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取り敢えず、引退延期


「結局、こうなったか」


 ここは、グランシェル伯爵の屋敷。皆は・・・・俺の振る舞った酒で、床に寝落ちしている。


 結局、追いかけ回されるのが嫌で、観念したのが深夜。

 そして、そのまま酒盛りへ。ハアー、風呂入りたい。


 マリーダ達も、ばあさんに伯爵も、古馴染みのウゴールさん。他にも、冒険者や伯爵に仕える騎士達が、床に転がっていた。


 あれ? 殿下がいない? さすがにリサーナが部屋に連れて行ったか。


 ・・・・風呂でも借りよう。


「すまんが、風呂を借りたい」


 宴会の開かれた部屋を出て、伯爵の屋敷の使用人・・・・メイドを見つけて声をかけた。


「あっ、ルド様ですね。伯爵様より、ルド様には最高のおもてなしを、と厳命を受けております。お風呂でしたら既に準備できておりますで・・どうぞ此方へ、浴場は此方となっております」


「おう、すまんな」


 伯爵邸のメイドに案内され、浴場へ。これだけ立派な屋敷なら、さぞ風呂は広く豪華だろうな。


「ここが、浴場でございます」


「おう、ありがとう。それじゃあ早速・・・・あの、何でまだ居るの?」


「はい、お背中を流そうかと」


「いやいや、いらないですから!」


「そう言う訳にはいきません。伯爵様より最高のおもてなしを、と言われております。ですので、湯女から伽まで、存分に私達をお使い下さい」


 眼鏡メイドのとんでも発言と共に、サササーっと、複数のメイドが現る。


 いやいや、何処から出て来たお前ら! まったく気配がしなかったぞ!


「さあ、ルド様。お好きな者をお選びを」


「いやいや、本当にいいから!! そんなは、しなくていいから!! 一人で入りたいの!! 不要ですから!!」


「ですが・・・・」


「ですがもへったくれも無いから!! 俺は一人ではいります!!」


「ルド様がそうおっしゃられなら・・・・分かりました。

 ボソ・・・・残念です」


 えっ、ボソっと何か言った。残念とか言った。


 メイドさん達は、お辞儀をして浴場を後にした。


「このまま風呂に入っても、大丈夫なのか? 確認してからにしよう」


 服を着たまま、浴場に入る。


「おぉーー、やっぱり豪華だ」


 浴場は大理石で作られ、更にはライオンの口からお湯が注がれている。・・・・マーライオン?


 さすが、迷宮で財を得ているグランシェル伯爵の浴場だ。

凄い豪華だ。


「さて、風呂に入ろうーーと」




 ・・・・・・・・良きかな良きかな。


 最っ高!! 疲れが吹っ飛ぶ。はふぅーー。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・。


 タルボロかぁ〜。アウダマの森に生息している魔物が、何故・・・・行ってみるか? アウダマの森に・・。


 うーむ、アウダマの森。何か手がかりがあるとしたら、そこしか無いか。それに、遠いなぁ〜。


 ハァーーー、終われば引退のつもりだったのになぁ〜。引退が延びるなぁ〜。けど・・・・仕方ないか。


『バシャンバシャシャン』手で掬ったお湯を顔に思いきりかける。「ふう」とひと息ついた。


「よし、アウダマの森に行くか」


 気になるし、放っておくのは、良くない気がする。思い立ったが吉日って言うし。・・・・こう言う時に使う言葉じゃ無いか。


 ・・・・上がるか。


 風呂を上がり、服を着て、荷物を部屋に取りに・・・・。


 オッサンは困惑していた。何故か? オッサンに用意された部屋で、何故か殿下が寝ていたからだ。


「何で俺の部屋で寝てるんだ?」


「どうやら、酔っ払って間違えたようでして」


「おわっ!」


 とんでも発言をした、眼鏡メイドが、直ぐ横にいた。


 いつの間に!


「気配を消して近づくな!」


「あら、申し訳ありません。しかし、どうしたものか」


「リサーナを呼べばいいだろ? 後、今後は気配を消して近づくなよ。もう慣れたから、今度は勝手に体が反応して、攻撃するかもしれん」


「・・・・畏まりました」


「ハァー。あんたさぁー、伯爵に仕える影なんだろ?」


「さて、なんの事やら・・・・」


 顔を背ける眼鏡メイド。分かりやすっ! あんた、それでも影なのか?!


 そう、突っ込みたくなるが、我慢するオッサン。


 シュタッ!! っといきなり、新たなメイドが現れた。


「メイド長、お呼びでしょうか?」


「はい、リサーナ様を呼んで来て下さい」


「分かりました」シュタッ!! っと消える。


 ・・・・隠す気ゼロか!! そう、突っ込みたくなるのを我慢するオッサン。


「それにしても、よくお休みですね。まったく、起きる気配がございません」


「確かに。結構、煩くしたのに・・・・」


 だいぶ、疲れが溜まっていたのだろう。此処で待っている間も、気が気でなかった筈だ。


「あのールド殿、お呼びだとか・・・・」


「リサーナ・・・・コレ、お前の仕業だろ」


 正直、そうなのではと、思っていた事が口に出てしまった。オッサンは、ベットでムニャムニャと眠る殿下を指差して、リサーナの反応を待った。


「はて? 何の事でしょう」


 そう言ってリサーナは、オッサンとは反対の方を見た。


 ・・・・どう考えてもお前じゃねぇーか!


「でっ、何のつもりで?」


「・・・・ただのちゃめっけです」


 てへっ、とかわいいポーズで誤魔化そうとするリサーナ。かわいいはかわいいが・・・・。一つ言っていいか。


「ちゃめっけって・・・・なんじゃそりゃぁぁぁ!!」


 思わず突っ込んでしまうオッサン。

 

「んん、んあ。リサーナ? 朝か・・・・」


「おはようございます姫様」


「あぁ、おはよ・・・・・・・・・・・・」


 目を覚ました殿下は、重い瞼を何とか開く。しかし、目の前にはオッサンが居て、少し混乱した様で、固まって動かなくなってしまった。


「大丈夫ですか殿下?」


「りしゃ」


「「「「りしゃ?」」」


「りしゃーーーーーな!!」


 これは・・・・・・・一旦部屋を出よう。


「はいはい。姫様、落ち着いて下さい」


「王女殿下、落ち着いて下さいませ」


「にゃ! にゃ! りしゃーな!」


 殿下・・・・すんごいテンパってるな。オッサンは部屋の外で、その様子を聞いていた。


「ルド殿、もういいですよ」


 部屋に戻ると、落ち着きを取り戻した殿下が、ベッドに座っていた。


「す、すまぬ。取り乱した」


「そうですよ姫様、はしたないですよ」


 いや、原因はお前だろリサーナ。


「・・・・いえ、謝る必要は無いかと。悪いのは姫様と言うか。リサーナですから」


「リ、サーーーナ!! やはりお主が何かしたな!! おかしいと思ったのだ!」


「さて、何の事やら・・・・」


 知らぬ存ぜぬと言った顔をしていた。むふーーと怒る殿下を、リサーナは軽くあしらっている。恐らく、こんな感じでよくからかってるのだろう。


「あの、殿下。お話があるのですが」


「は、話じゃと! な、なんじゃ!」


「はい、少し気になる事があるで、此処を出発致します」


「ほえ? ・・・・・・・・・・・・」


「ですから、此処を立ちます」


「ほえ? ほえ?? 何じゃとーー!!」


 そんな驚かなくても。


「姫様、はしたないですよ。それで、ルド殿は何故こんな早く立たれるのです?」


「今回の件を調べる為です。その為に、引退も先送りにする事にしました」


「引退を辞めた事は嬉しく思うが、何も昨日の今日で出発するなんて・・・・」


「そうです。姫様の言う通りです」


 まあ、ゆっくりしたいと言えばしたいが・・・・早く調べておきたい。何か引っかかるものがある。


「もう決めたので、直ぐにでも出発します」


「そうか・・・・だったら「姫様! なりません」


「リサーナ!」


「今回は特別にお許しが出ましたが、普通にはあり得ません。それに、王都から姫様の護衛も来る事になっていますし、陛下にご報告せねばなりません。王族ならば、我が儘も程々にお願い致します」


「くっ」


 おぉー、リサーナが真面目に殿下を諌めてる。


「それに、ここでルド殿についていったら、駆け落ちと思われますよ」


「にゃ、にゃ、にゃにを!」


 あっ・・・・平常運転だ。


「あのぉー、ルド様。盛り上がってる所すみません。出立する前に、伯爵様にご挨拶をお願いします」


「メイド長、ダメです。伯爵様、完全にダウンです」


「・・・・ひっぱ叩いてもいいですから、起こしなさい」


「もうやりました。現在、目覚ましの特別ジュースをお作りして、飲ませてはいますが・・・・効果が薄いようで」


「ぐっ、さすがはルド様のお酒。酒好きの伯爵様をノックアウトするとは・・・・」


 ひっぱ叩いてもいいって、伯爵・・・・普段どんな扱いを・・。


「メイド長、ギルドマスターが起きられました」


 また、報告にメイドが来た。


「丁度いい。ばあさんには話しておくか」


 荷物をまとめて、ばあさんの元へ向かう。俺の後ろを殿下にリサーナ、眼鏡メイドが付いてくる。


「ふうーー、ぷはーー。いい酒を呑んだ、翌朝の一服は最高だねぇ」


「おはようばあさん」


「おや、ルドかい。昨日の酒は最高だったよ。だから寄越しなぁ」


「会っていきなり何言ってやがる」


 ぷはーーと、パイプでタバコを吸うばあさん。俺も一服しよう。


「隣り座るよ」


「勝手にしな」


 タバコを取り出し、火をつけ一服する。


「ぷはーー」


「ルド殿、タバコは体に悪いですよ」


 んむ、殿下に叱られてしまった。しかし、辞められん。ヘビースモーカーでは無いのだが・・・・辞めたく無い。今は。


「お姫さんもおはよう」


「おはようございます。ギンメイ殿」


「所でルド。行く気だね」


「おう、アウダマの森にな」


「となると・・・・王国南東部のヴェラキア領か。なら丁度いい。コイツを頼む」


 ばあさんは一枚の紙切れを取り出した。


「ん? コイツは・・・・って! 依頼じゃねえか」


「あぁ、三年間放ったらかしでな。お前が行くなら丁度いいだろ」


「だろ、じゃねぇー。まあいいけど・・・・」


 オッサンは、依頼の紙を畳んで、胸ポケット閉まった。


「後、昨日の酒寄越しな!」


「・・・・・・・・さて、出発するかな」


「おい、無視すんじゃないよ!」


「そう言えば、マリーダ達は?」


「まだ、グッスリと寝ておられます」


 眼鏡メイドが淡々と答えた。


「そうか。挨拶しときたかったが・・・・まあいいか。なら、行くとするか」


「ルド殿、せめて街の門まで送らせてくれ」


「はあ、別にいいですけど」


 ♪♪♪

 

 殿下と肩を並べて、街の大通りを歩いて行く。リサーナは直ぐ後ろから付いて来ている。


「ん? ルドさん!」


「おう、って誰?」


 いきなり呼ばれて、つい返事をしたが、振り向いた先にいたのは・・・・誰だよほんと。


「あぁ、分からないですよね。仮面外してますし。私です。クロウです」


「・・・・えぇぇぇぇぇ!! クロウ・・お前、女だったのか!」


「あはははっ、マリーダさん達には気づかれたんですけど、ルドさんは気づいて無かったんですね」


 分かるかい! 顔隠してたし、それに、凹凸少ないから。


「ルドさん・・・・何か今、変な事を考えてません?」


「そんな訳無いだろ。それにしても、クロウが女性だったとは・・・・」


 まあ、無い話ではないが・・・・。男装する女性冒険者って結構いるからな。


「所で、ルドさんはこんな所で、何をしてんるんです?」


「街を離れるんだ」


「えぇ・・・・そうですか。出来たらもっと、お話したかったです。そうだ門までお送りします!」


「うん? あぁ」



「大変です姫様」


「何がだ、リサーナ?」


「ライバル登場です」


「なっ! だが、彼女は迷宮で助けたという関係性であろ?

別に問題は・・・・」


「甘いです姫様。だからこそです。助けられた=惚れてしまう・・ではないですか」


「な、なるほど!くっ、泥棒猫!」


「何を言っているリサーナ」


「姫様の心のうちを再現して見ました」


「せんでよい! そもそも、そんな事・・そんな・・」


「殿下」


「は、はい!」


「門に到着したので、もう見送りはいいですよ」

 

 しまった。もう着いてしまった。


「ル、ルド殿!」


「はい」


「あの、その。「ボソ」姫様、そこは愛してるです」


 コソッと殿下に耳打ちするリサーナ。


「うんにゃ事、いえりゅかーー!!」


「大丈夫ですか殿下? それではの辺で・・・・」



「ルドさん! お気をつけて」


「おう、クロウもな。それでは殿下、リサーナも」


「はい、ルド殿。ほら、殿下も」


「あぁ・・・・ルド殿!」


「はい」


「その、また会えるかな?」


「あぁ、はい。どうせ、今回の件が片付いたら、王都に戻りますけど」


「そう、そうだな。帰って来たらまた飲もう。今度は父上も一緒にでどうだろう?」


「はあ・・・・それは遠慮しときます・・・・では」


「うむ、気をつけて」


 オッサンは、アウダマの森がある、ヴァラキア領に歩み始めた。その背中を、殿下達は見えなくなるまで見送った。


「所でクロウといったな」


「あっ、はい王女殿下」


「ルド殿とはどういう関係だ」


「??? 恩人ですが?」


「そうか。ならよい」


 あらえら、殿下ったら。嫉妬ですかね? ちょっとは、成長してきましたか。胸ばかり栄養いってましたからねぇ。リサーナお姉さんとしては・・・・揶揄い甲斐があります!


「リサーナ、其方変な事を考えておるだろ」


「いえ、そんな訳ありません」

 

 その頃、伯爵邸では・・。


「伯爵はまだ起きないのかしら?」


「ダメですね。特製ジュースが効かない何て!」


「後でお仕置きですね」


「メイド長、マリーダ様方はどうしましょうか?」


「ゆっくりさせておきましょう。それより、伯爵様は後で折檻します。準備を」


「「「はい」」」


 マリーダ達はと言うと・・・・。


「くかーー、ムニャムニャ。ルドぉー、酒よこせー」


「ぐるるる、ルドさん・・・・ムニャリ。尻尾はダメでゃよー」


「すーー、すーー。ルドしゃん・・・・ハゲの呪いのでしゅう」


 ぐっすりと寝ていた。



「はっくしょーん。ズズッ・・・・風邪か? な訳無いか。今まで風邪ひいた事ないし。さて、先を急ぐぞ」



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