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王都への帰還


「あのな、リュリュティア。そろそろ行かないと」


「うむ」


「・・・・えっと、また直ぐに会えるから」


「うむ」


「お土産持って、会いに行くから」


「うむ」


「だからいい加減、離して欲しいんだが?」


「うむ」


 ずっと、うむしか言わない。何だ、どうしたんだリュリュティアは? こんな事初めてだ。


 リュリュティアは、オッサンの足に抱きついて離さない。返事はするが、決して離そうとしなかった。


「えーと、リュリュティア?」


「うむ」


 寂しそうにするリュリュティアの為、三日滞在したのだが・・・・余計に離れがたくなったようだ。


 一体どうしたんだ?


「リュリュティア。ルドも忙しいのじゃ、駄々をこねるのでは無いのじゃ」


「・・・・うむ・・・・う、う、うぐ」


「リュ、リュリュティア?!」


 オッサンの足に抱きつきながら、ポロポロと涙を溢すリュリュティア。


 アカン! ど、どどど、どうしたら?!


 あたふたするオッサン。最強の冒険者も、子供のあやし方など知らない。


 えーと、こう言う場合・・・・アレしかないか。


 オッサンは、ポロポロと泣くリュリュティアを、ギュッと抱き抱えた。


「よしよし。もう会えないって訳じゃ無いだろ」


「う、む」


「よしよし」


 リュリュティアは、オッサンにギュッとされて、少し落ちついたのか、顔をあげた。


「うむ・・・・もう大丈夫なのだ」


「そうか。リュリュティアはいい子だな」


「うむ、リュリュはいい子なのだ」


「ルドはリュリュティアに甘いの。リュリュティア」


 テュラミアーダが、オッサンに代わってリュリュティアを抱っこする。


 あの、こう言う時は、母親の役割なんじゃないか?

 クリュレミアの方を向いて「おい、いいのか?」と目とハンドシグナルで伝える。するとクリュレミアは「別に良いのじゃ」と手をチョイチョイとして答える。


 うーん。クリュレミアはもう少し、母親らしい事しろよ。愛してないって訳じゃないだろうけどよう。ちょい厳しすぎないか?


「はあー。・・・・そんじゃ行くな。またなリュリュティア」


「うむ、またなのじゃ」


「ルドよ、また遊びに来るがよいの」


「遊びに来た訳じゃないがそうするよ、テュラミアーダ。クリュレミア・・・・」


「ん、なんじゃ?」


「乗せて送ってくれ」


「む! 我は乗り物では無いのじゃ! ただし、酒をくれるなら考えるのじゃ」


「結局それかよ。もう、本当にねえよ」


「なら歩いて帰れなのじゃ」


「冷たいやつだな。仕方ない、徒歩で帰るか」


 ここからだと、何日かかるか。真っ直ぐ行けば・・・・何とかなるか? 


「ルドよ」


「ん、何だテュラミアーダ?」


「妾が転移の魔法で送っやろうかの?」


「テュラミアーダ! お前そんな事出来るのか?」


「うぬ、龍脈の流れを利用すれば出来るの。ベゴン山脈に送ってやろうかの?」


「頼むテュラミアーダ! それにしても凄いぞ。転移の魔法が使えるなんて!」


 異世界の定番とも言える魔法。謎の奴等も使っていたが、恐らくあっちの転移は、短距離だろう。短距離と言っても、数キロか、数十キロ程。今回のテュラミアーダの様に、長距離の転移は、かなり凄い事だ。


「では行くぞ。ふぬぬぬぬぬ、はっ!!」


 オッサンの足元を、見た事無い魔法陣が光り輝く。


 こいつは・・・・古代魔法の類いか? 本当に、コイツを見たら。ファルガスの爺さんが狂喜乱舞するな。


「おぉおぉ、凄いぞコイツは! うん。それじゃあなクリュレミア、リュリュティア、テュラミアーダ」


「バイバイなのだーー」


「ではの、ルド。今度会う時にはあの酒を持ってくるのじゃ」


「ふーー、安定したの。では送るの! ではの、ルド」


「あぁ、じゃぁ・・・・」


 オッサンの姿が透け、光と共に消えいった。


「いったの」


「うむ。せめて酒を置いていって欲しかったのじゃ」


「酒は嫌いなのじゃ! ・・・・・・・・う、うう。寂しいのだ」


「やれやれ。リュリュティアはまだまだ子供なのじゃ」


 そう言うと、クリュレミアはリュリュティアを抱き抱え。鼻歌、いや、子守唄を口ずさむ


「るーるーらーるーー♪」


「リュリュはその歌が好きなのだ。・・・・眠い・・・・のだ」


 子守唄に包まれて、リュリュティアはコクリコクリと、船を漕ぎ始め、クリュレミアの腕の中で眠りについた。


「お休みじゃ、我が娘よ」



 その頃、転移したオッサンはどうなったかと言うと。


「うわぁ〜〜ん、わあぁ〜〜ん、らわぁ〜〜ん、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーあっ?!」


 虹のような光りに包まれ、ジェットコースターのような乱高下を繰り返していた。


「うっぷ、ぎもぢ悪い・・・・『パッ』えっ?」


 光りから抜けた。転移したのか? あれっ? 


 下を向くオッサン。


「地面がなぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!『ドゴン!!』


「いったーー。テュラミアーダの奴、高さをちゃんと調節しろよ。まったく」


 軽く、高さ100メートル程落下して、地面に激突したオッサン。勿論無傷である。


「ふう。ここは・・・・ベゴン山脈・・・・だよな? 凄い、一瞬ではなかったけど、こんなに早く・・・・よし。王都に帰ろう!」


 帰ったらまず、家の掃除でもしよう。陛下に知らせるのは、その後だな。



 *****

 

 イサルカ王国王城、国王執務室。


『バーーーン』


「陛下大変です!」


「どうした大臣? そのように慌てて。お茶でも飲んで落ち着くのだ」


 大臣のサロームが、珍しく慌てて部屋に入ってきおった。なんじゃろ? 嫌な予感が・・・・。


「お茶を飲んでる場合ではありません! エングランツ公国より、急ぎの報せが!」


「エングランツからじゃと? して要件は?」


「エングランツ公国シャウードの迷宮にて、異変あり。冒険者、ルド・ロー・アスを至急エングランツに送ってほしいとの事です」


「なっ、なんじゃと! シャウードの迷宮じゃと!」


 シャウードの迷宮?! あのシャウードか?! 冒険者ルド・ロー・アスですら、未だ未踏破の?! それに迷宮で異変・・・・これはもしや。


「陛下、やはりクシャーナ殿下の報告は・・・・」


「うむ。断定はできんが・・・・メルキオスが起きた後というのが気になる。しかし・・・・肝心の者が・・・・」


「くっ、どう致しましょう陛下」


「どうすると言っても・・・・早い帰参を祈るしか・・・・」


『バーーーン』


「ご報告いたします!!」


「今度はなんじゃ?!」


「ルド・ロー・アス殿が帰って来たとの事です!」


「本当か?! よし、直ぐに城に呼ぶのだ!」


「あの、それが・・・・」


「なんじゃ? どうしたのだ?」


「えっと、疲れたし一旦家に帰ると言って・・・・後で城には行くと」


「「はいぃぃぃ?!」」


「ええぃ! 兎に角連れて来るのじゃ!


「はっ!」


『バーーーン』


「またか?! 今度は誰・・・・クシャーナ?」


「その役目! 妾がお受け致しましょう!!」


 ルド殿の! 今、逢いに行きます。あなたのクシャーナが!


「こら、リサーナ!! 何をやってる!!」


「いえ、姫様の心の声を、代弁せねばと」


「そんにゃ事・・おもってにゃいぞ! ・・・・おもってにゃい!」



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