妖精の里と大精霊 その1
「エリエルー、まだ着かないのかー?」
「もう少しなのですー! 頑張ってなのですー!」
頭の上で応援するエリエル。飛べよ!
「この辺りは確か・・・・泉の近くよね?」
「泉?」
ユミアの呟きに、オッサンは反応した。
「泉って、ただの泉か?」
「ルド殿、ただの泉以外に、何かあるんですか?」
「いや、妖精が居るから、こうなんて言うか。メルヘンな物を想像したと言うか」
「め、メルヘン? なんですかメルヘンて?」
「・・・・気にせんでくれ。それでエリエル、まだ着かないのか?」
「もう直ぐなのです! そこの樫の木を右に行くです!
エリエルに言われるがままに、樫の木を右へと足を進める。
すると、森中にポッカリと広い空間が。
「着きましたのです!」
「んん? ここは・・・・」
「・・・・エリエル、どう言う事なの? コレ、私がさっき言ってた泉でしょ?」
「この泉が、妖精の里の入り口なのです!」
「泉が入り口・・・・メルヘンだな」
「あの、ルド殿。メルヘンとは?」
「あー、おとぎ話に出て来そうみたいな?」
「な、成る程」
成る程って、もんでも無いが。それにしても、泉が出入り口なのか。・・・・斧とか入れたら・・・・金の斧銀の斧的なの出てくるのかな?
「ルド様、どうかしましか?」
「んあ? いや、なんでもない。それで、どうやって入るんだ?」
「はい、少々お持ち下さい!」
そう言うと、エリエルは俺の頭から飛び立つ。そして、直径十メートルほどの泉の周りを、クルクルと飛び始める。すると、エリエルの体が光りはじめ、光りの粉が泉に振り始めた。
「おぉー、まさにメルヘン」
「・・・・これがメルヘン」
「これがメルヘンなのか」と何故か隣りで納得して、目を輝かせ泉を眺めるユミア。なんか・・・・変な言葉を教えてしまったか? 別にいいか、メルヘンぐらい。
「準備が出来たのです!」
「おぉ! 泉が光ってる」
「綺麗ですねルド殿。それでエリエル、この後どうすれば?」
「どうするもなにも、飛び込むのです! ばーーんと」
「「・・・・飛び込む」」
「はい! では行くのですーー!」
エリエルは、俺の頭の上に止まり。泉を指差してポーズを決める。俺の頭の上でする必要あるか?
「ほんじゃあ、行くか。ユミアは大丈夫か?」
「はい! ・・・・行きましょう!」
「せーーの!」『ドバーーーーン!!』
俺達は光る泉に、いっせいに飛び込んだ。光る水に飛び込むって、案外不安ではある。
「「「うごぼぼぼぼぼ・・・・ぷはっ・・・・・・」」」
「着きましたのですー!」
「げほっ、ちょっと水飲んじまった」
「私もです」
「もう、何してるですか! 着いたのです!」
「「ん? おぉ!! ここが妖精の里!!」」
飛び込んだ泉と、妖精の里の泉が繋がっているらしく。オッサン達は、妖精の里の泉の真ん中に、浸かっていた。そして、エリエルの声で辺りを見渡すと。そこはまさに・・・・。
「メルヘン!」
「メルヘンです!」
俺と同じく同意するユミア。メルヘンが気に入ったのだろうか?
まあ、そんな事はどうでもいいか。それにしも、なんて幻想的なんだ・・・・まさに、メルヘン!
「ん? なんか光る玉がこっちに・・・・」
「誰かと思えば、エリエル! おかえりー!」
「リーエル! 帰ったのです!」
光る玉が近づいて来たと思ったら、それはエリエルの知り合い妖精だった。と言うか、光る玉は全部妖精なのか? ・・・・そこら中に居るんだが? 蛍の様に、ふよふよと飛ぶ玉が、見渡しただけでも、数百は飛んでいた。
「「「「「エリエルーー!」」」」」
エリエルと知り、群がってくる妖精達。目がチカチカする。エリエルはそんなに光ってないのに何故?
「人間?」「人間だ」「なんで人間が?」「あとエルフ」
「エルフだ」「ほんとだ、エルフだ」「人間とエルフ?」
「こらこら、みんなダメなのです! 大精霊様のお客様なのです」
「「「「「「大精霊様のお客様ぁー?」」」」」」
「「「「「「・・・歓迎だーー! お客様を歓迎だーー!」」」」」
「ちょ、おい、くすぐったい! エリ、エリエル!」
「きゃっ、そこダメ。耳触っちゃ・・・・きゃっ!」
「みんな歓迎してるです!」
オッサンとユミアに群がる妖精。気分はクリスマスツリーだ。
ただ、あちこち触ってくるのは辞めてほしい。なんかこそばゆい。
「さあさあ、こっちです。ルド様、ユミア」
「お、おう」「ひゃう」
オッサンとユミアは、妖精をたくさん引っ付けながら、エリエルの後に着いて行く。
「・・・・なあ、エリエル」
「ルド様、どうしたです?」
「この子達をどうにかしてほしいんだが」
「私もですエリエル」
体中に引っ付いて、離れようとしない妖精達。
・・・・なんだこの状況。
「うーん、みんな歓迎してるだけです?」
「そうなのかもしれんが、動きにくいのだが」
「こ、こら! そんな所に入っちゃ! ひゃい・・・・」
「「「暖ったか、ぬくぬく」」」
「・・・・・・・・」
ユミアの胸元に、三人の妖精が入っていた。なんて、羨まけしからん事を・・・・。
「もう、何してるですみんな。お客様に失礼しちゃダメなのです」
「「「はーーーい」」」と返事をして、妖精達は胸元から出て行く。ユミアは顔を真っ赤にし、涙目にもなっていた。
「うう、ルド殿見ましたね」
「すまん」
「ルド様、ユミア。こちらです」
妖精の里は、大きな木が何本と生えていたが。一本だけ、特に大きく、神々しさを感じる大木があった。その大木に向かって、エリエルは飛んで行く。俺達もその後に続く。
「ほへーー。この木、ただの木じゃないな」
とても強い力を感じ、オッサンは感嘆の声をあげた。
「当然ですよルド殿。これは霊木です」
「霊木?」
「はい。私も見るのは、これで三回目です。とても珍しい木なんですよ」
「へえーー」
ユミアの話を聞きながら、その霊木の下へ。
「大精霊様ーー! 連れて来たのですー!」
オッサンとユミアは、霊木の前で緊張した面持ちで待っていると。「ふぁーーあ」と欠伸が・・・・誰が? とユミアと二人で辺りを見渡すが、特に誰も・・・・「「うわっ!!」」
オッサンとユミアは驚き声をあげた。何故なら、まるで生えきたかの様に、美しい女性が上半身を霊木から出していた。
「「・・・・・・・・」」
その光景に、二人は言葉を失った。
「大精霊ーー!!」
「お疲れ、エリエル。よくやりました」
「頑張ったのですー!」
「はい。良く頑張ったわ」
霊木から生えてきた女性は、なんと大精霊だった。エリエルは、大精霊の周りをクルクルと飛び回り。大精霊はそれ見て微笑んでいた。
「さて」と、大精霊はこちらに視線を向けた。十秒程だろうか。俺達、と言うより俺をジロジロと見つめ。そして、霊木から完全に体を出し。俺達の前に歩いて来た。
「ルド・ロー・アス。それに、ユミア。二人共よく来ましたね。歓迎するわ」




