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メルキオス迷宮 その5


 俺達は二十六階層へと、足を踏み入れた。因みに、前を行くのは俺だ。マリーダ達はと言うと・・・・。


「ゴ、ゴゴゴ」


「フィ、フィオ! う、うるさい!」


「リジーもうるさい! ゴ、ゴゴゴキぐらいどうってこと」


「ゴキ!!」


 マリーダのゴキと言う言葉に、フィオが反応して、大声でゴキを叫んだ。


「「「きゃーーーー!!」」」


 紅き三ツ星は、互いに抱きしめ合い叫んだ。


 きゃーって、マリーダがきゃーって言った。


「「「・・・・・・・・・」」」


「なぁ」


「「「ひゃっ!!」」」


「俺だよ。まったく、これなら一人で行った方が良かったかな?」


「う、うるさいルド」


「うるさいのは、マリーダ達だろ?」


 さっきから、十メートルと歩かんうちに、叫んでるだろ。

 急いでるっつうの! 早よ歩け!


「男のルドさんには分からないですぅ!」


「そうだよ! ルドさんは男だから、私達の気持ちは分からないんだ!」


「そうだぞルド! 男のお前には分からない」


 いや、ゴキに男も女も関係なくない? 嫌なもんは誰だろうと嫌だろ。俺だって、ゴキは嫌だぞ。


「ハァーー。ほら! 行くぞみんな!」


「「「・・・・はい」」」


 ・・・・・・・・妙だ。二十六階層に降りてから、魔物にまったく出会わない。もしかしてこれは・・・・。


「ルド、コイツは」


「あぁ、どうやらタルボロの奴、この階層の魔物を根こそぎ倒したみたいだな。魔物が一匹もいない」


「と! 言う事はですぅ!」


「ゴキは!」


「どうやら、いないみたいだな。まあ、暫くすれば復活するだろうけど」


「「ひゃ!!」」


「ルド、一言多い」


 あっ・・・・すまん。


 

 迷宮内を、奥へ奥へと進んでいるが、魔物の反応はゼロ。

どうやら、本当に狩り尽くされている様だ。


「えーと、こっち・・いや、あっちか」


「おい、大丈夫なのかルド」


「さすがに結構前だからな。でも、タルボロの位置は分かるから大丈夫だ」


「えっ、どうやって分かるですぅ?」


「地面に痕跡が残ってるかな」


「「「痕跡?」」」


 灯りを近づけ、地面を照らすと・・・・タルボロの体液が点々と落ちていた。


「コイツで追跡可能だ」


「「「おぉー」」」


「あれ? ルドさんコレおかしくない?」


「リジー、何がですぅ?」


「いや、迷宮内に血と言うか体液が残ってるのがさ」


「・・・・確かに、リジーの言う通りだ。ルド、これは」


「あぁ、どうやら間違いない。タルボロは、外から迷宮内に侵入したか。持ち込まれたかのどちらかだろう」


「「「・・・・・・・・」」」


 侵入した・・・・いや、ありえん。ここは街のど真ん中だ。メルキオス迷宮を中心に街が建設されたサローニカで、侵入されたら誰かが気づく。やはり、誰かが持ち込んだとしか・・・・。


「考えてもしょうがない。取り敢えず行こう」


 三人は黙って大きく頷いた。


 

 慎重に通路を進んでいく。何時、触手が復活して攻撃してくるか分からない。デカイ分、回復に時間がかかるのかもしれないが、その逆もあり得る。慎重に慎重にと前へ進んでいたその時!


「はあっ!」「うおっ!」『ガキィーーーン』


 何者かの襲撃を受けた。いきなりの攻撃。しかも、気配を感じさせない、暗殺者の様な一撃だった。


 だが、目に入ってからでも対応出来てしまうオッサンは・・・・背負った大剣では間に合わないと瞬時に判断して、腰のナイフで受けきった。


「何だぁ!」


「敵か! フィオ、灯りを! リジー! 挟み込むよ!」


「了解ですぅ!」


「了解姐さん!」


「サーチライトですぅ!」


 フィオの魔法が、薄暗い通路を昼間の様に照らす。


「おらっ! って・・あっ?!」


「えっ! 姐さんコイツ!」


 光に照らし出されたのは、黒い防具に鳥風の仮面をつけた奴だった。


「もしかしてコイツ、紫電の鴉のメンバーか?」


「お前達は・・・・」


『バタっ』


「あっ、倒れたですぅ」


「怪我してる! ルドさんどうしよう!」


「えーと、確かこの辺に・・・・あった。リジー、高級ポーションだ」


 マジックバックから急いで取り出してリジーに投げる。リジーはそれを、パシッと片手で受け取ると、紫電の鴉のメンバーらしき人物に飲ませた。


「ほら、飲め!」


「うっ、ぐっ、ゴホッゴホッ! ん? あなた方は・・」


「俺はルドだ。ギルドに依頼されて、迷宮の調査をしてる所だ」


「私はフィオですぅ」


「リジーだよぉー」


「マリーダだ。紅き三ツ星のリーダーをしている」


「ギルドから・・・・ぐっ、ゴホッゴホッ!」


「おい、落ち着け! ゆっくり深呼吸しろ」


「スー、ハァ、スー、ハァ。・・・・もう大丈夫だ。ありがとう」


「ほんで、お前は紫電の鴉のメンバーか?」


「あぁ、紫電の鴉のリーダーをやってるクロウだ」


 リーダー本人? ほかのメンバーは?


「他のメンバーはどうした?」


「みんな奴に・・・・」


「そうか、触手に捕らえられたか」


「・・・・くっ」


「おい、まだ助かる可能性はあるんだ。そんな顔すんじゃ無いよ!」


「! それはどう言う・・・・」


 俺達は触手の正体や、触手に捕らえられた冒険者達の、生存の可能性について説明した。


「生きてる可能性があるのか!」


「あぁ、多分な。今から助けに行く所だ。クロウも来るか?」


「勿論だ! 仲間を助けたい!」


「なら一緒に行くか?」


 RPGで言う所の、「クロウが仲間に加わりました」的な感じだな。異世界で長く冒険者やってるけど・・初めてだなこうゆうの。・・・・悪くないな。


「お願いします!」


「おう! よろしくな!」


 クロウが加わったので、俺達の立案した作戦を伝えた。


「・・・・まあ、こんな感じの作戦だ」


「はい?」


 俺の説明に目をパチクリさせるクロウ。


「まあ、そんな反応するよな。作戦の内容聞いたら」


「ですぅですぅ」


「ルドさんぶっ飛んでるから」


 ぶっ飛んでるって何だ? ぶっ飛んでるって・・。俺の作戦って変か? 


「・・・・ルド? まさか、ルド・ロー・アス!」


「えっ? そうだけど? 何で今頃?」


「ルドさんルドさん。案外ルドさんの顔知ってるって人少ないよ」


「あっ、確かにですぅ。ルドさん有名人ですぅ。でも知ってる人少ないですぅ」


「そういや、そうだな? 何でだろ?」


 俺が知りたいよ。まあ、知られすぎて騒ぎも嫌だけど。


「紅き三ツ星と一緒の時点で気づけばよかった。まさか本当に、王国一の冒険者ルド・ロー・アスだとは、思いもしなかったです」


「だからクロウ。ルドが一緒ならこの作戦も何とかなるさ」


「はいですぅ。ルドさんは千人力ですぅ!」


「ルドさん化け物だから大丈夫!」


「はい!!」


 クロウよ。最後のは否定して欲しい所だが・・・・。


「兎に角、タルボロの元に行くぞ」


「「「「はい!!「ですぅ」」」



 クロウを仲間に加え、迷宮を突き進む。途中、二十七階層へと降りる階段があったが、タルボロの痕跡は無い。痕跡は二十六階層の奥へと続いていた。


「そろそろ近いぞ」


「みたいだな。フィオ、リジー、気を引き締めなよ」


「はいですぅ!」


「分かってるって!」


「・・・・・・・・」


「クロウ・・・・大丈夫か?」


「平気ですルドさん。ただ・・・・」


「仲間か」


「はい」


「絶対無事だ。俺達で助けるぞ」


「はい!」


 タルボロがかなり近い。やはり俺が思った通り、二十六階層で最も広い部屋にいたな。


 その場所に続く通路を、慎重に進んで行くと、通路が終わり、広大な部屋に出た。その広さは、部屋とは到底呼べない広さだった。


「相変わらず広いな」


 サッカーコートの二面分は軽くあるだろう。天井もかなり高く、持っている灯りでは見えない程だ。


「ル、ルド! アレ!」


「あぁ、デカイ・・・・そして、間違い無く」


 タルボロだ!


 そこには、沢山の触手を持つ、巨大な化け物が蠢いていた。切られた触手を回復させる為なのか、動かずジッとしていた。


「気持ちわりぃー。ルドさん、アレが?」


「あぁ、そうだ」


「うぅー、気持ち悪いですぅ」


「泣き事言ってる暇は無いよ! フィオ! 此処は暗すぎる! 明かりを!」


「はいですぅ! 全体を明るくするですぅ! サンライト」


 強い輝きを放つ小さな太陽が、フィオの杖先から現れて、

空中、十メートル程の所に漂って浮かんだ。


「みんなは何処に!」 


「落ち着けクロウ! まずは奴の背後にだな・・・・」


「ルド!」


「ん?!」


 俺達の存在に気がついたタルボロが、触手をうねうねさせて動き出した。


「お目覚めのようだな。マリーダ、クロウ! 俺が引きつけるから、後は手筈通りに!」


「おう! 任せな!」


「分かりました!」


「おら、来な! キモい触手野郎!」


 オッサン対タルボロの激闘の幕がきって落とされようとしていた。




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[一言] 触手「ウネウネ(チェンジを希望する、我々は美女を触手攻めするのであっておっさんではやる気がでない、打率が3割ぐらいしかない)」
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