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不死の王 その3


「ゴーストやらアンデットが、わんさか居ると思ったが・・・何もいないな」


 古代都市らしき。遺跡の街中を進んで行くが。特にこれと言って何も無いし、何も起こらない。


「ここまで何も無いと・・・・逆に怖いな」


 ただでさえ不気味な場所なのに・・・・何も無い。

 どう言う事なんだ? リッチーが居るのは間違いない。リッチーの気配は、今もビシバシと感じる。しかし・・・・何故かここの空気は、とても清浄に感じる。リッチーの側なら、死と腐敗の空気に汚染されてるものだが・・・・ここの奴は、まとも? 


 闇堕ちしてはいない・・・・のか? そして、悪でも無い? 

 うーーん、どう言う事だ?


 オッサンが考え込んでいると・・・・。


「こぉーーっちぃだぁーーー」


「おわっ! なんだ?」


「こおぉーーーっちだぁーー!」


「こぉっわっ・・・・もしかして、リッチーなのか?」


 古代都市の遺跡に、響く不気味な声。ここに居るのは、リッチーしかいないだろうから。リッチーだと思うが・・・・。


「リッチーだとしたら、何故俺を呼ぶ?」


 普通なら・・・・自分のテリトリーに侵入して来た奴を、殺すためだろうけど。


「考えても仕方ない。行ってみるか、声の元へ」



       *****


「どうやら、ここみたいだな」


 声の主が居るであろう場所に着いた。城? いや、神殿と言った方がいいだろうか。古代都市の遺跡の中心地に、巨大な神殿が建っていた。


「気配が物凄く強い。ここで、間違いないか」


 それにしても、リッチーが住んでる場所にしては、とても綺麗だ。綺麗好きのリッチー? そんな訳無いか。


「リッチー特有の、死と闇の波動を、普段から抑えて暮らしているのかな? にしても、俺の知り合いのリッチーでも、ここまで抑えて暮らすのは、無理だろうな」


 俺の知り合いのリッチーは、一言で言えば、研究馬鹿だ。世界の真理を解き明かす為、リッチーとなる事を選んだ変わり者。初めて会った時など、ひたすら研究について語られた。人に迷惑をかけぬ様に、ひっそりと秘境に暮らしいる。


「そう言えば、アイツどうしてるかな? 闇堕ちしてないよな?」


 思わず心配になるオッサン。知り合いを手にかけるなど、したく無いからだ。


「さて、兎に角今は・・・・ここのリッチーに集中だな」


 オッサンは、遺跡の神殿の中へと入って行く。薄暗い神殿の中、灯りで照らしながら。神殿の探索をおこなった。


 入り組んだ神殿内部! 待ち受けるリッチーの配下! 

 オッサンは、一応想定しつつ中に入ったのだが・・・・。

 思いのほか簡単に、この古代遺跡の主は見つかった。



「やあー、こんばんわ! お茶でも飲むかい?」


「・・・・はいぃぃぃ?」


 目の前に、間違いなくリッチーが立っている。そして、何故かオッサンにお茶をすすめていた。


「・・・・あんたがリッチーか」


「ん? そうだけど? リッチー以外に見えるかい?」


「いや、見えん」


 ニヤリと笑う髑髏顔。強力な魔力。どう見ても、その姿はリッチーであった。喋りの感じから、大丈夫そうな雰囲気はしたが。らオッサンは、リッチーを警戒していた。リッチーは、大概の奴は頭が良い個体が多いからだ。演技しての騙し討ちに、注意が必要だった。


「まあまあ、そう警戒するなよ。君は俺より強いだろ?」


「まあな。しかし、警戒を解く理由にはならないだろ?」


「そりゃそうだ。所で、何用で来たんだい?」


「・・・・ゴーストやアンデットが、森に溢れていて迷惑してる。

 あんたの仕業なんだろ? えっ、不死の王?」


「うーんと、僕で間違いないけど。別に襲おうとか思った訳じゃ無いよ?」


「それを信じろと?」


「まあ、信じられないだろうね。僕でも、君の立場ならそうだし。

 でも、良かったよ。君が来てくれたのも、精霊のお導きだね」


 ん? 精霊のお導き? 


「そろそろ、危なかったんだ。何とか抑えていたけど、外はゴーストやアンデットで溢れているとなると。時間は余り無かったみたいだ」


「おい、お前さっきから何を言って・・・・」


「頼む人の子よ、僕を殺してくれ! 不死たる僕を! ノーライフキングの僕を!」


 リッチーは、バサッとマントを翻す。そして、両手を広げて俺の方を向いた。「さあ、やってくれ」と言いながら。


「ちょ、ちょっと待て! どう言う事だよ!」


「ん? どうも何も、そのままの意味さ。あっ、そう言えば! 結界はどうしたの?」


「結界? あぁ、精霊石で解除した奴か?」


「精霊石・・・・なら、ユサナがその精霊石を?」


「ユサナ?」


 誰だ? ユサナって?


「エルフの女性だよ。確か・・・・今は族長になったんだっけ?」


「えっ、ばあさんの事か?」


「ばあさん? そうか、もうそんなに時が経っているのか。外に出る事も無く、ここに閉じこもってるからなぁー。時がどれだけ経ったかは、分からないんだよなぁ」


 コイツ、ばあさんと知り合い? 一体どう言う事だ?


「あぁ、そんなに警戒しなくてもいいよ。彼女とは、昔からの知り合いでね。何を隠そう、僕は元エルフなんだ」


「・・・・!」


 元エルフのリッチーは語り出した。かつて、ここに栄えたエルフの古代都市について・・・・。



「昔、そう、大昔・・・・ここは、とても栄えたエルフの都だった。彼女とは、ユサナとはその時からの知り合いさ。彼女の家、シュペリエル家と。僕の家、ルフリウス家は、この地一体を治めていた二大名家だった。ユサナとは、幼い頃からの知り合いで。いわゆる幼馴染と言う奴だった。二大名家が治める都は、数百年に渡って繁栄を極めた。そして・・・・シュペリエル家とルフリウス家の繋がりを強める為に。彼女、ユサナと僕の結婚が決まった。正直、彼女とは姉弟のような関係だったが、結婚が嫌と言う訳では無かった。幸せだった。愛する人と共に、この都を治めていくと言う事に」


「だが、ある日・・・・僕達の幸せは壊れた」


「恐ろしき、魔物の軍勢によって、都市は壊滅させられた。

 僕は、ユサナや都の民を逃す為に、禁断の術を使った。

 不死の王となる、禁断の術を! アンデッドと成り果てた変わりに、その手にして力で魔物の軍勢を滅した。僕の守りたい彼女を、ユサナを助ける事はできた。しかし、僕は二度と彼女の前に出る事は出来なくなった」


「死と闇の波動か?」


「うん。エルフにとっては、猛毒と同じだからね。近づけば、ユサナの命を奪う事に・・・・」


「だから、ばあさんは結界を・・。それからずっと、廃墟とかした古代都市の遺跡に・・・・」


「別に嫌では無かったよ。ここは故郷だからね。幸せだった記憶と共に過ごせたしね。ただ最近は、その記憶すらも失い始めた。分かるんだ、自分が少しずつ、怪物になろうとしている事に。長い月日を耐えてきたが、もう限界のようだ。心まで、真の怪物と成り果てる前に、僕を消してくれ!」


「いいのか本当に? それしか方法ないのか?」


「残念ながら・・・・」


「そうか・・・・分かった」


「ありがとう、人の子」


「ルドだ。名前、ルド・ロー・アスだ」


「僕は、フェイ。フェイ・ルフリウスだ。・・・・それじゃあ頼んだ」


「あぁ」


 フェイは、両手を広げてその場に仁王立ちした。オッサンは、大剣を抜き、剣に魔力を込める。剣は白く聖なる光を宿し。眩しい程に輝いた。


 オッサンは、剣に大量の魔力を注ぎ込む。一瞬で終わる様に、少しでも痛く無いように。リッチーとなった彼は、痛みなど感じ無いが。オッサンの優しい配慮であった。


「行くぞ」


「あぁ、すまない。こんな事を頼んで」


「・・・・何か伝える事はあるか?」


「・・・・ユサナにごめんと。そしてありがとうと。それと、先に行って待ってると、伝えてほしい」


「分かった。安らかに眠ってくれ、フェイ。秘剣、白光の調べ」


『シュバーーーン』


 あ、りがとう、ル、ド。


 オッサンの剣に貫かれたフェイは、灰となって消えていった。


 くそっ、後味の悪い仕事を引き受けちまったぜ。ん?


 灰の中に、フェイが身につけていたであろう指輪が埋もれていた。


 コイツはばあさんに届けた方がいいかな。

 オッサンは、指輪を灰の中から取りだして、胸ポケットにしまったのであった。


「さて・・・・ユミア、エリエルと合流して、エルフの里に帰るか」


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