テュラミアーダからの依頼
「と言う事なんだが・・・・何か心あたりとか無いか?」
オッサンは、アウダマの森にやって来た理由を、テュラミアーダに説明していた。
「ふむ。おかしな事のぉ。特には・・・・・・あったの!」
「あるのか! テュラミアーダ!」
「うむ」
「一体、どんな心あたり何だ? アウダマの森で何が」
「うむ。ルドよ落ち着くの! 別にそんなたいした事では無いの。アウダマの森の洞窟に・・・・妙な魔物が住みついての。思いつくのは、それくらいかの?」
「妙な魔物?」
「うむ。矮小な奴ゆえ、放っておいたのだがの・・・・ここ最近になって、急成長しおっての」
「急成長? 魔物がか?」
「うむ。森の異変と言ったら、そのくらいかの? お主がどうにかしてくれるのかの?」
「してくれるかの? って、ここはテュラミアーダの森じゃろう! 自分でどうにかせぬか!」
「妾は忙しいのぉ。リュリュティアの相手もせぬといけぬしの」
「叔母上ー! 遊ぶのだー!」
テュラミアーダの膝の上ではしゃぐリュリュティア。
本当に、テュラミアーダが大好き何だな。
「はあ、分かった。俺が退治してくるよ。何処に居るんだ?」
「ここから東の方角にの、巨大な洞窟があるのぉ。そこだの」
「了解。それじゃあ、行ってくる」
「うむ、頼んだの」
「ルド! いってらしっしゃいなのだー!」
「ルドよ。酒を置いて行くのじゃ」
「・・・ダメ。少しは我慢しろ。酒場で酔い潰れた、ダメ人間みたいになるぞ」
「なんじゃ! 我をただの飲んだくれと一緒にするでない」
「実際そうだろう? あんま、リュリュティアに心配させるなよ」
「うぬ・・・・分かったのじゃ。我慢するのじゃ」
「ならよし。じゃあ行ってくる」
「うむ」
「いってらしっしゃいなのだー!」
「気をつけるのだの」
「おう。行ってくる! とりゃ!」
オッサンは三人に見送られ、大樹から飛び降りた。
『ヒューーーードスン!!』
「ふう。東の洞窟・・・・向こうか」
オッサンは東に向かって走りだした。
「むふふ」
「何じゃテュラミアーダ。変な笑い方をするで無い!」
「別にの。・・・・彼奴の言う事は、ちゃんと聞くのだなと思っての」
「べ、別に・・・・」
「ふふふ。あのクリュレミアが随分と可愛くなったものだの。リュリュティアを連れて、妾の所に来た時も驚いたがの」
「あれは仕方なかろう。子育てなど初めてじゃったのだから」
「ふふふ。そうじゃの。・・・・他の古竜などに、頼らぬ其方がのぉ。変わるものだの」
「うるさいのじゃ! ぷい」
「ふふふ」
「叔母上・・・・遊ぶのだー!」
「分かっておるの。・・・・所でリュリュティアよ。ルドの事はどう思う?」
「ルド? ルドは面白いから好きなのだー! 一緒に居ると楽しいのだー!」
「ふふふ、そうか。好きか」
「なのだーー! ふははははっ」
「ふふふ」
☆☆☆
「だいぶ奥まで来たが・・・・洞窟は一体何処に・・うわぁーーーーーーーーーーーーあだっ!」
森の中を走っていたら、突如現れた、巨大な穴に落ちた。
二百メートルは下に、落ちただろうか?さすがに、突然地面が無くなって、オッサンも少し焦った。ほぼ、ノーダメージだったけど。
「あたたた、何だよ急に? あっ、洞窟あった」
深い縦穴の底。その、縦穴の底の横に、大きな洞窟があった。縦穴自体、かなりデカイ。テュラミアーダが、すっぽり入るくらいはあるかな?
「この洞窟・・・・確かに妙な気配がするな」
取り敢えず・・「調べてみますか」
洞窟は暗く、奥がまったく見えない。オッサンはマジックバックから、大小の二つのランプを取り出した。
「普通の洞窟に入る何て、久しぶりだな。迷宮と違って、普通に暗いからなぁ。えーと、光り石は・・・・おっ、あったあった」
マジックバックから白い石を二つ取り出して、その一つを、ランプのガラス部分を外してセットした。もう一つは、
取り出した小さなランプにセットして、胸の部分に付けた。
「後は・・魔力を注入っと」
魔力を注ぐと、光り石は強く光りだす。
「よし、準備完了っと・・・・さて、行きますか」
オッサンは、腰にランプを括り付けると。洞窟の中へと、足を進めた。
洞窟は暗く。奥の方は、殆ど見えない。ランプで周囲は照らせるが、遠くまでは照らせ無い。それでも、洞窟の深さが分かる暗さであった。
「思った以上に広いな」
洞窟内部は、オッサンの背丈でも余裕がある程高く。幅も大剣を振るえる程広かった。
『コツコツ・・・・コツコツ』オッサンは洞窟の奥へと進む。
「・・・・・・・・特に異常は無いなぁー」
洞窟を、百メートルくらいは進んだが。特に何も居無い。
「・・・・何だろう? 逆に変だな」
ここは、魔物が多く住むアウダマの森だ。アウダマの森にある洞窟なら、生き物の一匹や二匹居る筈だ。なのに・・。
「コウモリどころか、虫一匹すら居無いな。・・・・奥に進む度に、嫌な気配がどんどん強まるし」
うーーん。兎に角、奥に進むしかないか。
『コツコツ・・・・コツコツ』オッサンは、更に奥へと進んで行く。すると、オッサンの目の前に、あり得ない物が現れた。
「・・・・何でこんな物がここに?」
オッサンは驚いた。何故ならの目の前には、金属製の大きな扉があるからだ。
「何で扉が? ・・・・この洞窟、変だと思ったらやっぱりだったか」
ここまでの道のり自体、おかしかったのだ。洞窟内部はここまで、一定の広さだった。天然の洞窟なら、そんなの有り得ない。それに・・・・洞窟の地面が、歩きやすいように慣らされた形跡がある。人か、或いは何かが、と思っていた所に扉
が現れた。どうやら、人が関わっているようだ。
「・・・・やっぱり、メルキオス迷宮と関わりがあるのかな?」
うーん。扉の前で、考えながら唸っても仕方ない。
『ドンドン』「こんにちはーー! 誰かいませんかー!」
考えても仕方ないで取った行動は、まさかの扉をノックするというものだった。
「・・・・・・・・返事なし。いや、これで返事して来たら逆に怖いな。んー、仕方ない。あらよっと!」
『バゴォーーーーーン』
オッサンは、思いっ切り扉を蹴飛ばした。扉は吹っ飛び、扉の先の広い空間で砂ぼこりをあげた。
「・・・・・・・・反応なし。誰か居るかと思ったんだが・・放棄されたのか? 或いは留守とかか? んな訳無いよなぁ」
扉を蹴飛ばせば、誰か出て来るのでは? と思ったが・・・・反応はまったく無かった。
「うーむ。こいつは、放棄されてだいぶ経ってるな」
扉の先は、部屋になっていた。机や棚などが置かれ、物が散乱していた。人が居たのは、間違いないようだ。
「何かないかな?」
ランプで部屋を照らすが。これといって、手掛かりになりそうな物は無かった。
「うーーん。まあ、処分されてるよな」
ここが、何らかの秘密組織のアジトなら。放棄した時に、重要な書類関係は処分されてるだろう。ろくな物は無さそうだ。
ん? こっちに通路がある。まだ奥があるのか
「おし、行ってみるか」
オッサンは、見つけた通路を進んで行く。奥は更に入り組んでいて、迷路のようになっていた。
「・・・・手掛かりになりそうな物は、まったく無いな。それにしても・・・・これだけの施設を作るとなると。かなりの資金力だな」
施設のしっかりした作りに、驚きと呆れが出るオッサン。暇な奴もいたもんだと、思ってしまう。
「ここが最後の扉・・・・やな気配がスゲェするな」
あらかたの部屋を調べ尽くし。最奥の、扉の前にやって来た。その扉は、今までの扉と違い。出入り口の扉より頑丈に作られていた。
「何だろ・・・・嫌な予感がする。・・・・何か闘いになりそうだな。まあ、何とかなるか。せぇーーのぉ!」
『ドォーーン! ドゥガーーーン!! ドギィァーーーン!!』
「ふう、やっと壊せた。さてさて、中はどうなって・・・・」
扉の先にあった部屋は、アジトで最も広い部屋だった。そしてそこには・・・・。
「何だコイツは!」
オッサンの目の前には、異形の巨大な魔物が、何本もの鎖で封じられていた。その光景は、何とも表現出来ないものだった。
テュラミアーダは矮小とか言ってたけど。どこがだよ!
「グガガガガガッ」
「おいおい。まじかよ?!」
異形の魔物が唸り始め、動き出す。オッサン対異形の魔物の闘いが始まろうとしていた。




