不死の王 その2
「何がどうなってるのです? ルド様? こ、コレですか?」
エリエルはかなりテンパりつつも、両手を前に出し。オッサンが前にやった、パーンをして見せた。
「いや、あれはゴーストを祓うための技だから。ゾンビには効果無いんだよ」
「そうなのです? と、兎に角、凄いのです!」
「ルド殿、貴方は一体なんなのです?」
なんなのと言われてもな・・・・ただの人間だとしか言えないが。
あの、手の平でパーンは、ゾンビに効果が無い。
そもそもゾンビには、魂が入っていないからだ。あの技は、あくまで魂を浄化して、強制的に昇華させるものだ。魂のないゾンビは、物理的に攻撃するしかない。しかし、俺の放った攻撃は、物理系と言うもり。物理魔法系かな?
「ユミア! ゾンビが灰になっていくです!」
「これは・・・・」
「聖魔法を剣に宿して放つ、秘剣、白光の調べって技によるものだ。アンデット系には効果抜群なんだ」
アンデット系に対して有効な、俺が使える唯一の技だ。
因みにパーンは、攻撃では無く、お祓いである。
「ルド様、凄いのです!」
「さすがエルフの都、シャングロイアを救った英雄です!」
「煽てても何も出んぞー。・・・・それにしても、ゾンビか。もしかして、リッチーが寄越したのか?」
リッチークラスなら、もっと強言うアンデットを使役しているはずだが・・・・小手調べのつもりか? 或いは、リッチーの力に当てられて、アンデットやゴーストが活性化しただけか?
「まあ、兎に角。行くか」
「「はい」なのです」
その後、森で数回ゾンビとゴーストの襲撃に会った。操られて来たと言うより、たまたま出くわしたに近い気がする。何故なら、統率も何も、あったものでは無かったからだ。
「うーーん」
「どうしされたのですルド様?」
「うーーん。いや、リッチーの奴は何がしたいのかと思ってな」
「どう言う意味ですか、ルド殿」
「いや、途中で襲撃して来たアンデットやゴーストは、なんと言うか・・・・リッチーが寄越した言うより。リッチーの力に当てられて、集まった奴だと思うんだよなぁー」
「ですが、そうだとしても。かなりの数ですよ?」
「そうなのです! たくさんなのです! 怖いのです!」
「まあ、リッチーならこれくらい普通だぞ?」
前に戦った奴は大変だった。リッチーの現れた近くが、古戦場跡地で。スケルトンやゴーストやらが何千と・・・・。あれは本当に大変だった。
「それに・・・・リッチーになった奴の多くは、ひっそりと暮らしたい奴ばかりだからな。攻撃的な奴は大概、恨みを残して不幸な死を遂げた奴とか・・・・ひっそり暮らしていたリッチーが、闇に呑まれた所為で、自我を失った奴とかだな」
「そうなのですか?」「ルド様、お詳しいのです!」
恐らくだが・・・・コイツは後者の気がする。なんとなくだが。
「兎に角、気を引き締めて行こう。もう、リッチーの住む山だからな」
「「はい」なのです」
俺達は、リッチーの住む山へと入った。山中は、特に襲われる事も無く。山の中腹に来た辺りで、異変が。
『ゴチィーーーン!』「あたぁっー!」「きゃあーー!」
「ルド殿?! エリエル?!」
どうやら何かにぶち当たった。頭の上に乗っていたエリエルも、衝撃で落ちてしまった。
「なんなんだ? ・・・・何も無いよな?」
辺りを見回すが、何も無い。当たった物が無い。どう言う事?
「ルド様どうされたんです急に・・・・」
「いや、何か当た・・・・ん? なんだ? 壁?」
「「壁?」」
「おぉ、なんか見えない壁があるんだよ。ほら」
『コンコン』と見えない壁をノックして、二人に教える。二人も近づいて、空気中にノックして調べてみる。
「本当なのです! 壁なのです!」
「なんでしょうか、コレ?・・」
「ユミアも分からないのか?」
「はい。こんなの初めてです」
「エリエルはどうだ?」
「はいなのですルド様。エリエルも分からないのです・・・・」
「そうか」
この森に暮らす二人が分からないとは・・・・なんなんだ一体?
やっぱり、リッチー関連なのかな? あっ、もしかして!
「コレがばあさんの言ってた結界か?」
「成る程、そうかもしれません」「きっとそうなのです!」
「だと、すると・・・・ユミア」
「はい」
ユミアは、胸元から精霊石を取り出す。すると・・・・。
「なっ、コレは一体・・・・」
「おいおい、精霊石が!」「ピカピカなのです!」
精霊石が、突然輝きだす。緑色の光は、暗い夜の森を明るく照らした。すると緑色の光は、レーザーの様に一点に収束して結界に当たった。結界は、水に立つ波紋の様にうねり。パリンと割れる様な音と共に消えていった。
「すげぇーな」「はいなのです。凄いなのです」「本当に凄いですね」
オッサン達は、全員で呆然とそれを見ていた。ちょっと神秘的な光景に、三人は驚き感動していた。
「これで・・・・す・す・めるな」
一歩一歩慎重に進み、腕を伸ばして確認した。見えない壁は、綺麗さっぱりに消えていた。
「よし、大丈夫そうだ。行くか」
「はいなのです!」「はい!」
にしても・・・・この結界、なんであるんだろう? リッチーを閉じこめるため? ・・・・なんか、少し引っかかるな。
*****
結界の先に進み、少し経った頃。エリエルが叫んだ。
「ルド様、あそこなのです! あそこに何かあるのです!」
「ん、何かあったのか? エリエ・・・・。なんじゃこりゃ?」
頭上に飛んでいたエリエルが、何かを発見し。それが何かを聞く前に、オッサン達の目の前に、謎の遺跡が現れた。
「ルド殿の、これはなんでしょうか? 見た限りではら遺跡に見えますが」
「まあ、見たまんま遺跡だよな? 古代都市かな? それも結構古い・・・・それに」この先に居る。・・・・リッチーが間違いなく居る!
リッチーまでかなり近い。遺跡周辺には、上位アンデット特有の、嫌な気配が立ち込めていた。
「うっ」
「大丈夫かユミア?」
悍ましい気配に、ユミアが当てられたらしく。気分を害して、膝をついてしまった。
「はい、大丈夫・・・・です。不死の王に、だいぶ近づいたみたいですね」
「あぁ・・・・エリエルは大丈夫か?」
「はいなのです。大丈夫なのです」
「エリエルは中々強い子だな」
「はいなのです!」
「ユミア、ここからは俺一人で充分だ。ここに残れ」
「いえ、ですが!」
「すまんが、足手まといだ。エリエル、ユミアについていてくれ」
「出来ればルド様に着いて行きたいですが、ユミアも心配なのです。分かりましたのです」
「おう、頼んだぞ」
さて、行くか!
オッサンは、古代遺跡へと歩みを進める。この先に待つ、不死の王とオッサンの、闘いが始まろうとらしていた。




