やっちまったオッサンと現れた元凶
「おぉ! 一撃で決着したのじゃ! さすがはルドじゃ!」
「おぉーー! やるのぉー!」
「ルドーー! 凄いのだー!」
モニタリングしていた、テュラミアーダ達が居る大樹では、オッサンの圧倒的力に感嘆の声をあげていた。
「ふむ、やりおるのぉ。叔父上が褒めただけはあるの」
「まさかテュラミアーダ。そなた、ルドを試す為に行かせたのじゃな?!」
「それもあるの。あるが・・・・リュリュティアの側に居たかったというのもあるの」
「叔母上ー! ルドは凄いのだー!」
「ふふふ。そうじゃのリュリュティア。ルドは凄いの!」
「のだー!」
「はあー。それにしても、あの気味の悪いのは一体・・・・」
思い出すと・・・・鳥肌が立つのじゃ。何じゃあの生物は・・。
「テュラミアーダは、禁術とか言っておったな? どう言う事じゃ?」
「そのままの意味だの。あれは、人為的に手を加えた魔物だの。古代の魔術に、魔物に手を加え、強化させるものがあったの」
「そんなものが?」
「あるのだの。とうの昔に、失われたと思っておったの。一体何者かの・・・・」
「何者かの? って、ここはお主の支配地じゃ! 何故わからぬのじゃ!」
「隅々までは、目は配れんかの。仕方ないかの」
「はあー。寝てばっかじゃからじゃ! だから見逃すじゃ!」
「・・・・リュリュティア、ロコの実でも食べるかの? 確か大好きじゃったの」
テュラミアーダは、スッとクリュレミアから目線を逸らした。そして、話をリュリュティアに移す。
「食べるのだー! ロコの実は大好物なのだー!」
リュリュティアは、ムシャムシャとロコの実を頬張る。テュラミアーダはそれを見て、優しく微笑んだ。
クリュレミアはそれを見て、やれやれと言った雰囲気で。ルドが映る空中を見つめた。
その頃オッサンは・・・・。
「やっちまった・・・・。うん。悩んでもしょうがない! 何か手掛かりが残ってないか探すか」
瓦礫とかした、洞窟の岩や石をひっくり返し。何かないかと探すオッサン。
「んーー、何も残ってないなぁーー」
ひたすらなに、瓦礫をひっくり返して行くが。特に、これと言って何もで無い。「まあ、こうなる前から何も無かったしな」と諦めつつも。瓦礫をひっくり返すオッサン。
「・・・・確か、もう少し奥だっな。あの魔物がいのは」
何かあるとしたらあの辺だよな? あの部屋は、探索する前に逃げたからな。
そう思って、魔物が閉じ込められていたであろう部屋へ。正確には、部屋だった場所へ。
「この辺りだったと思うが・・・・」
部屋は、岩に押し潰され無惨な状態に。
あの、魔物が閉じ込められていたんだ。多少、頑丈に作ってあったとは思うが・・・・やはり瓦礫の山だな。これ以上探しも無駄か・・・・大樹に帰ろう。
崩壊した施設の上で「やっぱ、何も残ってないか」と諦め帰ろうとした時だった。『ゴロゴログァーーン』と、まだ残っていた壁が崩れて、隠し通路が現れたのだ。
「・・・・・・・・マジか!」
現実にこういうのあるんだな。ちょっと、ワクワクするな。
漫画や、小説のような展開に、ウキウキし始めるオッサン。意気揚々と隠し通路へと入って行く。
「下に続く階段かぁー・・・」
暗い階段を、ゆっくりと降りて行く。
狭い・・・・。
オッサンの身長だと、ギリギリの階段を降りて行く。意外と、地下深くにまで続いているようだ。
「・・・・まだ、一番下に着かないのか?」
だいぶ階段を降りたが、未だに下に着かない。一体どこまで?
そう思いながらも、行くしかないと階段を降り続ける。
そして・・・・十分程、階段を降りた辺りで下に着いた。
「広い部屋・・・・また何か居ないよな? ・・・・何も居無い? 何も無い? 何の為の部屋だここ?」
到着した部屋は、ただ広いだけの、白壁に覆われた部屋だった。
「うーーん。何も無い訳ないよな? また隠し通路とか?」
『ゴンゴン』と壁を叩いて確認していくが。特に変わった様子は無い。
「うむむ。叩いた音からして・・向こうに何も無いな。うーーーん。
本当に何の部屋だよ・・・・」
オッサンは悩んだ。考えた。そして出した答えは・・。
「壁がダメなら床って事か? ・・・・・・・・まさかな」
そう思いながらも、今度は床を調べてみる。
『ゴンゴン・・ゴンゴン・・ゴンゴン・・カンカン』
「む、音が変わった・・・・何かあるのか?」
ランプの灯りで照らすと、床に薄っすらと、溝と言うか隙間のような物が確認できた。それは、一メートル四方の四角形になっており。床の下に何か、空間のような物があるようだ。
「・・・・この下、何かあるのか? 開けてみるか。よっと!」
『ガキィーーン!』
隙間に大剣を振り下ろし、ガリガリと広げて、床板を何とか開けようとする。思ったより頑丈で。数度大剣を振り下ろして、ガリガリと何度もやって何とか、床板を退けることが出来た。
『ドスーーン!』
床板を持ち上げ、横に退かすと。
「ん? 何だコイツは」
下から出て来たのは、ガラスのケースに入れられた何かの肉片?
既にミイラ化しており、かなり古い物のように見えた。
「何でこんな物を床下に? しかも、厳重に地下深くにまで・・。コレは、それだけの代物って事なのか?」
・・・・ミイラかした肉片を見つめつつ、思案するが。特に何も思いつかない。
ここで考えても仕方ない。取り敢えず、コイツを持って帰ろう。
ガラスケースを脇に抱えて、元来た道を戻る。
一体何なのかは分からんが。コイツは、ここを作った奴らにとって、地下深くに隠さないといけない代物だって事は確かなのだ。
「眩しい、地上に戻って来た」
地下階段から出ると、外の明るさに目が眩んだ。
「さて、一旦テュラミアーダの所に・・・・ん? ・・・・」
気配を感じ、オッサンは警戒体制に入った。
位置は・・・・分からん。かなりの手練れだな。魔物じゃ無い。間違いなく人間の気配。
「・・・・何者かは知らんが・・出て来たらどうだ?」
反応無し。まあ、出て来いと言って出て来る訳・・。
『ビュイーーン』
「えっ、出て来るの?」
オッサンの目の前に、マントに着いたフードを、深々と着込んだ三人が、突然現れた。
これ魔法か? まさか転移の魔法?
「・・・・・・・・何者だあんたら」
そう聞いた瞬間、向かって左端の奴が動こうした。しかし、真ん中の奴がそれを制した。
「よせ・・・・闘った所で、我々に勝ち目は無い」
そう言うと、左端の奴は一歩引き下がる。
コイツ声が・・・。何らかの魔法で分かりにくくしているのか?
真ん中に居た人物の声は、テレビとかで、バレない様に音声を変えて喋っている人みたいだった。
「何なんだお前等?」
「・・・・・・・・」
だんまりかよ。・・・・それにしても、強いなコイツ等。少なくとも、Aランク・・いや、Sランクに届く実力はありそうだ。
「何とか言ったらどうだ? 闘う為なら止めたりしないだろ?」
「・・・・始めましてルド・ロー・アス」
真ん中の奴が喋り始める。しかも、俺を知っている。更に警戒を強める。
「何故、あなたがここに居る?」
「何故って・・・言う必要あるか?」
「・・・・ふっ、そうだな。大体の予想はつく。それより、ここに居た魔物はどうした?」
予想がつく? やはりコイツ等がメルキオス迷宮に?
「この状況見れば分かるだろ?」
「倒したか・・・・さすがは王国一の冒険者だ。・・・・ところで一つ提案がある」
「・・・・何だ」
「その脇に抱えている物を・・・・こっちに渡して欲しい」
「・・・・言われて渡すとでも?」
「・・・・出来れば穏便に済ませたいのだが?」
「それはこちらのセリフなんだが? アンタ等は、三人がかりでも勝てる見込みは無いぞ?」
「ふっ、そうだな。我々だけではな・・・・しかし、コレならどうだ?」
真ん中の奴が、ゴソゴソと何かを取り出して。それを俺に見せた。見せた物は、ピンク色の液体が詰まった瓶だった。
「それは・・・・何だ? それが切り札なのか?」
「コレは、魔物を呼び寄せる魔香液だ。それも、通常の物よりはるかに強力な物だ」
「それを使って、魔物に襲わせようって訳か? そんな事すれば、お前等も襲われて死ぬぞ?」
「安心してくれ。我々は、先程現れた様に、移動系の魔法が使える。襲われる前に、ここから立ち去るだけだ」
ちっ、厄介な。なら!
「はあっ!」
魔香液を使われる前に、先手を打つ! 真ん中の奴に斬りかかる。抜いた大剣が、真ん中の奴を捉えようとした瞬間。殺気を感じ、その場から後ろに跳んだ。
「何だ?」
一旦、後ろに下がって確認すると、地面には短剣が刺さっていた。殺気のした方を見ると、もう一人、マントを着込んだ奴が居た。
「ちっ、まだ居たか。油断した」
「たいしたものだ。あの状態から躱すとは・・・・やはりあなたはここで、死んでもらう」
そう言うと、魔香液の入った瓶を地面に叩きつけた。
「さらばだ、ルド・ロー・アス」
「ま、待て!」
『ビュイーーン』
「クソっ! 逃した! いや、そんな事よりも・・・・」
『ドドドドドド』と地響きが伝わってくる。辺りの小石がカタカタと動き、崖が崩れる。
「マジーなこりゃ」
音からして、アウダマの森の魔物が大量に向かって来ている。
これは・・・・さすがにヤバいかも。逃げるか? いや、放っておいたら。アウダマの森から、魔物が溢れ出すかもしれない。そんな事になれば、近隣の領地の街が、甚大な被害を出す。それは、断じて避けねばならない。
「やるしかないか」
オッサンは覚悟を決め、大剣を握る手に力を込めた。




