閑話 紅き三ツ星と紫電
「姐さん、そろそろだよ」
「だな。フィオ、準備はいいかい?」
「はいですぅ! 灰にしてやるですぅ!」
グランシェル伯爵領、サラーニカの街に残った紅き三ツ星は、メルキオス迷宮に再び潜っていた。しかも、一人の仲間を追加していた。
「クロウも準備はいいかい?」
「はい、マリーダさん」
「にしても、良かったのですぅ?」
「パーティーに参加した事ですか? はい、問題ありません。パーティーのメンバーは、暫く休息が必要ですし。それに、私はもっと強くなりたい。ルドさんのように!」
「さすがにルドさんは・・・・」
「ですぅですぅ。無理ですぅ」
「リジー、フィオ。そんな事言ってたら、いつまでたってもルドに追いつけないよ!」
「姐さん。だってルドさんだよ?」
「はいー、ルドさんですぅ」
「「・・・・・・・・」」
リジーとフィオの返しに、私とクロウは黙ってしまう。ルドを言い訳にしたら、返すのに困るのはある意味仕方ないとも言える。
だけど・・・・。
「だからって、諦めるのは嫌です。せめて、隣りに立てるくらいには・・・・」
クロウ・・・・。
クロウが、自分の弱さを噛み締めるように放った言葉に、リジーもフィオも、そして私も「「「うん」」」と思わず頷いた。
そうだ、諦めてなるものか。私は紅き三ツ星のリーダーなんだから!
「この先ですね。皆さん大丈夫ですか?」
「へ、へへへへっちゃらだよ。このくらい」
「だ、だだ大丈夫ですぅ・・・・」
「ふん。たかだなゴキヴリンの一匹二匹・・・・」
「三十はいますけど・・・・」
「「「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」」」
紅き三ツ星の叫び声が、メルキオスに轟く。瞬く間にゴキヴリンに囲まれてしまう。
「み、皆さん落ち着いて!」
「何でクロウは平気なわけ!」
「うー、気持ち悪い。く、くんな! こっちくんな! フィオ! 吹き飛ばせ!」
「・・・・」
「おい、フィオ!」
「あ、姐さん」
「どうしたリジー?!」
返事をしないフィオに、リジーが近づいて確かめる。するとフィオは・・・・。
「フィオ・・・・気絶してる」
フィオは立ったまま、白目をむいて気を失っていた。
「ちょ、ちょっとフィオさん?!」
「あ、姐さん。どうしよう!」
「仕方ない。撤退! フィオは私が担ぐ! クロウは援護を!」
「了解しました!」
くそっ、虫如きに・・・・。このままじゃ、いつまでたっても追いつけやしない。だけど・・・・。
ゴキヴリンの群れが、後ろから迫って来る。その様子に・・・・。
「「きゃぁぁぁぁぁぁーーー!!」」
「ちょっと待って! マリーダさん! リジーさん! 待ってー!」
凄い勢いで撤退する、二人と気を失った一人。その後を、クロウは追いかける。
やっぱり無理ぃぃぃーーーー!!
「ちょっと、待ってぇーーー!!」




