表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/66

オッサンと古竜の珍道中 その4


「ぐぅわーー! 何やってんだクリュレミア!」


「何か問題なのじゃ?」


「母上ー! 凄いのだー!」


 山の中腹から上がる爆発による煙。それを、町の住人全てが見ていた。横には、顎が外れんばかりに口を開けたままのギルマス。ザワザワと、火球が放たれ場所に集まりだす人々。あぁーー、何でこうなる!


「ル、ルルルル、ルド殿? 一体何が起こって」


「えーーと、そのぉーー。何と言いますかぁ」


「か、彼女は何者なんです!」


「えーと、クリュレミアは・・・・その」


 口籠もるオッサン。実は古竜なんです! なんて言えるか!


「うぬ? 我か? 我は古竜じゃ!」


「こ、こ、古竜?! 古竜? 古竜ってあの古竜?」


「古竜は古竜じゃろう? 何を言ってあるのだ?」


「クリュレミア! 更にややこしくするな!」


「なにがじゃ?」


 あぁーー!! もうーーー!! こうなっては仕方ない!


「クリュレミア! リュリュティア!」


「うむ?」「はいなのだ!」


「逃げるぞ!」


「「えっ?」」


 オッサンは、リュリュティアを肩車して、クリュレミアをお姫様抱っこしてトンズラした。


「ル、ル、ルド殿ーー!!」



「良いのか? 呼んどるぞ?」


「誰の所為だよーー!!」


「速いのだー! 行けぇーなのだー!」


 オッサンは風になった。



 オロ山中腹の爆心地。


「ハァー、ハァー、ハァー。まったく! クリュレミア!」


「何じゃ? ちゃんと倒したであろう?」


「母上ー! 凄いのだー!」


 オロ山の中腹には、直径百メートル近いクレーターが出来ていた。中心部はまだ、熱を発していて、クリュレミアのブレスの破壊力を物語っていた。


「倒すのと、消し飛ばすのは違うだろうが!」


「大して変わらんでは無いか。倒し事は倒したであろう?」


「町にまで被害が出たらどうすんだ!」


「ちゃんと手加減したぞ! 大丈夫だったであろうが!」


「結果論だろソレ! ハァーーー、もういい。兎に角、依頼は達成だな。・・・・・・・・達成でいいのかコレ」


「ルドー! もう一度、肩車なのだー!」


「はいはい、ちょっと待ってね」


「むーー! ぶーーー!」


「騒がしくなる前に、さっさと離れよう」


「ぬ、もう行くのか? では、さっさと行くのじゃ!」


「肩車なのだーー!!」

  



 オロ山の麓の町に住む、とある女の子の日記。


 今日の朝、ドカーーンと凄い音がしました。お母さんと一緒に慌てて外に出ると。オロ山の真ん中辺りから、煙が出ていました。一体どうなってるんだ? と町のみんなは大騒ぎでした。みんながオロ山を見てたら、凄い速さで町中を走る人がいました。その人は、両腕、凄く綺麗な人をお姫様抱っこして、黒ニャンコの格好をした女の子を、肩車したおじさんさんでした。あのニャンコ、凄くかわいかったです。私もあんなの着てみたいです。





「そろそろ・・・・アウダマの森だな。うっぷ」


「そうじゃのぉーって! 我の背中で吐くでないぞ!」


「うっふ。リュリュティアを、肩車して酔った」


「高いのだー!」


 リュリュティアが肩車を気に入り。何故か、クリュレミアの背に乗りながら、リュリュティアを肩車すると言う奇妙な状態に・・・・。あぁー、ゆ、揺れる!


「リュリュティア、暴れる・・・・うっぷ」


「おい! 絶対吐くでないぞ! 吐いたら落とすからな!」


「分かっ・・・・うっぷ」


「イェーイ、なのだー!」


「リュリュティア! ルドから降りるのじゃ!」


「ぶーー! 嫌なのじゃ! ぷん!」


「うっぷ」


「ぎゃぁぁぁぁーー!! 急いで降りるのじゃーー!!」



 ・・・・・・・・。



「ふう、ギリギリ・・・・だった」


「まったく、我の背中で吐かれたら、たまったものではないわ!」


 俺達は何とか、アウダマの森に到着した。降りた場所は、鬱蒼うっそうとするアウダマの森で、唯一ひらけた場所だ。


「楽しかったのだー!!」


 楽しそうにはしゃぐ黒ニャンコ。言っておくが、吐きそうになったのは、リュリュティアの所為だぞ! 


「高い所は別に平気なんだが・・・・高さに速さ、それに揺れが加わると・・・・うっぷ。思い出すとちょっとくるな」


「酒にはまったく酔わない癖に・・・・なんとも情けないのじゃ。それでも我に勝った男か!」


「どんな奴にも、弱点くらいあるだろ。古竜にだってな」


「むっ! 古竜に弱点などないのじゃ!」


「いやいや、あるだろ普通に。じゃなきゃ、クリュレミアは俺に負けないだろう」


「ぬう、それは・・・・相手がお主だからでわないか! 古竜をも倒す化け物は、普通に入らぬのじゃ!」


 古竜に化け物扱いされるオッサン。


「ルドは化け物なのだー!」


 うっ、古竜から化け物扱い・・・・何だろう・・・・何か泣きそう。


「そんな事より、さっさと行くのじゃ! テュラミアーダの元へ!」


「叔母上、元気かのぉ〜。楽しみなのだー!」


「リュリュティアは、随分嬉しそうだな」


「叔母上は優しくて好きなのだー!」


「そうか。・・・・因みに、俺とどっちが好き?」


「んーー、迷うのだ。うむーーー、どっちも! 好きーーなのだー!!」


「・・・・・・ふはははっ、そうか! 好きーーか!」


「ルドー! リュリュティアー! さっさとこぬかー!」


「母上ー! 待ってなのだー!」


「おう、直ぐ行く!」


 ちょっと・・いや、かなり嬉しいオッサンであった。


 何だろ、結構嬉しい。・・・・母性ならぬ父性? って奴なのかな? 

 

 


 アウダマの森、奥深く。



「んー、久々だなアウダマの森。あんまり変わった様子はないな」


 苔むした石や岩。空を覆いつくす大木。古から変わる事の無い太古の森、薄暗く妖しさ満点。危険も満点の森だ。


「そう言えばルドは、調査で来たのであったな」


「あぁ。ここに生息する魔物を、わざわざ迷宮まで連れて来た奴がいてな」


「妙な事をする奴がおるのぉ〜。人間とは、本当に変わっとる」


「クリュレミア、変な気配を感じたりはしないか?」


「うーむ、特には無いの。この森で、特に強い気配なら分かるが・・・・ルドにリュリュティア、テュラミアーダじゃな」


「そうか。気配に敏感な、クリュレミアがそう言うなら、特に問題は無いのか?」


「叔母上に早く会いたいのだー!」


 黒ニャンコドラゴン娘のリュリュティアは、叔母のテュラミアーダに会える事が、相当に嬉しいのだろう。嬉しい事が、体の動きから分かる程だ。ウキウキワクワクと言った感じだ。



「この辺りかの?」


「ん? どうしたクリュレミア?」


 薄暗いアウダマの森を歩く事一時間。森の真ん中で突如、クリュレミアが足を止めた。

 

「ここから先が、主の領域じゃ」


「ん? 何も感じんが?」


「隠蔽の魔法を使っておる。更に、結界まで張っておるしな。これ以上は近づく事はできん」


「できんって、会いに来たんだろ? どうすんだ?」


「決まっておろう。テュラミアーダ!! クリュレミアじゃ!! リュリュティアもおるぞ!! 結界をといてくれー!!」


「何をするかと思えば、ただの大声かい!」


「叔母上ーー! リュリュなのだー!」


 クリュレミアは、鼓膜が破れんばかりの大声をだした。リュリュティアも、クリュレミアを真似て、大声をだす。


「こんなので分かるのか?」


「我はいつもこれだぞ? それに、テュラミアーダなら我が森に来た事は、とっくに分かっておる。ただ今回は、人間のお主がおるからの」


「余所者かつ人間の俺がいたら警戒するか」


「うむ。・・・・ほれ、結界が解かれた」


 クリュレミアは、顎でクイっと目の前を指す。目の前では、透明な魔力のベールが消えていった。俺たちが通れるほどの穴が空くと、そこで止まった。


「これは・・・・。この距離で分からなかったなんて!」


「ふっふっふっ。凄いじゃろテュラミアーダは! 戦闘力では我より劣るが。魔法や、特に結界などは我より上じゃ!」


「へぇー、凄いな」


「叔母上は凄いのだ!」


「では、行くぞ。ルドよ」


「おう」


「ルドー! 肩車なのだ!」


「本当に気に入ったんだな」


「うむ、楽しいのだー!」


 オッサンは、リュリュティアを肩車して、空いた結界の中へとクリュレミアと入っていった。結界の外では気づかなかったが、中に入ると古竜特有の、強い魔力を感じとれた。



 さて、テュラミアーダってのは、どんな古竜だか・・・・。


 

 オッサンは少し不安になっていた。何故なら基本、オッサンが古竜に出会って、良い感じに終わった事など無いからだ。何せ、古竜に出会うと大概、戦闘に発展してしまうからだ。


 オッサンは、何事も無い事を祈るのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ