帰還
「ふう、ようやく戻って来れたな。迷宮に入ってから八日ってとこか? 太陽も久しぶりだな」
「帰る時の方が大変だったな。ほら、みんな! もう直ぐ出口だよ」
「ふう、さすがに疲れた姐さん」
「そうですぅ。お風呂入りたいですぅ」
「帰って来れた」「ハァ、ハァ、嘘みたいだ」
「久しぶりにメシ屋の子に会える」
「もしかしてお前、気があったのか?」
「うっせぇー」「あの子、別の冒険者の奴と付き合ってなかったか?」「嘘・・・・」「あっ、バカ! それを言うんじゃ無い!」
「みんな元気だな。まあ、よく生きて帰れた思う。ルドさん、ありがとうございます」
「よせよクロウ。お前だって、仲間の為に一人で頑張ってたじゃねぇか」
「ですが、ルドさんがいなければ、皆を助ける事なんて・・」
「辛気臭いよクロウ! 同じ冒険者仲間だろ! 困った時はお互い様だよ」
「マリーダさん」
さすがはマリーダ。姉御肌全開だな。マリーダは面倒見がいいから、結構慕われるんだよなぁ〜。
・・・・俺と違って。
「「ルドさんどうかした?」ですぅ?」
「いや、何でもないよ。ほら、扉が見えた。もう直ぐ地上だぞ!」
扉を開くと、久しぶりの太陽の光。あまりの眩しいさに、みんな目を細めた。
「冒険者達が帰って来た・・・・帰って来たぞー!」
「ギルドに報告を! 伯爵様にも連絡しろ!」
騒がしいなぁまったく。久しぶりの太陽をもう少し静かに味あわせろよ。
「外だぁー!」
「久しぶりの地上ですぅ!」
「さっさと報告して、飲みにいくぞ」
紅き三ツ星は、いつも通りといった感じで地上に出た。対照的に、捕まっていた冒険者達は、生きて帰還した事に涙していた。
「・・帰って来た。うっ、くっ」「・・あぁ、生きてる。うっ」
「うわーーん。帰って来たよー」「何でだろ涙が・・・・」
「ふう、依頼は完了。さっさとギルドに報告しに行こう!」
「「「「はい!」」」」
「帰ったぞ、ばあさん!」
「良くやったよルド! それで、報告を聞かせてもらおうか」
「あぁ、ってわっ!」
誰かがバサッとおっさんに、いきなり抱きついて来た。誰かと言えば、殿下だ。何で分かったかって? ふっ、愚問だな。こんな立派なものを持っていらっしゃる人は、そうそういないだろう。
つまり、殿下の立派二つのお山が、おっさんの体に密着しているのだ。
「で、殿下! あの、ちょっと! えーと」
「ご無事で良かった。ルド殿・・・・」
「姫様、皆の前ではしたないですよ!」
「はっ、すまぬルド殿。思わず・・・・」
「あっ、はい・・・・」
「では、私も」
今度はリサーナが抱きついて来た。
「なっ! リサーナ!」
「私も心配していましたから」
心配してたら抱きついていいとは、ならんと思うぞリサーナ。ほら、冒険者が見てる! 今にも襲いかかって来そうな雰囲気で見てる!
「ほー・・・・ルド・ロー・アスも隅にはおけませんなぁ」
ちょっと、グランシェル伯爵、そういうのはいいから!
そんで、何でマリーダ達は怒ってるんだ? 怒ってない? いや、怒ってるだろ? 絶対、顔怖いぞ。笑ってる? いや
笑ってる顔だが、怒ってるよな?
「そんな事はえぇから、さっさと報告せい!」
「あぁ、えーとな。実は二六階層にだな・・・・」
「タルボロだって?」
「あぁ、そうなんだ」
迷宮内の出来事を、ばあさんと伯爵、殿下達に報告した。
「妙だね」
「おギン殿、妙とはどういう事だ?」
「この迷宮に、タルボロはいないからだよお姫さん。だとすると・・・・いや、だがなぁ〜」
「あの? 一体どういう?」
グランシェル伯爵が、事態の把握が出来なくて、誰か教えてと目を泳がせながら聞いてきた。
「グランシェル伯爵、この迷宮にはタルボロという魔物はいません。迷宮が発見され、探索されてから、一度も確認された事はありません」
クロウが、グランシェル伯爵の問いに、淡々と答えた。
「えーと、つまり?」
「誰かが持ち込んだって事です。伯爵」
俺の答えに皆が黙る。
「まあ、そうだろうね。しかし、迷宮への扉は、二十四時間体制で守っとる。そう易々とは・・・・」
「そこが問題だが、タルボロならいける筈だ」
「どういう事だルド?」
「マリーダもタルボロと闘ったから分かるだろ。奴の生命力
の凄さ」
「あぁ、確かに面倒な奴だった」
「ウネウネでヌルヌル」
「二度闘いたくないですぅ」
ん? リジー、ウネウネは分かるが、ヌルヌルは? 別に触ったりは・・・・あぁ、冒険者を助ける時か。うんうん。
「それで、タルボロならどういう事だい?」
「タルボロは、本体の一部さえあれば、元通りになれる」
「成る程、タルボロとやらの一部を持ち込むなら、確かに簡単だな」
「しかし、何の為でしょうか? わざわざ、迷宮に居ない魔物を連れて来たりして・・・・」
リサーナの疑問に、皆が頭を捻る。確かにその通りなのだ。今回のタルボロは、偶々ユニークモンスターに成長したが、迷宮の魔物も強力だ。食われてお終いの可能性の方が大きい。・・・・一体何の為に。
「益々持って、分からん。とは言え、調べん訳にもいかん。
早速、陛下に報告をせねば・・・・」
「だね。後、王国にある全ての迷宮にも注意喚起もせにゃいかんな」
「その辺は、ばあさんと伯爵に任せるよ」
「ふん、任せな。それから、姫さん!」
「はい、何でしょうか」
「ギルドマスター、ギンメイ・ラサメーラの名の元に、此度の一件、調査に尽力致します」
「王女殿下! オーガスタ・フォン・グランシェル、ギルドマスターと協力して、事に全力で当たります」
「うむ、二人共宜しく頼む」
さてと・・・・報告も済んだし「風呂入りたい」
「風呂? なら我が屋敷の風呂を使うか? ルド・ロー・アス」
「いや、街のお風呂でいいですよ。あー早くサッパリしたい」
「私もだ。ルド、さっさと宿とって、飲みに行こうぜ。何ならお前秘蔵の酒でもいいぜ」
「風呂ー! からの一杯! ルドさん! 姐さん! 早く行こう!」
「お風呂ーですぅ。ゆっくり浸かりたいですぅ」
「はいはい。後マリーダ、秘蔵の酒はぜぇーーんぶ、クリュレミアにあげたぞ」
「いや、ルドなら絶対隠してる」
ちっ、マリーダの奴、中々鋭いな。
「いやー、さすがにもう無いなぁー」
「ルド、棒読みにも程があるぞ」
「ルドさん演技下手すぎ[笑い]」
「ふふっ、大根ですぅ」
「ルドの秘蔵の酒だって? ルド! 私にもよこしな!」
「王国一の冒険者、ルド・ロー・アス秘蔵の酒か・・・・飲んでみたいな」
「おぉ、あの酒か。確かに美味かったな。妾も頂きたい」
「姫様、酔っ払ってやらかした事、忘れてますね。ですが、私も頂きたいです。あれはとても美味しい物でした」
くっ、酒好きどもめ。マズイな。下手すると全部飲まれ兼ねない。・・・・逃げよう。
「あっ、逃げた! ルド待て!」
「ちょっとルドさん!」
「待ってですぅ!」
「なっ、逃げたく成る程飲ませたく無い酒。緊急依頼だ! ルドを捕まえな!」
「衛兵隊! 騎士団も動かせ! ルド・ロー・アスを捕えよ!」
「あら、ルド殿が逃げてしまいます。姫様ここは、ルドを捕まえて愛の逃避行といきましょう!」
「にゃ、にゃにわいったりゅのだ! りしゃーな!」
この日俺は、風呂に入れず逃げ回る事になった。
「「「「「「待てぇーー!!」」」」」」
「待てと言われて待つ奴は、いなーーーい!!」
誤字報告ありがとうございました。




