閑話 その頃王女は
豪華な馬車と、それを護衛する、数十人騎士兵士の一団が。王都を目指していた。そしてそれには、王女クシャーナと側近のリサーナの姿があった。
「姫様、もうすぐ王都に着きますよ」
「・・あぁ、そうだな」
「心ここに在らずですね」
「・・あぁ、そうだな」
「姫様は、ルド殿が大好きなのですね」
「・・あぁ、そう・・・・リサーナ!」
「ふふふ、引っかかりましたね姫様」
「お前はいつもいつも! 妾を揶揄って、そんなに楽しいか?」
「はい、楽しいです。殿下を揶揄うのは、私の数少ない楽しみです」
「趣味が悪いにも程があるぞ、リサーナ」
妾の護衛であり側近のリサーナ。十歳の頃から一緒だが、何と言うか・・・・妾に遠慮が無い。妾、王女なのに! しかし、嫌いと言う訳では無い。それどころか、親友と思っている。意地悪だがな。
「姫様、王都が見えました」
「うむ、久しぶりの王都だな。リサーナ、城に着いたら、直ぐ父上に・・陛下に謁見する。連絡して置いてくれ」
「はっ、分かりました。誰か!」
「お呼びでしょうか?」
馬車の小窓を開け、リサーナが人を呼ぶと、馬に乗った騎士が応える。
「姫様が城に到着次第、陛下に謁見をしたいとの事です。先ぶれとして向かい、謁見の取り継ぎを」
「はっ!」
「リサーナ・・・・」
「何でしょうか姫様?」
「ルド殿は、今どうしていると思う?」
「分かりません。ですがきっと、ルド殿なら何かの手掛かりを掴んでいるかと」
「・・・・うむ、そうだな。ルド殿ならきっと」
私は、馬車の窓から見える空を見つめた。すると、それを見ていたリサーナが、笑いかけてきた。
「うふふふ」
「何だリサーナ?!」
「いえ、ルド殿を思い、空を見つめる姫様の姿が、恋する乙女で可愛らしいと思っただけです」
「りひゃーーーにゃ!!」
ほんと、顔を真っ赤にされて、お可愛らしい事。うふふふ、これだから、姫様を揶揄うのはやめられないのです。
*****
王城謁見の間。
「クシャーナ、どうであった?」
久しぶりの娘との対面。王と王女としての、謁見の間にての顔合わせのため、椅子に座り偉ぶってらいはいるが。内心では直ぐさま側に行き、帰りを喜びたい。けど我慢じゃ。大臣や、妻に叱られるからの。
「はい陛下。メルキオス迷宮についてはコチラを」
メルキオス迷宮で起きた、今回の事件についてをまとめた書類を取り出す。それを一旦、文官に渡し、文官はそれを陛下の元へ運んだ。
「ふむふむ。何と!」
「陛下、どうしました!」
「クシャーナ、これは本当か?」
「はい。ルド殿以下、紅き三ツ星も確認しております」
「陛下、一体?」
「大臣も目を通して見よ」
大臣は書類を手に取り、それに目を通していく。持っていた手がプルプルと震えだす。
「陛下! これは・・・・」
「うむ、何者かの陰謀の可能性がある」
「・・・・ですが、たまたまと言う可能性も」
「ない事もないでしょうが・・・・迷宮内にいたタルボロは明らかにおかしく、自然にとは考えられないでしょう」
リサーナの説明より。ほぼ確実に、何か陰謀によって起きたと言わざるえないと、わしは確信した。
「一体何者の仕業か・・・・まさか隣国が? いや、それは無いか」
「陛下。他の迷宮にも、調査及び、警戒を通達しましょう」
「そうだな、大臣。じゃが、それだけではダメだ。他の国、迷宮がある国全てに警戒を呼びかけよ。我が国だけが狙われたとは限らぬ」
「はっ、直ちに取り掛かります。後ほど、他国への外交文書を作成して、お持ちいたします」
「うむ。所でクシャーナよ、ルド殿と一緒に帰って来たのでは無いのか?」
「はい。ルド殿は調査したいとの事で、迷宮に居た魔物の生息地、アウダマの森へ向かいました」
「うむ、そうか。ルド殿なら何か掴むであろう。それでだな・・・・クシャーナ・・・・えーと」
「何でしょうか陛下?」
「ゴホン! ルド殿との仲は進展したのか?」
「にゃ、にゃにを言ってるのでしゅかーー!!」
「陛下、どうやら」
「うむ、どうやら・・・」
わしはボソボソと、大臣と話す。クシャーナの反応は、意外な程取り乱していたからだ。
「へ・い・か!」
「な、なんじゃ、ルシャペリーネか」
「なんじゃとは何ですか? 妻に向かって!」
「いや、そのう」
「クシャーナ、お帰りなさい」
「ただいま帰りました。母上」
突然、美女が現れ、陛下達を諌めた。彼女は現国王の妻、ルシャペリーネであった。顔だちは、クシャーナに良く似ていて、胸のボリュームもそっくりだった。
「クシャーナ、お疲れ様です。どうでしたか、かの冒険者との旅は?」
「はい母上・・・・とても素晴らしい体験が出来ました。後でお話し致します」
「はい、楽しみしておきます」
「ならわしも・・・・」
「貴方は仕事終えてからね」
「・・・・はい」
*****
王女クシャーナの部屋。
「はあー、ルド殿・・・・」
バルコニーで妾は、黄昏ていた。白の部屋着に着替え、沈む夕日を見つめていた。美しい光景ではあるが、とある者と一緒に見たい。そう思ってしまう。
「はあーー」
「黄昏てますね姫様」
「ひゃっ?? リサーナ?!」
自分以外居ないはずの部屋で、リサーナが背後から話しかけて来た。驚くあまり、変な声をだしてしまった。
「リサーナ。前にま言って筈だ! 気配を消して忍び寄るな!」
「ノックはいたしましたよ。なのに。反応が無かったので致し方なく」
「致し方なくで忍び寄るな! ・・・・いつからそこに?」
「姫様が、ルド殿、お慕いしておりますと言ったあたりからです」
「そんにゃこといってにゃいぞ! リヒャーニャ!」
「うふふふふ。本当に姫様は可愛いらしい」
まったく、リサーナの奴! ・・・・ルド殿。




