通りすがりのオッサンは頼まれる その3
「成る程、そんな事があったのか。エリエルを助けてくれてありがとう。人間」
「人間呼びは止めてくれないか? 範囲が広すぎだ。
俺はルドだ。ルド・ロー・アス」
「・・・・すまない。私はユミア、ユミア・シュペリエルだ」
シュペリエル? どっかで聞いたような・・・・記憶違いか?
「どうかされたのか?」
「いや、何でも無い。それより・・・・」
「はいなのです! ユミア! 大変なのです!」
ユミアの頭の上で、大騒ぎするエリエル。
「ちょっとエリエル、髪を引っ張らないで」
「ユミア。兎に角、里で話しを聞こう。我々としても、森の異変について聞きたいからな」
髭を生やした、リーダーぽいエルフが提案してくる。森の異変・・・・エルフ達も何かを感じとっているのか?
「分かりました。ですが人・・その者は」
「貴殿も来てくれ」
「お待ち下さい」「人を里に入れるなど!」「そうです! 隊長」
数名のエルフ達が反対する。まあ、そうだろうな。エルフは排他的だからな。
「構わん。責任は私が取る」
お髭のエルフがそう言うと、みんな黙ってしまった。責任を取ると言われたら、何も言えないか。でも・・・・。
「いいのですか? エルフは基本、里に人間を招くのを嫌うのに」
「君ならかまわん」
「ん? それはどう言う・・・・」
「いや、何。貴殿はかつて、エルフの都、シャングロイアの危機を救ってくれた方であろう?」
「シャングロイアか、懐かしいな」
「叔父上! まさかこの方が!」
「そうだ。あのシャングロイアを襲った大悪魔、アブロ・ナーバを倒した者だ」
「「「「おぉー、あの大悪魔を!!」」」」
「アブ・・・・」
「アブロ・ナーバスよエリエル。そう、貴方が・・・・なら、歓迎しない訳にはいかないわね」
「では、ルド殿。こちらにどうぞ」
「それじゃあ、お邪魔します」
*****
「おぉー! やっぱりエルフと言ったら。ツリーハウスだなぁー」
「どうかしました? ルド様」
エルフの里の光景に、興奮する俺の頭の上から、エリエルが聞いてくる。
俺がこんな反応になるのも仕方ない。エルフの都、シャングロイアは近代的な都市だ。それも、なんと空中都市だ。昔見た、アニメ映画を思い出す光景だった。他のエルフの隠れ里を訪れた事もあるが、普通の民家に暮らしていて、ちょっとガッカリしたのを覚えている。
兎に角、ここのエルフ達の家は・・・・超、エルフっぽいのだ。
「こちらが族長の住まいだ。族長、連れて来ました」
「うむ、入れ」
族長のツリーハウスに入ると、奥に座るエルフが目に入った。
そこには、キセルを咥え、タバコをふかすエルフのおばあさんがいた。
「お婆様、タバコは体に悪いと言っているだろう」
お婆様? ユミアのおばあちゃんなのかこの人? ユミアに嗜められた族長は「うるさい孫だね」と呟くが、タバコを吸うのを辞めなかった。
「族長、お客だぞ」
「ふうーー・・・・見りゃあー分かるよルーグ。すーー、ふうーー」
「お婆様!」
「・・・・まさかこの里に、シャングロイアを救った英雄を迎える事になろうとは・・・・これもお導きか
「族長? 俺が来た事が何でお導きとやらなんだ?」
俺がそう尋ねると、族長はキセルを置いた。
「ルド・ロー・アスよ。お前が来たのは精霊様のお導きよ。この森の異変に、精霊様がお前を遣わしてくださったのだ」
「余計に分からん。どう言う事だ? 何故精霊が俺を?」
「お主、ここを良く通っていたのでは?」
「良くとまではいかないが、たまにな。でも、なんで知ってる?」
「ふほぉっ、ほっほっ。わしは、この森の事なら何でも知っとる。
しかし、今までこの里の事、気づかなかったであろう?」
「まあな。でも、それは魔法で隠れていたからだろ?」
「確かにそうであるが・・・・そこの、ちっこいのが証拠じゃよ」
族長は妖精のエリエルに顔を向ける。確かに、何度も通って来たが。今まで、妖精なんて見た事なかった。
「それに、それだけでは無い」
真剣な族長のその言葉に、ゴクリと唾を飲む。
一体、精霊は俺に何を!
「と思う」
「「「「「はい?」」」」」
何? と思う・・・・つまり、どう言う事じゃい!
「ルド様、ダメです。この、おばあちゃんボケてます」
「誰がボケとるだと! このちっこいの!」
「族長、落ち着いて下さい!」「お婆様! エリエルも!」
なんなんだよ、まったく。俺は先を急いでるんだぞ!
「兎に角、お主がここに来たのは、精霊様のお導きじゃ。と言う事で手を貸せ」
「結局それかい」
「まあ、そう言うな。どうせ、力を貸してくれるのじゃろう?」
「はあーー、まあな。しかし、その異変の原因は分かってるのか?」
「うむ、分かっておる。よっこいせ」
族長は立ち上がり、窓の方へ歩き出す。
「あそこに見える山、あそこに異変の元凶がおる」
「もしかして、正体も掴んでるのか?」
「うむ、分かっておる。あそこには、かつて賢者と呼ばれた人間がおった。今は、不死の王となっておるが」
「不死の王・・・・ってまさか! リッチーか?!」
「そうじゃ」
おいおい、冗談じゃねぇよ。よりにもよってリッチーかよ。
成る程、だからあの数のゴーストが。
リッチーが関わっているなら、やるしかないな。放って置く危険だ。
「分かった。手を貸そう」
「それでこそ、ハイエルフの女王が夫にと望んだ男じゃ」
「それ、断ったからね」
「ほっほっほ。今でも諦めとらんぞ、あの欲張り娘は」
「ん? ばあさん、あんたあの女王を、娘扱い出来るくらい偉いのか?」
「さあてな。・・・・伊達に年を食っとらんからの。ほっほっほ」
このばあさん・・・・もしかして只者じゃないのでは?
あの女王様、まだ諦めてないのかな? ・・・・まあいいか。
それより、リッチーだ。さっさと終わらせて、公国に向かわないと! そう奮起するオッサンであった。




