メルキオス迷宮 その4
「おーい、そろそろ行くぞー」
「「「・・・・はっ! ここは?」」」
三人はあまりにとんでもない物を見た所為で、思考が止まっていた。
「ルドさん! 化け物過ぎですぅ!」
「ルドさん! アンタ化け物にも程があるよ!」
「ルド! お前一体何なんだ!」
いやいや、最後のマリーダのが、一番グサッときたぞ。
一体何なんだとは何だ。それに俺は、化け物じゃなくて人間だ。強いと言っても、人間の域を少しはみ出した程度だぞ。
はみ出した時点でおかしいと思わないオッサンであった。
「マリーダ、一旦25回層のセーフティーエリアまで戻ろう」
「そうだな。原因らしきのを確認出来たしな。それがいいかもな」
「凄い攻撃だったし、倒しちゃったんじゃない?」
「リジーの言う通り、確かに凄かったですぅ。でも、いりくんだ迷宮だと届いてないと思うですぅ」
「フィオの言う通りだ。確か通路の奥はは二手に別れていた筈だ。一方は奥に続いていて、その先は確か行き止まりだったな。もう一方は下の階層に降りる階段だった筈。まあ、奥にしろ下の階層にしろ、攻撃の範囲からして・・・・」
「仕留め切れて無いと?」
「そう言う事だ」
「マジかぁ〜」
「リジー、取り敢えずセーフティエリアに引き返すよ」
「はい姐さん」
☆☆☆
俺達はセーフティエリアまで一旦戻り。現在、対策会議中だ。勿論議題は・・・・「さて、アイツをどうやって倒すか」だ。
「ルドさん、どうやってって? 普通に倒せばいいんじゃないの?」
「タルボロだとしたら・・・・結構厄介何だ」
「厄介ですぅ?」
「ルド、厄介ってどう厄介何だよ」
「タルボロはな、触手を切ってもまた生えてくるんだ。本体を切っても、分裂して増えちゃうし」
「「「・・・・・・・・それは厄介だな「ですぅ」」」
ほんと厄介なんだよ。前の時は、分裂に分裂を重ねて、百体くらいまで増えたちゃって、大変だった。
「で、どう倒す? ルドは倒した事あるんだよな?」
「あぁ、えーとな・・・・跡形もなく消し飛ばして倒したな」
「「「・・・・・・・・それを迷宮でやれと?」」」
「・・・・・・・・うーん。どうしようか?」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
あははっ。迷宮でそんな攻撃したら、俺達が危ないよな。
うん、危ない。
「私らで触手を残らず切り落として、最後にフィオの魔法で・・・・」
「いくら何でも無理ですぅ。あの触手からして、かなり大きいですぅ! 無茶ですぅ!」、
「姐さん、撤退も視野に入れるべきじゃ?」
「馬鹿言うんじゃないよリジー。紅き三ツ星が、尻尾巻いて逃げ出すなんてさ!」
「うぅ、ごめん姐さん」
「あっ!」
「「「あっ?」」」
思い出した。もし、そうだとすれば・・・・余計マズイな。
「何だいルド。あっ、て!」
「いや、ちょっと思い出してな」
「何を?」
「タルボロの生態についてだ」
「「「生態?」」」
タルボロは変わった生態を持っている。それは食事だ。タルボロは、獲物を捕まえるとその獲物を取り込むのだ。殺して食べたりせず、生命エネルギーと魔力を、獲物から吸収し続ける。取り込まれた獲物は寿命が来るまで、生かされ栄養として吸収され続ける事になる。
「と言った感じだ」
「「「・・・・・・・・」」」
「ルドさん、もしかしてタルボロが冒険者達をですぅ?」
「それは分からない。だが、可能性はあると思う」
「なあ、ルド。アレは・・・・ユニークだと思うか?」
「どうだろうなぁ。迷宮でユニークがまったく出ない訳じゃないが・・・・今までメルキオス迷宮で確認されてない魔物がってなるとなぁ」
「ルドさん、やっぱりアレ・・ユニークなのかな? でも、タルボロの情報なんて無かったよね?」
「無いですぅ。メルキオス迷宮が確認されて、迷宮探索が行われ出して百五十年ですぅ。でも確認されて無いですぅ」
「確かに妙な話だよな。ギルドのモンスターリストにも、乗って無かったからな。・・・・まさか、外から来たとか?」
「「・・・・それは無い「ですぅ」」
「・・・・だよな」
うんん? 意外にマリーダの推測はあながち間違ってないのではないか? ・・・・・・・・ハアー、考えた所で分かる事でも無いか。一番の問題は、どうやって倒すか・・・・。
「ルドさん、どうかしたですぅ?」
「ん? いや、どうやって倒そうかと。仕掛けるなら、触手を失った今なんだが・・・・」
「放っておくと生えちゃうんでしたっけ?」
「そうなんだよ。どうするか・・・・」
この狭い迷宮内じゃ、やれる事は限られる。それに、もしアイツが元凶なら、冒険者達を取り込んでる可能性が・・・どうしたものか。
「何か方法はないものか・・・・」
「「「うーーーーん」」」
みんなで頭をひねるが、これと言っていい案は思いつかない。マジでどうしよう。そう思ったその時!
『グウゥー』と腹が鳴った。こんな時に腹鳴らすなよ。一体誰だ? と音のした方を見ると、それはマリーダであった。
マリーダは顔を真っ赤にして、プルプルと震えていた。
・・・・そう言えば、そろそろお昼か。うん、メシにしよう。
「みんな、昼メシにしよう。腹が減っては戦はできぬと言うしな」
「そ、そうだな。ルドさんの言う通り! お昼にしましょう姐さん!」
「はいですぅ。お腹減ったですぅ」
「・・・・・・・・わ、私はべちゅに!」
あっ、姐さん噛んだ。
噛んだですぅ。
噛んだな・・・・まさかマリーダに、かわいい一面があるとわ・・・・。
「な、何だそにょ目は!」
はっはっは、また噛んだ。何か、よしよししたくなるな。
「おい、ルド! そんな目で見るな! 何だその・・・・孫みるお爺さんの様な目は!」
お爺さんかぁ〜。確かに、俺が転生せず生きてれば、孫のいる歳だわな。
かわいい孫を見る様な目に、マリーダはオッサンの襟を掴み、大きく揺さぶった。
「その目をやめろー!」
「はっはっはっは」
「姐さんかわいい」「かわいいですぅ」
☆☆☆
「「「モグモグモグモグ」」」
現在、みんなでモグモグタイム中だ。軽くつまめる様、朝出かける前にサンドイッチを作っておいた。
「モグ・・おいひ・・モグモグ」
「モグ・・・・リジー、食べ過ぎですぅ・・モグモグ」
「フィオ、リジー。食べながらはなすんじゃないよ。モグモグ」
「あっ、姐さんそれ私の!」
「リジーはさっき食べたですぅ。私のですぅ」
「まだあるからケンカするなよ。ほれ、追加」
「「「おぉーー、いただきまーす」」」
メシもいいけど、今後どうするか少しは考えてよ。
「ふう、食べた食べた。で? どうするんだルド」
「急だなぁ〜。さっきまで、あんなにがっついてたのに」
「・・・・・・・・いいから早く今後の事を話せ!」
「うーん、そうだなぁ〜。いっその事落とすか?」
「「「落とす?」」」
「あぁ、タルボロがいる場所は、何となくだが予想できる。
二十六階層に、メルキオス迷宮で迷宮の主の部屋を除いて、最も広い部屋があるから、多分そこにいると思う」
「確かか?」
「まあ、多分な。触手のデカさから、本体の大きさを考えるとそこしか無いだろ。それに、本体はその部屋から出られなくなってると思う」
「どうしてですぅ?」
「迷宮の狭い通路を。あの触手の持ち主が通れると思うか?」
「思わないですぅ」
「と言う事で落とす。下の階層に」
「「「・・?・・」」」
何言ってんだって顔してるな。
「どう言う事? よく分からいよルドさん」
「俺のあくまで予想だぞ」
「「「・・・・ゴクリ」」」
「その部屋の真下って・・・・多分、迷宮の主の部屋だと思う」
「「「はあ?」」」
まあ、そうなるよな。
「ど、ど言う事だいルド!」
「そのまんまの意味だよ。迷宮の主の部屋の上が二十六階層にある、その部屋何だ」
「確かめたのか?」
「まあ、迷宮の主とやり合った時に、主の攻撃が天井を崩落させてな。多分だが、そうだと思う」
「「「つまり、迷宮の主の部屋に落とすと?「ですぅ」」」
「そう言う事」
「「「・・・・・・・・」」」
マリーダ達は黙り込み、何か頭を巡らし始める。
「・・・・よしんば穴を開けて落とせたとして、取り込まれた冒険者達は?」
「問題はそこだが、何とかなると思う。冒険者達は、タルボロ本体ではなく、栄養を吸収する触手に取り込まれてる筈だ。」
「栄養を吸収する触手?」
「あぁ」
簡単に言えば、長ーい口と考えればいいだろう。その機能を持つ触手は一本しか無い。だから、それを切り落とせば、冒険者達をタルボロから引き剥がせる筈!
「てな訳だ」
「成る程、それならいけるかも! ねっ、姐さん!」
「誰かが注意を引いて、その隙に切り落として、本体と引き剥がし。下の階層に落とすと」
「ふぬー、いけるかもですぅ」
けど問題は、タルボロが二十六階層の部屋にいるかどうかだよな。いなかったら・・・・・・・・どうしよ。
「そうと決まれば・・・・やるぞルド!」
「ん、あぁ。何か張り切ってんな」
「ふん、やっと思いっきり暴れられるからな」
いやいや、さっきも結構暴れたじゃん。それに、迷宮内は殆ど俺に闘わせたし
「・・・・あっ」
「また、あっ、かよ」
「いやぁ、二十六階層に降りるけど大丈夫かと思って」
「「「あっ!!」」」
完全に忘れてたな。
「「「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
はいはい。悪いけどさ。凄く嫌だろうけど行くからね。




