーはっはっはっ! そうか! いつも通りか。さすが王国一の冒険者だ」
「ダン爺もセン婆も、元気そうで何よりだよ」
「ふん。そう簡単にくたばるような、やわな体じゃねぇ。
それよりもルド坊だ。まさか俺等の顔を見に来たって訳じゃあるめぇ?」
「まあ、そうだな。ちょっと海底洞窟にようがあってな」
「んー、ヴィルム海底洞窟か。となると、公国側で相当な事があったか」
「あぁ。内容は言えんが、公王から直々の依頼が来た」
「おやまあ」「おいおい、そりゃあ・・・・お前、とんでもない事態が起きてんじゃねえか?」
セン婆とダン爺は、公王から直々の依頼と聞いて、深刻な事態が起きていると、理解したようだ。そして、不安そうな顔で互いを見合った。
「爺さんや・・・・」「ふん。何、心配いらんわい・・・・・」
二人が、こんなに心配する理由、それは・・・・。
「ロンの事か?」
「「・・・・・・・・」」
ロンと言う名前をオッサンが出すと。二人は顔を背けた。ロンとは、二人の息子で、冒険者をやっている。それも、公国で活動している。一人息子とあって、尚更心配だろう。
「えーと、大丈夫だよ。ダン爺、セン婆。俺がいるからな」
オッサンは、右手の拳で胸をトンと叩き「任せろ」と言って二人を安心させようとした。
「ルド坊なら安心じゃな。なあ、婆さん」
「そうですねお爺さん」
「おう、任せとけ!」
二人は少し安心せたのか、笑顔をみせた。
「さて、ルド坊にお茶をいれましょうね」
「婆さんや、海ぶどうも出してやりな」
「はいよ」
「海ぶどうかぁ〜。久しぶりだなぁ」
「わしが採ったのは極上だぞ」
「そりゃあ、楽しみだ」
因みに言っておくが、海ぶどうとは、沖縄でよく採れる奴とは違うものだ。こちらの世界には、ぶどうに似た果物が海で取れるのだ。マングローブみたいな木から採れる、その果物の味の方は、ぶどうにはまったく似ていないが。
そうだなぁ〜、一番近いの味は・・・・ビワかな? 兎に角美味い。
ここに立ち寄る際は、よく食べていた。
「はいよ。ルド坊、たんと食べな」
「おぉ! うまそうだ! じゃあいただきま・・『ぎゅるる』
俺の胸ポケットから、小さなお腹が鳴る音が。
「うん? 今何か聞こえたような・・・・」
「そうですねお爺さん。まるでお腹が鳴るような音が・・・・」
「ゴクリ・・・・」
胸ポケットに入っているエリエルは、ジッと動かずにいるが。
「やっちゃったのです」と小さな声がオッサンには聞こえた。
ダン爺とセン婆なら大丈夫かな。
「えーと、ダン爺、セン婆。他の連中には内緒にしてくれよ。
エリエル」
「はいなのです」
エリエルは小さな声で返事をすると、頭をちょこんと出した。
「あらまあ。かわいいお客さんを連れているね」
「もしかして・・・・そいつは妖精か? ぶったまげたな。初めて見たわい」
「コイツはエリエルって言うんだ。ほら、エリエル、挨拶」
「エリエルなのです。こんにちはなのです」
「はい、こんにちは」
「随分とかわいい子じゃわい」
「今、エリエルを連れて旅してる所なんだよ。妖精は希少だからな。狙われないように隠れてもらってたんだ」
「あら、大変ねえ。エリエルちゃん。私達は大丈夫だからね」
「おう、ルド坊のお客に手は出さんからの」
「はいなです」
「海ぶどう、エリエルも食べるか?」
「はい、食べるのです」
海ぶどうを一個、房から取って胸ポケットに入っているエリエルに渡す。エリエルは「わーーいなのです」と言って受け取ると、ムシャムシャと食べ始めた。
「美味しいのです!」
「そいつは良かった。採って来たかいがあるってもんよ」
「かわいい子ですね」
「・・・・さて、一休みしたし。行きますか!」
「おいルド坊。泊まってから行かんのか?」
「そうですよ。お爺さんの言う通り、一晩泊まっていきなさいな」
「いや、最初はそのつもりだったけどな。そんな時間も惜しいからな。先を急ぐよ。ダン爺とセン婆のためにもな」
「「ルド坊」」
「おし! じゃあ行くぞエリエル!」
「ふごむごごふごむごご」
「ちゃんと飲み込んでから話そうな」
「ごっくん・・・・ぷは。はいなのです! エリエルはお供するのです!」
「気をつけて行くんだよ。ルド坊、エリエルちゃん」
「ルド坊なら、心配するだけ無駄になりそうだがな」
「おう、行ってくる!」
「お爺ちゃん、お婆ちゃん。海ぶどう、美味しかったのです!
ありがとうなのです!」
「帰りにまた寄んな。また、美味い海ぶどうを食わしてやる」
「あぁ、それじゃあな」
「ばいばいなのですー」
オッサンは海底洞窟に向けて走りだす。凶暴な怪物が、わんさかと居るヴィルム海底洞窟。オッサンはどの様に切り抜けるのか。
「ヴィルム海底洞窟か・・・・。最速で突破してやるぜ」
「行けーなのですーー!!」




