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メルキオス迷宮 その1


「グランシェル伯爵! 久しいな。去年ひらかれた王都のパーティー以来か」


「はっ、クシャーナ王女殿下もお元気そうで何よりです」


 殿下と伯爵は互いに挨拶を交わして、微笑み合う。そして、跪いていた伯爵はスッと立ち上がり、俺の方に目をやる。


 この人、相変わらずハンサムだ。俺より十才は上の筈なのに、とても若々しい。


「ルド・ロー・アス。久しぶりだな。メルキオス迷宮踏破を祝うパーティー以来か」


「えぇ、五年振りぐらいですか」


「そんなになるか。月日が経つのは早いものだ。ウゴール、王女殿下の案内ご苦労だった」


「はっ、当然の事をしたまでで・・・・・・・・所で伯爵、実はこんな事が・・・・」


 ウゴールさんは、サローニカの正門で起きた事を話した。

その話を聞いて、伯爵の顔がみるみる青ざめていく。


「あ〜のぉ馬鹿者がぁ! クシャーナ王女殿下! 本当に申し訳ありません!」


 グランシェル伯爵は、頭を深々と下げた。


「グランシェル伯爵。伯爵程の方が、何故あの様な者を・・」


 リサーナが、正門での出来事を思い出したのか、少し怒りが顔に出た。


「すまぬ。あ奴は・・・・亡き、私の弟の子でな。面倒をみていたのだが・・・・ハァー、甘やかしすぎたのか。まったく、あの馬鹿者!!」


「・・・・グランシェル伯爵。妾は別に被害を受けた訳では無い。しかし・・・・」


「はい、ケジメはつけさせます」


「そうか。ならば、妾はこれ以上何も言わぬ」


「はい・・・・。かたじけなく」


 亡くなった弟の忘れ形見の甥っ子。伯爵は大事に育てて来たのだろうが・・・・さすがに、今回の事はどうしようもない。


「おい! 勝手にしんみりさせるんじゃ無いよ!」


「・・・・ばあさん。空気読め」


「読んだ上でいってんだよ! 今、そんな事はどうでもいいんだよ。そんな事より、メルキオス迷宮の問題の方が大事なんじゃ」


 ・・・・・・・・ばあさん。本当に空気読め。


「まぁ、おギンばあさんの言ってる事も正しいしな」


 しかしマリーダよ。正しかろうが、空気は読んでほしぞ。何かやりにくいだろが!


「ハァー。まぁ、そうなんだが・・・・取り敢えず、分かってる事を話してくれ」


「それほど分かってる事は無いよ」


「そもそも、異変てどんな異変ですぅ?」


 異変? 異変ねぇ、迷宮なんて異変だらけの場所な気もするけど。


「ふん、二週間前からか・・・・突然、消息をたつ冒険者増えてね」


「単純にやられた? とかじゃないのか?」


 マリーダが、迷宮あるあるで疑問に答える。迷宮で行方不明になる冒険者はよくいる。大抵が、迷宮の魔物に殺されたというのが七割。二割が敵対する他の冒険者に殺されたとかだな。そして、残りの一割は、実は迷宮に入ってなくて里帰りしてたとか。


「だが、その数が多すぎる。二週間で五つのパーティーが消息をたつ何て、異常だよ」


「そして、紫電の鴉か・・・・」


 紫電の鴉。会った事は無いが・・・・サローニカ最強のSランクパーティー。その紫電の鴉が・・・・。


「・・・・・・・・あぁ、サローニカが誇るSランクパーティーを調査に出したが・・・・・・」


「帰って来ないと」


 うーん、強力な魔物でも生まれたのか? しかしなぁ〜、

そんなのが生まれたら・・・・何らかの痕跡なり・・・・。


「強力な魔物でも生まれたっすかね?」


「リジーの言う通り。そんな所じゃないか?」


「残念ながら、そんな痕跡は見つかって無い。逆に、迷宮内は静か過ぎるくらいさ」


 んーー謎だ。だが、どちらにせよ「入ってみるしかないよな?」


「まぁーな」「ですですぅ」「だよなぁ〜」


 紅き三ツ星との意見も一致した。迷宮内の状況は分からんが、入るしかない。


「ちょっとお待ちを! ルド殿もマリーダ殿も。もう少し慎重に・・・・」


 俺達が何の迷いもなく迷宮に入ると聞いて、リサーナが心配して俺達を止めにはいった。


「リサーナ、どっちにしたって入る訳だし・・・・待ってても仕方ないだろ?」


「いえ、しかし!」


「一応、俺はメルキオス迷宮を踏破してるし、大丈夫だよ」


「リサーナ、ルド殿なら平気だろう。ルド殿の化け物っぷりを、リサーナも見たであろう?」


「・・・・はい、確かに姫様の言う通りですね。ルド殿なら大丈夫。化け物ですから」


「・・はいはい、化け物ですよ。ハァーー。なら早速行くか」


「うむ、行くか!」


「「「「「「・・・・・・・・えっ?」」」」」」


「皆どうしたのだ?」


 どうしたのだ? って、そりゃあーー。「ん?」マリーダが肘で俺の腕を突いてくる。さらにマリーダが、目でお前が言えと訴えてる。


「んーー、あのー殿下。殿下は一緒に行けませんよ」


「「「「「「コクコク」」」」」


 俺の後ろで、皆が頷いた。


「何故だ?」


「何故だ? じゃ、ありません。ダメに決まってるでしょ!

危険です!」


「しかし、ベゴン山脈は?」


「ベゴン山脈の危険度は、俺が知ってるから問題無いですが、迷宮内はどれだけ危険か分からん以上ダメです」


「なっ、妾とて役に立つぞ!」


「ハァー。戦姫、悪いけど足でまといだよ」


「くっ」マリーダの一言に、殿下は顔を顰めた。


「そうですクシャーナ王女殿下! 危険過ぎます。ここは、ルド・ロー・アスと紅き三ツ星に任せるべきです!」


「姫様、残念ですが私達では足でまとい。我が儘を言ってはなりません」


「んん、・・・・・・・・分かった」


 殿下は説得に応じ、迷宮への探索を諦めた。しかし、その手は強く握られていた。恐らく、自分の弱さが許せないのだろう。


「それじゃあ頼んだよ。解決したなら報酬もたんまり出すからね。フィオとリジーも今回の件を解決したら、A5ランクからS1ランクにあげてやるよ」


「やったですぅ! とうとうSランクですぅ!」


「A5でずっと止まってたし。これで姐さんと同じSランクだ」


「マリーダもS2ランクからS3にあげてやるよ」


「Sランクになった時点で、私はそこまでこだわって無いけどね。ルドは・・・・・・・・」


「何だ? まあ、俺はもうあがらんしな。マリーダと同じでランクにこだわって無いし」


「あのぉー、S1とかS2とは?」


「うむ、SランクはSランクなのでは?」


 リサーナと殿下が、ランクにつく数字が気になり聞いてきた。


「ランクの段階さね。数字があがるとランクがあがっていくしくみだよ。SABCDEFのランクを更に五段階で表記しるさね」


「うむ、なるほど! では、ルド殿は・・・・・・・・」


「俺はS5ランクですよ。殿下」


「さすがはルド殿、最上級なのだな」


 実はこの方式、俺は好きじゃ無い。だってA5ランクとか、いい肉何かの表記の仕方じゃん。普通にSランクでいいと思う。


「って、言うか! 報酬の件はいいから、さっさと迷宮に行くぞ。時間が惜しい」

 

「だな。フィオ、リジー! 行くよ」


「はいですぅ」「了解姐さん」


「そんじゃあ行って来ます」


「ルド殿・・・・・・・・お気をつけて」


「心配いらないですよ殿下。サクッと片付けてきます」


 オッサンと紅き三ツ星は迷宮に向かう。ここからオッサンの進撃が始まるのであった。



 その頃、伯爵の甥っ子は・・・・。


「何だと! あの女・・いや、あの方が本物の王女殿下・・・・」


「どうしましょう門兵長! このままだと俺達は」


「くっ、ししし、心配無い。叔父上がな、なんとかして」


「そ、そうですよね。何たって門兵長は伯爵様の甥っ子」


「見捨てる何て・・・・」


「でも罰が与えられるのでは・・・・」


「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」


 自業自得のすえ、ざまぁされるのも時間の問題だった。



誤字などがありましたらご報告ください。

少しでも面白いと思いましたら☆下さい。

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