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メルキオス迷宮 その3


「ほーれ、できたぞー」


「「「おぉ!」」」


 オッサン達は、セーフティエリアで夕食を摂っていた。


「うまー! さすがはルドさん!」


「おいしいですぅ!」


「ほんと器用だな。冒険にルドは欠かせないな!」


 だから、一家に一台みたいなのやめい!


「ハァー。さて、食いながらでいいから聞いてくれ。今後どうするかだが・・・・」


「モゴモンゴ、モゴモゴ! モンゴモンゴモゴ」


「リジー、飲み込んでから喋れ」


「そうですぅ。はしたないですぅ」


「ごっくん。ふう、ごめん」


「でっ、何だって?」


「うん。兎に角、下層をくまなく見て行くしかないと思う」


 まあ、それしかないと言えばない訳だが・・・・。


「でも、それだと時間がかかるですぅ」


「だな、ここから下は更に魔物が強くなるし。さすがにルドばかり戦わせる訳にいかなくなるな」


 いやいや、最初から戦えよ。何を楽しようとしてんだ。


「どの階層で問題があるか、分かればいいのだけどですぅ」


「まあ、そうなんだが・・・・仕方ないさ、明日も今日と同じように頑張るしか無いな」


「まあ、そうなるっすよね」


「そうなるですぅ」


「それしかないよな」


 結局、地道にやるしかないんだよな。さて、この話はこのくらいにして、決めなきゃならん事がある。


「見張り番の当番はどうする?」


 セーフティエリアとは言え、迷宮は現在異常事態な訳だし必要だろう。


「「「・・・・・・・・」」」


 沈黙そして視線で、彼女達は訴えてくる。


「・・・・・・・・分かったよ。俺が最初ですね」


 こういう時、男はつらい。


 


***

 

 ・・・・・・・暇だ! 兎に角暇だ。あっ、そうだ。リュリュティアに着せる新たな服でも作ろう。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「おい、ルド」


「んあ?」


「マリーダどうした? 眠れないのか?」


「いや、交代の時間だよ」


「あぁ、もうそんな時間か」


「と言うか・・何、せっせと縫ってる? お母さんか!」


「いや、リュリュティアに新作をな。こんな感じだ」


 オッサンは完成間近の作品を、マリーダに広げて見せた。


「なっ! なんて物を!」


「ふう、今日はここまでにして、俺は寝る。後頼んだぞ」


「・・・・・・・・・・・・」


 オッサンの作品を着たリュリュティアを想像したマリーダは、交代まで萌え萌えにすごしたらしい。どんな服かは、乞うご期待。



 ☆☆☆


 俺達は朝早く朝食を済ませ出発した。まあ、迷宮内だから朝なのかは分からない。体内時計で朝かなって感じだ。


 にしても・・・・コレと言って異常は見当たらない。


「逆に不気味だな」


 早々と二十階層まで降りてみたが・・・・別段変わった様子は見てとれない。


「不気味ですぅ。それに、このまま下に行くと・・・・」


「あ、アイツらが!」


「お、落ち着けフィオ! リジー! 大丈夫だ・・・多分」


「姐さん・・・・」「マリーダさん」


「取り敢えず、ギリギリまで降りよう。いざとなったら最下層まで俺一人で行くよ」


「「ルドさん!」」


「いやダメだ! 私達は紅き三ツ星! Sランクパーティー何だぞ! たかだか虫如きに・・・・・・・・」


「無理しなくていいからなマリーダ」


「・・・・うん」


 


 もう直ぐ二十五階層。何事も起きない。


「このまま行くと、二十六階層まで降りる事になるな」


「「「・・・・・・・・・・・・」」」


「大丈夫かみんな?」


「「「・・・・・・・・・・・・」」」


 せめて答えろよ。ん? 何だ・・・・変な感じがする?


「グルルルル!!」


「リジー! どうした!」


 犬獣人の本能が反応したのか、リジーが突然唸りだした。


「グルル・・・・・・・・姐さん、よく分かんない! 何かゾワッてした。嫌な感じがする」


「リジーの言う通りだ。何かが・・・・来るぞ! みんな武器を構えろ!」


「「「!!!」」」


 薄暗い迷宮の通路の奥で、何かが蠢めく。それがゆっくりしかし確実に、こちらへと向かって来ている。


 みんな、それぞれの武器を構えて、臨戦態勢に入る。

 

「何か来る。フィオ!!」マリーダか叫ぶ。


「はいですぅ。先手必勝ですぅ! ストーンニードル!!」


 三つ程の円錐形の石が、回転しながら薄暗い通路の奥へと撃ち込まれる。


『ズブシャ! グシャリ! メシャッ!』


 フィオの放った魔法が、何かに命中した音が迷宮に響き渡る。


「当たったな? 一体何なんだ」


「気を抜くなマリーダ」


「分かってる」


「グルル! 姐さん・・・・何かヤバイかも!」


「おい! なんだいアレは!」


「うぅ、ですぅ」


「おいおい、コイツは一体?」


 オッサン達の前に現れた者は・・・・巨大な・・触手だった。


「ルド! この迷宮にこんなのがいるのかい?」


「いや、最下層まで降りた俺でも知らん! それに・・」


「それに?」


「多分コイツ・・・・」


「多分なんだい?」


「アウダマの森に生息してる魔物。タルボロ・・・・だと思う。ただ・・・・」


「「「ただ?」」」


「大きさが全然違う。もしタルボロならこの二十分の一くらいなんだが・・・・」


「「「・・・・・・・・」」」


 目の前に、丸太並みの太さがある触手が、うぬうぬと動いていた。それは、何とも気持ち悪い光景だった。


「ここじゃ戦いにくい。一つ前の広場まで下がろう!」


「分かった! リジー、フィオを連れて先行しな! 私とルドで殿をやる!」


「了解!」「はいですぅ!」


「ルド!」


「おう!」


 伸びて襲ってくる触手を、マリーダと共に応戦する。俺やマリーダの攻撃でぶった斬られた触手が、ウネウネと地面で動きまわる。


「おいおい、まだ来るぞ」


「マリーダ、先に行け!」


「分かった!」


 マリーダは戦斧を担いで先に、後方にある広場へ撤退する。


「おら行くぞ!」


 大剣に魔力を込め、それを振り降ろすと同時に、込めた魔力を解放する。


「魔砲飛刃斬!!」


 魔力で出来た刃が、触手を薙ぎ払う。痛いのか斬られて触手がビチビチと暴れる。


「どうだ?・・・・ってまだ来んのか!」


 オッサンはダッシュで撤退する。うー、オッサンに全力疾走はキツイ! あっ見えて来た。


「ルド! こっちだ!」


「おう!」


「フィオ! ルドが来たらぶっ放せ!」


「はいですぅ!」


「おし! いいぞ!」


「行くですぅ! ロックオベリスク!」


 迷宮の通路に、無数の石柱が触手を串刺しにした。


「やったのかな?」


「串刺しですぅ」


「フィオ、リジー油断す『バキバキ』なっ!」


 串刺しになった触手が、石柱をへし折りこちらへと伸びてくる。


「マジかよ。おりゃー!」

 

 斬っても斬っても、新手がやって来やがる。そう言えば、

タルボロって触手が百本くらいあったよな。それに暫くすると再生しちゃうんだよな。


「フィオを中心に! ルド! そっち側を頼む!」


「おう! 分かった! おいリジー! 右から来るぞ!」


「えっ、うわっ! こんのぉ! とりゃ!」


「まったく! しつこいねぇ・・・・うらぁ!」


 きりが無いぞ。斬ってもまた新しい触手が来るし。

 どうする・・・・何か方法は・・・・あっ、アレやってみるか。


「悪いが援護してくれ!」


「あぁ? 何をするんだいルド!」


「何か秘策ですぅ?」


「何でもいいから、ルドさん何とかして!」


 オッサンはおもむろに、マジックバックに手を伸ばす。バックの中に手を入れ、ゴソゴソと探し始めた。


 えーと、この辺だったか? いや違う。こっちか? 確かここにあったと思う・・・・あった。


 俺が取り出したのは槍。それもかなり大きな物だ。


「ルド! そいつでどうすんのさ」


「投げる!」


「「「ハァ?」」」


 俺はその場で踏ん張って、槍投げスタイルで踏ん張る。そして、槍に魔力をこれでもかと注ぎ込む。すると、槍からバチッ! バチバチッと電気が走る。


「あのぉールドさん。それ、大丈夫ですぅ?」


「何かヤバそう」


「おいルド。迷宮ぶっ壊れたりしないよな?」


「いやいや、さすがに迷宮が壊れる様な攻撃じゃ無いからな! それにちゃんと手加減するぞ!」


「いや、ルドがその気なれば、やれるだろ?・・・・」


 ・・・・いやいや、さすが迷宮を壊す何て無理・・・・やれ無い事ないか?


 いけるか? と言う顔を見て三人は「「「・・・・・・・・化け物」」」と呟いた。


 視線が・・・・痛い。くっ、全部触手共の所為だ!


「・・・・・・・・行くぞ触手野郎! ふんがぁー!」


『バチバチッバヂィィィィ』


 オッサンは槍をぶん投げた。投げた槍が雷を纏い、触手を切り裂き焦がしていった。投げて5秒程経った時、通路の奥に閃光と凄まじい稲妻が轟いた。


『バリバリバヂィバリィィィィィィィ』


「ふう、やったか?」


「「「・・・・・・・・」」」


 

「「「やっぱり化け物」」」


 ・・・・うっ、何故に? 迷宮壊れて無いよ? うぅー。

それにしても、タルボロだとしても何でこの迷宮に? ここにはいない筈? 新しく出たとか? いや、そんな事あるのだろうか? 新しく迷宮に現れたとしても・・・・あのデカさはフロアボス以上だぞ? ん? まさかユニークモンスターなのか? だとしても、迷宮でか?


 オッサンは考え込むのであった。


「「「・・・・化け物」」」


 三人はルドの放った攻撃に、まだ、放心状態であった。



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