メルキオス迷宮 その2
オッサンと紅き三ツ星は迷宮の入り口前に来ていた。
「久しぶりだな。メルキオス迷宮」
「ルドは、だろ? うちらは半年振りくらいだよ」
「うぅ、またアイツが出たりし無いよな?」
「やめるですぅリジー! 口に出したら本当にでるですぅ!」
「そうだよリジー! あんな思いは二度とごめんだからね」
「ううぅ、ごめん姐さん、フィオ」
アイツ? アイツねぇ? あぁ、もしかして・・・・。
さっきから言ってるアイツって。
「もしかしてゴキ「「「言うな(ですぅ)!!」」」
紅き三ツ星が嫌がっているのは、ゴキヴリン。とてつもなく巨大なゴキブリの事だ。そのデカさたるや・・・・小型サイズでも、五十センチはある。しかも、巨大な奴になると十トントラック並みのデカさになるのだ。男の俺でも悍ましく思ってしまう。
「大丈夫かそんなんで?」
「出なきゃ平気だ」
「ですですぅ!」「うんうん」
「・・・・・・・・一つ聞いていいか? マリーダ達は何階層まで降りた?」
「メルキオス迷宮は確か三十階層までだったな」
「あぁ、俺が迷宮の主を三十階で倒してるからな」
「うちらが降りたのはニ十六階層までだな」
ニ十六階層か。言った方がいいかな?
「どうしたですぅ、ルドさん?」
「あーーえーーと、そのぉーー」
「何だ、はっきり言えルド!」
「ニ十六階層より下は・・・・」
「「「下は?」」」
「ゴキヴリンの巣だぞ」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「後、言っとくと・・・・三十階の階層主は、ギガントゴキヴリンだぞ」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
三人は沈黙し・・・・ってフィオ! 白目むいて気を失ってる!
「今回の依頼は無しって事で・・・・」
「おい、マリーダ」
「だってルドさんゴゴゴ、ゴキ・・・・」
「別にニ十六階層まで行くかは分からないだろ?」
「「それもそうか」」
ハァー。あっ、フィオ。
「おーーい、フィオ〜! 起きろ〜。」
「はぁっ!! ゴゴゴ・・・・」
「お、落ち着けフィオ」
リジーがフィオに後ろから抱きしめ、混乱するフィオを落ち着かせようとする。
「まったく、これから迷宮に入るって時に、何でそんな話をするだルド!」
「す、すまん。けどよ、知らんで鉢合わせよりいいだろ?」
「「「ブルッ、うぅー・・・・確かに(ですぅ)」」」
三人はいきなり遭遇した時の事を想像して、軽く身震いして鳥肌が立っていた。
「まあ、そこまで降りるとは限らんし。大丈夫だろ?」
「「「そうだといいけど(ですぅ)」」」
「ほら、行くぞ」
「「「・・・・うん」」」
足取りの重い三人を連れて、頑強な石の扉を開いて迷宮に入って行く。中は薄暗いが、所どころに光る石や花が、照明の代わりになっていた。
「取り敢えず、二階層を目指そう」
「はいですぅ!」
「了解!」
「おう!」
ここから、オッサンの進撃が始まる。
「ほいっと」『グギャーー』「あらやっと」『メギャーー』
「よいしょっと」『フンギャーー』
「ルドさんが一緒だと本当に楽すっね」
「「・・・・・・・・」」
「いや、お前らも戦えよ」
「だって、ルドさんが一人で倒しちゃうから」
それは、俺を先頭にするからだろ!
「じゃあ、前行けよリジー」
「やだ! もし前にいてアイツが現れたら・・・・」
「「無理「ですぅ」」
・・・・・・いや、俺だって嫌だからね。
「まあいい、このまま一気に行くぞ」
「はーい」
「はいですぅ」
「はいよ」
オッサンを先頭に歩く事・・・・十分。地下の二階へ降りる階段前に来ていた。
「さて、下層に続く階段まで来た訳だけど・・・・コレと言って今の所、何も無いな」
下層に続く階段を眺めながら呟いた。
「本当に迷宮で何かあったのか? 普通過ぎて逆に怖い」
「姐さんの言う通りで、本当に普通ですね」
「取り敢えず、二階層に降りてみるですぅ」
階段をコツコツと降りて行く。半分ほどの所でリジーが反応した。
「ん? 誰かいる」
オッサンも気づく。
「あぁ、いるな。二人、いや三人か」
『コツン』
「誰だい!」
音に反応したマリーダが戦斧を構えて臨戦体制にはいる。
「ま、待ってくれ!」
薄暗い下層へ続く階段から三人の冒険者が現れた。
「待ってくれ、その斧を下ろしてくれ」
「マリーダ」
「・・・・あんたらサローニカの冒険者か?」
「あぁ・・・・うん? もしかして、紅き三ツ星か?」
「そうだが・・・・会った事あるか?」
「私は知らない」「私もですぅ」
「そりゃそうだろう。俺達は見た事あるってだけさ。しかし、何で紅き三ツ星が? それにそっちの人は・・・・」
「あぁ、俺はルドだ。よろしく」
「ルド・・・・ルド! まさかルド・ロー・アスか!」
「えっ、あの伝説の!」「この迷宮を最初に踏破したあの」
三人の冒険者は俺をジッと見つめ・・「握手してください」「サ、サインを!」「二人ともずるいわよ」
おいおい、こういう反応はレアケースだな。大概が遠巻きに見られるだけだったし。・・・・悪く無いな。
「あぁー、落ち着け。それで、お前達は何でここに?」
「えあぁ、ギルドの依頼ですよ。一階から二階までを隅々まで調査しろと」
「けど、特に異常は・・・・」
ふむ、二階層までは問題無しか。なら、更に下か・・・。
「おう、ありがとうな。気をつけて戻れよ」
「「「はい!!」」」
三人の冒険者と別れ、二階層の入り口へ。
「ルド、どうやら更に下みたいだね」
「あぁ、どうやらな。取り敢えず、下層を徹底して調べよう」
「了解!」「はいですぅ」「おう」
☆☆☆
「楽、楽ですぅー」
「あぁ、本当に楽だー」
「まったくだ。冒険に一人は欲しいな」
一家に一台みたいな事言うな!
オッサン達は進撃を続けていた。襲ってくる魔物を剣の一薙ぎで、次々と斬り倒していくオッサン。どんな異変も逃さない様に、各階層を隅々まで周り、現在十五階層まで来ていた。
「マリーダ、この先のセーフティエリアで休憩しよう」
「そうだな。まあ、私達は戦って無いから全然疲れてないけど」
「「確かに(ですぅ)」」
いやいや、戦えっての! ここまで六時間程経っているが、オッサン一人で全ての魔物を倒していた。
「ちょっとは手伝ってもいいと思う」
「いやだって、手伝おうにも階層主をルドさんが瞬殺しちゃうし」
「魔法を使うヒマも無いですぅ」
「まあいいけどよ」
「にしても、こんなに速く十五階まで来れる何て・・・・ほんと化け物だなルドは」
マリーダ・・・・化け物ゆうな。にしても・・・・。
「何の異変も見つからないな」
「本当にな。更に下か・・・・」
「うっ、二十六階層より下だったりして」
「それは勘弁ですぅ」
俺だって嫌だ。群がるゴキの大群とか・・・・超巨大ゴキとか・・・・暫く夢にでるんだよ!
「着きましたですぅ! セーフティエリアですぅ!」
ひとまず、今日はここで休むとしよう。
その頃、グランシェル伯爵の甥っ子は・・・・。
「ゲリオン! 貴様何て事をしでかしたのだ!」
叔父である伯爵に屋敷にて叱られていた。
「し、しかし叔父上! あ、怪しかったので・・・・その、そもそも、王女殿下が馬車にも乗らず何て、思わないではないですか!」
「だとしても! 貴様は対応を間違えたのだ! しかも王女殿下を手込めにする様な事を言っていたらしいな!」
「い、いえ、そ、それは」
「ゲリオン! お前を我が家から追放とする!」
「な、なっ! お待ちください叔父上! それは・・・・」
「問答無用だ! 命あるだけ温情と思え! 平民となり暫く十年は、雑用係として衛兵隊で働け!」
「は、平民! しかも衛兵隊・・・・なっ、よりにもよって
ウゴールの下で働けと・・・・」
「ウゴールに徹底してしごいてもらう! 覚悟せよ!」
「そんなぁぁぉぁぁーーー!!!」
因みに、ゲリオンの取り巻きも同じ運命になったとか。
誤字などがありましたらご報告ください。




