異形の存在
「何なんだコイツは!」
魔物の姿は、何とも言えない物だった。只々、気味が悪い。動きを封じる為なのか、複数の手足は鎖に繋がれ。背中には、杭まで打ち込んである。更にはそこから、何本もの鎖で繋がれていた。
「グゴォォォォォ!」
『ゴゴゴゴゴッ』
「うおっ」
異形の魔物は動き出す。しかし、繋がった鎖によって身動き出来ない。それを必死に引っこ抜こうとして、部屋がと言うより、洞窟全体が揺れた。
「おい、ちょっと待て! 洞窟の中でそんな暴れたら・・」
『ヒューーーン・・・・ドゴン!』「あぶね!」
天井の一部が崩れて、オッサンの頭上から降ってくる。
「やばいぞ。このままだと、洞窟自体が崩れる」
コイツをどうにかしようにも、こんな所で攻撃したら、それこそ生き埋めになっちまう。ここは・・・・。
「一旦、退散!」
オッサンは回れ右して、来た道を一目散に逃げる。さすがのオッサンも、生き埋めになったら死にかねない。
「はあ、はあ、はあ」
マジやばいぞ。本当に崩れる! 急げ!
来た道の壁はひび割れ。天井から、ミシミシと音が鳴り。更に。天井の外壁の一部が降ってくる。それを避けつつ、出口に向かって走り続ける。
「うおぉぉぁぁぁぁ!! もう・・・・ちょっと、うりゅっ!」
『ドゴォーーーーン!!!』
ギリギリセーーフ!
オッサンが、ヘッスラで洞窟から出た瞬間。洞窟は土煙りを上げながら、崩落した。
「ふう、やばかったな。・・・・さすがに死んだよな? あの魔物」
おっと、いかんいかん。フラグを立ててしまう所・・・・。
『ドゴゴゴゴゴゴ!!』
あう! この地響き・・・・やっちまった。おいおい・・・・嘘だろ。まさか、あの崩落で無事だってのかよ!
かなりの大崩落だったにも関わらず。どうやら魔物は無事だったらしい。地響きは、刻々とこちらに近づいて来ている。崩落した洞窟内を、瓦礫を押し退けながら、こちらに這い出て来ようとしているのだろう。
「まったく、とんでもない依頼になっちまった」
剣を抜き、身構えるオッサンは愚痴を溢す。
ドゴゴゴゴと、鳴り響く地響きが、段々と大きくなる。音から察するに、直ぐそこまで来ている。所が、ピタッと音が止まる。どうした? と思った瞬間!
『ドゴオォォォォォォーーーーーン!!』
「グゴォォォォォーーーー!!」
崩落した岩盤を突き破り、奴が現れる。
手枷や、足枷の鎖を引きちぎり。背中に刺さっていた、杭の鎖も引きちぎったようだ。体中から、痛々しく血が出ていた。
「うわっ、痛そう・・・・」
異形の魔物の、痛々しい姿に。思わず同情してしまう。
それにしても・・・・テュラミアーダの言ってた奴って。本当にコイツなのか?
異形の魔物の姿は、手が四本に足六本。更に尾が二つ。頭には角が八本。しかも顔は・・・・骸骨みたいだ。それに体表面は、灰色かかった黒色で。血を流したその姿は、薄気味悪いにも程がある。
「虫っぽい・・けどなんか違う? 何なんだコイツ」
「グギャァァァーー!!」
鳴き声まで気味悪いな。何にせよ、倒すだけ・・・・。
「うおっ?!」
『キィィィィァァァァァァァァーーーーーン!!』
突如、魔物は口に魔力を収束していく。あまりの高エネルギーに、まるで叫び声の様な、耳を劈く音が鳴り響く。
これは・・・・「まずい!」
オッサンは危険を察知して、その場を離れた。深い竪穴の岩壁を、凄まじい速さでロッククライミングしていく。半分程登った時。鳴り響いていた音が・・・・突然変わった。
『シュピィィィィィィィーーーーーン!!!』
「あっ、やっべ! 急げ!」
そう思った次の瞬間。魔物はそれを・・・・解き放った。
『シュビュィィィィィィィーーーーーン!!!』
魔物の放ったそれは、高エネルギーの魔力を収束して放つ、レーザービームだった。
「ぐおっ! おっと! うりゃ!」
魔物の放つ、レーザーを交わしながら。上に上へと登って行く。
おわっ! 見境なしかよ。・・・・別に俺を狙った訳じゃ無いのか? まさか、この穴から出る為か?
魔物の攻撃は、岩壁を抉り削って、ほぼ90度の竪穴を、なだらかにしていった。
「何だろ・・・・アイツをここから出したらダメな気がする」
岩にしがみ付きながら、魔物を観察するオッサンは。異形の魔物に、何か得体のしれない力を感じていた。
「グゴォォォォォァァァァ!!」
「・・・・ん? あれ? 変だな、さっきより力増してるような気が・・・・。いや、気の所為じゃ無い? 本当に力が増してやがるのか!」
まずいな。どう言う事なのかは、分からないが。力が少しずつ増している気がする。鎖から、解き放たれたからか? それとも、そういう能力? どちらにせよ、早く倒した方が良さそうだな。
「よっと。『ドカッ』 悪いが本気でいかせてもらう!」
掴まっていた岩から飛び降り、穴の底に戻る。最早、竪穴では無くなった穴の底で。オッサンと魔物の闘いが、始まろうとしていた。
その頃・・・・テュラミアーダ達がいる大樹では・・。
「おい、テュラミアーダ! この気配は何じゃ!」
「うむ。どうやら、例の魔物を見つけたようだの」
「叔母上ー! 変な感じがするのだ」
「よしよしリュリュティア。ここは大丈夫だの。それにしても・・・・どうやら成長しきってしもうたかの? 何やら今までと感じたものとは・・・・違う気配だの。ルドは、大丈夫かの?」
「まあ、大丈夫じゃな。今頃、闘っておる筈じゃ。それ所か、この気配の持ち主を、森ごと消し飛ばしておるかもしれぬのじゃ」
「うむ。クリュレミアが、そこまで信頼するとはの。面白い人間だの」
「ルドは面白いのだー! だから、好きなのだ!」
「そうか。リュリュティアも気に入っておるのだの」
「気に入ってるのだー」
「ふふふ。ちょっと見てみるかの? ぬぬ、ふむ!」
テュラミアーダが、手を上にかざすと。オッサンの映像が映し出された。
「ルドなのだー!」
「遠くを映し出す魔法じゃな。おっ、ルドがこれから闘うようじゃ。相手は・・・・ふむ、気味の悪い奴じゃな」
「うむ、これは・・・・」
「何じゃテュラミアーダ? 何か知っておるのか?」
「・・・・一体どこのアホウかの。禁術を使っておるの」
「禁術?」
「うむ。ぬ? 始まるの・・」
その頃オッサンは・・。
「ん? 何だ? 何か見られてるような気配が・・・・気の所為か?」
まあいい。今はそんな事より・・・・。
「グゴォォォォォァァァァーー!!」
「コイツを・・・・どうにかせにゃいかんな」
異形の魔物を睨みつけ。コイツが何なのかは置いとくして・・・・倒す! と意気込むオッサン。
「ふう・・・・はぁぁぁぁぁーーー!!」
大剣を構え、魔力と気合いを大剣に込める。オッサンの体に、魔力や闘気などが。目に見える程に濃く現れ、湯気の様に立ち上る。それが最大に達すると・・。
「ふおぉぉぉぁぁぁぁーー!!!」
両手に持った大剣を・・・・真っ直ぐに振り下ろした。
『ドガアァーゴガァーーバガァァァァーーーーン!!!』
「ヒグギャァガァァァァィィィーーー!!」
放たれた一撃によって・・異形の魔物は、断末魔の叫びと共に消え去った。後に残ったのは、オッサンの本気の一撃によって出来た・・・一直線に大地を切り裂いた、後のみだった。
「しまった! 完全に消したら手掛かりが! あっ、しかもアジトまでぶっ飛んでる! ・・・どうしよう?」
・・・・・・あぁーー! 俺のバカーーン!




