妖精の里と大精霊 その2
「「・・・・・・・・」」
「・・・・どうかしまたか? そんな、ゴブリンが棍棒で殴られたみたいな顔して・・・・」
「いや、どんな顔だよ! ・・・・えーと、大精霊様? でいいのか? あの、俺にどんな御用です?」
「はい・・・・実は、不死の王の影響により。この森に眠っていた、ある者を起こしてしまったのです」
「ある者? それは一体・・・・」
「ドラゴンです」
「ドラゴン・・・・あの、もしかして古竜じゃないですよね?」
「いえ、この森に住んでいた、ただの竜です」
竜自体、ただで片付けられる存在じゃないのだが・・・・。
「あ、あの、宜しいでしょうか?」
緊張したユミアが、右手をちょこんと挙げた。
「なんです? ユミア」
「はい。あの、もしかしてその竜とは・・・・」
「えぇ。深き森に住まう竜、フォレストドラゴンです」
「やっぱり・・・・」
「フォレストドラゴン・・・・ねぇ。兎に角、そいつをどうしろと?」
「あの、ルド殿。そのフォレストドラゴンは・・・・」
「倒して頂きたいのです」
何か言おうとした、ユミアの言葉を遮り。大精霊様は話を続ける。
「そのフォレストドラゴンは、死期が近く、体が朽ち果てるのを、ただ待つのみでした。それが、不死王の影響を受けた所為で・・」
「えっ、ちょっ、まさか!」
「はい。アンデットドラゴンへとなってしまったのです」
かあーー! よりによって、アンデットドラゴンかよ! 闘うのすげぇーー面倒なんだが・・・・。
アンデットドラゴン・・・・ただでさえ強い竜が、アンデット化した存在。竜自体、とても強い生命力を持っている。そんな竜がアンデット化すると、失った生命力を得ようと彷徨う、恐ろしい存在になる。アンデットドラゴンの歩いた場所は、命を吸われ草木も生えなくなると言われ程だ。そんなアンデットドラゴンを・・・・。
「倒せと・・・・」
「あなたならやれます。まだ、フォレストドラゴンは完全なアンデットドラゴンにはなっていません。まだ、森を愛するフォレストドラゴンとしての意識がある前に、フォレストドラゴンを・・・・」
「・・・・・・・・」
今日はこう言う話ばかりなのか? 嫌な頼みが続くなぁー。
しかし、アンデットドラゴンはリッチーと同じく危険だ。いや、
動きまわる分、リッチーより危険か。とある国で・・アンデットドラゴンを倒せず、国の半分が壊滅状態になった国があったな。
まあ、そのアンデットドラゴン。倒したの・・・俺だけど。
「頼めるだろうか?」
「・・・・分かりました。なんとかしてみますよ」
「る、ルド殿! だ、大丈夫ですか?」
「まあ、なんとかなるさ。ユミアはここで待っていてくれ。
それで、アンデットドラゴンは何処に居るんだ?」
「居場所は把握しております。ですから私の力で、その近くまで送りましょう」
「ん? 動き回ってたりするんじゃないのか? 大丈夫か?」
アンデットドラゴンは基本、動き回っているからな。いきなり真正面とか洒落にならんのだが。
「大丈夫です。動かずじっとしていますから・・・・」
うむ、まだ意識があるからなのか? 兎に角・・・・やるか。
大精霊様の頼みだし。
「では、お願いします」
「はい。では、動かずじっとしていて下さい」
大精霊はそう言うと、両手をオッサンにかざす。すると、魔法発動の光と共に、何十本という蔓がオッサンに巻きつきだす。
「この魔法・・・・転移魔法に近い物か・・・・」
「では、頼みむすね」
「おう、任せておけ」
「ルド殿、お気をつけて」
「ルド様! 私も行くです!」
「あっ、ちょっとエリエル!」
「あっ、こら、エリエル!」
エリエルがオッサンの頭にしがみつく。ユミアとオッサンは、慌てて止めるが。間に合わずにオッサンと一緒に、アンデットドラゴンの元へと、転移魔法で飛ばされてしまった。
「大精霊様、エリエルが!」
「あらあら? エリエルったらもう・・・・。ユミア、心配せずとも大丈夫でしょう。あの者が一緒ですから・・・・」
「・・・はい」
「「うわあぁぁぁぁぁぁーーー!!」」
『ヒュイン』
「おえっ、ちょっと酔った・・・・エリエルは?」
「ルドひゃまぁ・・・・」
大精霊の転移魔法により、飛ばされたのだが・・・・気持ち悪い。
「まあ、テュラミアーダの転移魔法よりマシではあったな。
さて、おーい、無事かエリエル」
「目がクルクルのですー」
エリエルは、目を回して地べたに座り込んでいた。
取り敢えず、無事のようだ。
「・・よし、無事だな。さてと、アンデットドラゴンはどこ・・・・に」
オッサンは言い淀む。オッサンの目の前には、生命力を吸われ、枯れ果てた森が広がっていた。
「酷いな・・・・命を根こそぎ吸ってやがる。兎に角、この中心部に行けは居るみたいだな」
「ルド様ー! エリエル復活なのです!」
「やっとか」
「な、なな! これは酷いのです! 悲しいのです!」
エリエルは、森の惨状を目にして、涙を浮かべていた。
やっぱ、森に住む妖精だから、森が大事なんだろうな。それにしても、酷い惨状だ。悲しむエリエルの気持ちは、分からなくもない。
「エリエル、危ないからポッケに入っていてくれ。この先は、危険だからな」
「はいなのです」
オッサンは、左胸のポッケにエリエルを誘導し。死の森へと足を進めた。




