サローニカの冒険者ギルド
「お、鬼の衛兵隊長が土下座を!」「一体なにが!」
「まさか本当に王女殿下なのか?」「王女様・・・・」
「「「「「ははぁーー!!」」」」
衛兵隊のみんなが、一斉に土下座をした。
「・・・・なあ、リサーナ。殿下に拝謁する時って土下座なのか?」
「いえ、片膝をついて手を胸に置いてするのが普通です」
「・・・・なあ、早く止めた方がいいんじゃ無いか? 殿下が凄い困ってるぞ。と言うか恥ずかしそうにしてるが?」
「これで姫様も一つ成長しますね」
・・・・何がどう成長すんだよ?!
「みんな! どうか頼むから頭をあげてくれ」
「「「「「へへぇぇーーー!!」」」」」
衛兵隊のみんなは、声をかけられ更に平伏した。それは土下座をさらに超える土下座。スーパー土下座と呼べるモノだった。
☆☆☆
ようやく、場が落ち着いた。落ち着いたのだが、みんな目の前の天上人に、小さくなっていた。
「ルルルル、ルド。どどどどど、どうしたら・・」
「取り敢えず、グランシェル伯爵に連絡したら?」
「そそそ、そうか! ダダダだ、誰か! 伯爵にお知らせしろ!」
ウゴールさん・・・・大丈夫・・・・かな?
「ルド、さっさと行こうぜ。馬鹿に絡まれた所為で貴重な時間が無駄になる」
マリーダが親指で、門を指差して、さっさと行こうと言ってきた。確かに。せっかく、クリュレミアに送ってもらっのに、こんな所で道草を食ってる暇は無い。
「あぁ、行こう。ウゴールさん! 入っていいよな?」
「んあ?、あぁ勿論だ! さあ、ここか、こちらだです。ででで、殿下」
「うむ、では行くぞ」
平身低頭で殿下を案内するウゴールさん。酒を飲んで仲間とどつき合う姿しか見て無い俺としては・・こんな一面があったのかという感じだ。
「ルド殿、どうかされましたか?」
「リサーナ。うーん、嫌何と言うか・・・・昔馴染みの見た事無い一面を見て、何かこう・・・・」
「ガッカリしたと?」
「ガッカリと言うより・・面白いに近いかな? 酒の肴になりそう」
「肴になりますかそれ? まあ、陛下の恥ずかしそうに赤面する姿なら、いい肴にならない事も・・・・」
何を言ってんだリサーナ? オッサンは敢えて、つっこむのを辞めた。オッサン曰く、つっこんだら負けな気がするとの事らしい。
「おーい、ルドさーん行くですぅ!」
「リサーナさんも早くー!」
「ルドー! 早く来なー!」
「ルド殿! リサーナ! 早くこーい!」
「殿下達が呼んでます。行きましょう」
「あぁ、そうだな」
「ととと、所でルド! ととと、取り敢えず、伯爵の所にお連れすればいいのか?」
「いや、ギルドに案内すればいいんじゃないか? 迷宮絡みで来てる訳だし」
「さささ、そうか! よしではギルドへ!」
俺達はウゴールさんを先頭に、冒険者ギルドへ急いだ。
サラーニカの街、正門前。
「くっ、我等を馬鹿にしおって・・ぐっ、痛たた」
「しかし門兵長。本当に殿下でしたら我々は・・」
「馬鹿者! 殿下が歩いて、王都からこられると?! あれは絶対に偽物だ! そうだ! この事を利用してウゴールの奴を・・・・あの平民あがりを・・ぬはっ、むははっはっ」
(コソ)「おい、誰かあの馬鹿の事を衛兵隊の連中に連絡しろ」
(コソ)「俺、衛兵隊に知り合いが」
(コソ)「よし、そいつに伝えろ。馬鹿がまたやらかしそうだと」
(コソ)「はい、直ぐに伝えてきます。巻き込まれたく無いですし」
(コソ)「まったくだ。まあ、あの人が本当に王女殿下なら、馬鹿も取り巻きも終わりだろうけどな」
(コソ)「さすがの伯爵様も、甥っ子とは言え今回の事は許さないでしょうね」
(コソ)「それはそうだろう。庇えば、自分が危なくなるからな」
「ウゴールめ! 目にもの見せてやる! はぁーはっはっははっはっは!!」
馬鹿は笑うのであった。彼女が本物の王女と知らずに。
そして平民の門守衛兵達は、ようやくちゃんと業務がこなせるようになると、内心喜んでいた。
☆☆☆
「ここが、サローニカの冒険者ギルドか!」
「ははは、はい! そそそ、そうでごごご、ございます」
「ウゴールさん、落ち着けって」
「おおお、俺は、おおお、落ち着いいる!」
声が震えてるよ。ウゴールさん。
「王都より大きいですね」
「リサーナさん、サローニカは迷宮がありますですぅ」
「そうそう、迷宮がある街の冒険者ギルドは、所属してる冒険者が多いから」
「そうなのですね」
リサーナが成る程と頷いた。
「ほら、さっさと入るぞ。所でルド・・・・その人大丈夫か?」
殿下を前にして、小刻みに震えるウゴールさん。その様子に思わずマリーダが心配して聞いて来た。
「大丈夫・・・・だと思う。ウゴールさん。ここまでいいですよ」
「いいい、いや! そそそ、そう言う訳には」
「はあ、まあいいですけど・・。よし、さあ、入ろう。ばあさん居るかな?」
「居るだろ。まだ引退したって聞いて無いし」
「絶対、居るですぅ」
「きっと、デカイ声で指示でもだして「さっさと動きなクズども!!」
リジーがギルドの扉を開けると同時に、罵倒する声が辺り一体に轟いた。
「「「「相変わらずだな(ですぅ)」」」」
ギルド内では、白髪のおばあさんが冒険者達に檄を飛ばしていた。俺はばあさんに近づいて声をかけた。
「おーい、ばあさ「そこ! 酒何て飲んでないで働きな!」
「ばあさんて「おい! 頼んだ資料もってきたな!!」
「だから、ばあさ「迷宮の一階に調査に出した連中はどうした?!」
「だ・か・ら! ばあーーさん!!」
「さっきからうっさいねぇ!!」
俺の声がやっと届いたのか、ばあさんは振り向いた。と言うか、うっさいとは何だうっさいとは! ばあさんの声の方ざうっさいよ!!
「・・・・おや? ルドじゃないか! それにマリーダにフィオ、リジーも。何で居るんだい?」
王都に居る筈の俺達が居るのが、とても不思議だったのか、ばあさんは目を丸くして驚いた。更に、ルドと言う名前を聞いて、ギルドホールにいたギルド職員や冒険者達が一斉にこちらを見た。
「・・何でって、迷宮が大変だって言われて、王都から駆けつけてたんだよ」
「はあー? 王都には連絡はしたが、まだ連絡が着いたくらいだろ? 何でこんな速く?」
「あぁ、連絡が来たのは昨日だったが・・・・まあ、ベゴン山脈を真っ直ぐに突っきったたからな」
「はぁぁぁぁぁあ? ベゴン山脈を突っきったぁ? 相変わらず、とんでもない子だよ。しかし、真っ直ぐに来たとしても、速すぎるだろ?」
「まあ、ちょっと裏技的な?」
呆れた様子でばあさんが俺を見た。そして、マリーダ達に目をやった後、殿下の方を見た。
「おや、この子は・・・・」
「お初にお目にかかる。第二王女、クシャーナだ」
「私は姫様の側近。リサーナです」
ばあさんは二人の挨拶に、さほど驚いた様子は見せなかった。
「おやおや、戦姫かい。また、ルドはとんでもないのを連れて来たねぇ。あぁ、言っとくが会うのは初めてじゃないよお姫さん」
「えっ? 何処かでお会いした事が・・」
「まあ、覚えて無いだろうね。姫さんがまだ小さい時にね」
ひゃっ、ひゃっ、ひゃつ。と思い出し笑いをするばあさん。見た目は魔女って感じなので、笑い方も合わさって少し怖い。
「でも、何でばあさんが殿下と?」
「正確には、姫さんの姉。ユリシアーデ姫に拝謁した時にね」
「姉上とですか!!」
「あぁ、そうとも。ユリシアーデ姫は、私の弟子だからね」
「「「「「「えぇーーー!!」」」」」」
マジか! 衝撃の事実!
「まさか、メルキオスの魔女と言われたばあさんに弟子がいたとは! しかも、ユリシアーデ王女殿下って!」
いや? あり得るか? ばあさんは一応元Sランク冒険者だったし。
「そう言うルドは、ファルガスのじじぃの弟子だろう。そう言えば、あのじじぃはまだ生きとるのか?」
「口が悪いよばあさん。仮にも元旦那だろ」
「「「「「な、何だってぇーーーー!!」」」」」
オッサンが、更なる事実をぶっ込んだ。
「あれ? 知らなかった? 結構有名な話しだけど」
「知らんぞそんな話! 妾は姉上の話しだけでも驚いたと言うのに、ファルガス殿の元妻?!」
「姫様、私も初耳です。ですが、弟子の件ならまだ分かります。ユリシアーデ王女殿下は魔法にたけておりましたから」
「衝撃の事実ですぅ!」
「有名? 全然聞いた事無いっす!」
「おい、ルド! それ本当か!!」
皆が俺に詰め寄って聞いてくる。あのぉー、もうちょい離れてくれません。美人のみんなが詰め寄られると、他の男性冒険者が凄い睨んでるんですけど。
「けっ、昔の話しはよしとくれ! 気分が悪くなる!」
「あっ、すまん。って、こんな事話してる場合じゃ無かった。ばあさん! 迷宮の様子は?!」
「「「「「あっ、そうだった」」」」」
「まったく・・・・。ハァーー、現状を説明するとだね」
「「「「「「ゴクリ」」」」」」
「分からん!!」
「「「「「「はあぁぁぁ?!」」」」」」
「何だよばあさん、分からんって」
「何の情報も掴めて無いんだよ。正直言って、何がどうなってるやら」
一体何が置きてるんだ? ここの迷宮は、難易度は高めではあるが・・・・コレと言って問題は出て無かった。メルキオス迷宮をよく知るばあさんが分からんって、どうなってるんだよ一体。
皆が沈黙して、ギルド内が静まり返った時、扉が開いた。
「クシャーナ王女殿下!!」
「うむ?」
「クシャーナ王女殿下!! オーガスタ・フォン・グランシェル。只今罷り越しました!!」
息を切らし、慌てふためくグランシェル伯爵が扉を勢いよく開けて入って来た。
その頃、メルキオス迷宮二十五階層。
???「きしゃぁぁぁぁぁあぐぎゃぁぁぁぁぁ」
迷宮の奥底で・・・・何かが蠢いていた。
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