妖精からのご招待
オッサンが、神殿の遺跡から出ると。エリエルとユミアの二人が、こちらに向かって来るのが見えた。
「ルド様ー! 無事なのですー?!」
「ルド殿ー!」
「ん、あぁ、大丈夫だぞ二人共。無事終わった」
二人は、オッサンの終わったの一言に、胸を撫で下ろした。
「突然、忌避感が消えたので。ルド殿が倒したのだと分かりました」
「ユミアは調子を取り戻したのです」
リッチーの放つ、闇の波動に当てられていたユミアは、リッチーを倒した事で、快調に戻ったようだ。
「よし、それじゃあ帰るか」
「はい」「はいなのです」
俺達は一路、エルフの里へ。
*****
オッサン達は、エルフの里に帰還すると。オッサンさんは一人、族長の元へ向かった。リッチーの、フェイの最後を伝える為に。
「そうかい、倒してくれたか」
「あぁ・・・・。ばあさん、あのリッチーと、フェイとは・・・」
「あぁ。まったく、頑固者で困ったものさね」
ばあさんは懐かしいのか。窓の外を眺めていた。
「なあ、ばあさん」
「なんだい」
「あれで良かったのか?」
「・・・良いも悪いも無い。フェイが望んだ事だ。心まで化け物なるよりはと。お前さんには、辛い役をさせてしまった。すまない」
ばあさんは、深々と頭を下げた。
「よしてくれ、確かに嫌な役回りではあったが。引き受けたのは俺だ。謝ってもらう必要はない」
「・・・・・・・・じゃとしても」
「だからいいって・・・・おっと、忘れないうちに伝えておかないとな。フェイから伝言がある。ごめん、そしてありがとう・・・・それから、先に行って、待ってるだとよ」
「まったく、フェイと来たら。わしが行くのは、あと数百年は先じゃろうて」
その言葉にオッサンは、後、数千年くらいは生きそうだと思ったが。あえて口にはださなかった。
「後、これも」
「これは・・・・」
「フェイの指輪だ」
ばあさんに指輪を手渡すと、ギュッと抱きしめる様に、指輪を大事そうに受け取った。
「馬鹿者・・・・」
「・・・・・・・・」
「はあー。ルド・ロー・アス、此度はありがとう。エルフの族長として、フェイの家族として礼を言う」
「そんなたいした事はして無いよ。それじゃあ俺は行く」
「あぁ。む、そうだ! 忘れていたよ」
「なんだ、ばあさん?」
「女王の件さ」
「・・・・・・・・」
オッサンは、女王案件と聞いて沈黙した。
たらりと、冷や汗が首筋を流れる。オッサンにとって、エルフの女王は・・・・厄介も厄介、正直関わりたくない案件なのだ。
「そう怖い顔しなさんな。取って食おうってわけじゃないだろ」
「ばあさんはそうでも、女王はある意味そうだろ?」
「ひゃっひゃっひゃっ、確かにそうさね。中々、上手いこと言うね」
「別に上手くねぇ」
オッサンを気に入り。夫にと望む、エルフの女王。齢二千才を超える、ハイエルフで、絶世の美女ではあるが。内面は色々と問題がある人物なのだ。
「それで、どんな要件なんだ?」
「大体の察しはつくだろ?」
「まあな」
「ふん、なら言う必要も無いかの?」
「どうせ、シャングロイアに来いとかだろ?」
「まあ、当たりじゃな。あの我儘娘・・・・」
「ばあさんって、あの女王より年上なのか?」
「レディに年を聞くもんじゃないよ」
レディって年でも・・・・。
「なんだい、その目は」
「いや、なんでもない。ふう・・・・俺はそろそろ行くよ」
「もう行くのかい?」
「あぁ、これから公国に行かないといけないんだ」
「ほう、また厄介事か」
「まあな。それじゃあな、ばあさん」
「感謝するよ、ルド・ロー・アス」
「ばあさんも達者でな」
*****
「ルド様ー!」「ルド殿」
「ん? エリエルどうかしたか? それに、ユミアまで待ってたのか?」
ばあさんの部屋から出ると、ユミアが待っており。更に、エリエルが頭に乗ってきた。
「ルド様ー! 私と一緒に、妖精の里にいくのです! 大精霊様が待ってるのです」
「大精霊が?」
「はいなのです」
大精霊が俺になんの用だ?
「リッチーを倒した事への感謝か?」
「分からないです。けど、連れて来て欲しいと、お達しが合ったのです!」
「ふむ? あっ! そう言えば、エリエルの住む妖精の里は、無事だったのか?」
「無事なのです! アンデットやゴーストは去ったと、大精霊様が仰っていましたのです!」
「そうか、なら良かった。だが・・・・なんの用だろう?」
「うー、ルド殿いいな」
俺の横で、ユミアが羨ましそうにこちらを見ていた。どうやら、エリエルの住む妖精の隠れ里アーナンに、相当行ってみたいらしい。
「なあ、エリエル」
「なんです? ルド様」
「俺は良くて、ユミアはなんでダメなんだ?」
オッサンは、ちょっと疑問に思っていた事をぶつけてみた。
「んーー」
何故か考え込むエリエル。それをユミアは、固唾を飲んで見ていた。
「兎に角、ユミアはまだダメなのです」
「んー、何か決まりでもあるのか?」
「あると言えば、あるのです」
「それは?」「なんなのエリエル!」
「それは・・・・知らない人を連れていっちゃダメなのです」
「「・・・・・・・・いや、それは当然そうだろ!」でしょ!」
エリエルのボケなのか、良く分からないが。当然のことを言われてもな。
「あとは・・・・」
「まだあるのか?」
「大精霊様が許可するかどうかなのです」
「成る程・・大精霊様に・・・・」
「その大精霊様は、ダメと言ってるのか?」
「聞いた事ないのです。ですから、聞いてみるのです」
「エリエル! お願い!」
「んーーーー」
目を閉じ、何やら大精霊様と交信し始めたエリエル。それを、じっと見守るユミア。
「分かったのです!」
「おう、どうなんだ」
「ユミアは・・・・」
「「ゴクリ・・・・」」
「来ても良いそうなのです。ユミアをご招待するのです!」
「意外とあっさりだったな」
「やったーー! エリエル! 私、エリエルの家に、妖精の里に行けるのね!」
「はい、なのです! ルド様とユミアをご招待なのです」
「妖精の里かぁー」
まるで、御伽噺の世界だな。そう言えば、小さい頃よく、お袋が聴かせてくれたっけなぁー。あれ? 確か妖精の噺って・・・・怖い奴もあったような・・・・。まあ、あくまでも物語の創作物だし。気にする必要無いか。
「それにしても・・・・早く公国に向かいたいのだが・・・・」
オッサンは、何時になったら出発出来るかが、心配だった。
既に、空は白み始め。東の空は明るくなって来ていた。
「さあ、行くのです! ルド様!」
「分かったから、髪を引っ張るなよ」




