オッサンの朝は大変?
「チュンチュン」
太陽の光が、窓から差し込み。小鳥の鳴き声で、オッサンは目覚めた。
「うんぐ、んが? あぁ、朝か。」
体を起こし、ぐーっと背伸びする。『ポキッ、パキッ』
ほんと、オッサンの体は朝が大変なのだ。世のオッサン達なら分かってくれるだろう。
「・・・・顔でも洗うか」
井戸は外の道路沿いにあるが、俺は魔法でヒョヒョイと水を出せるので、洗面台で桶に水を溜め顔を洗う。
「フウー、スッキリしたぁ。今日はオフだしどうするか?」
うーんと洗面台で考えるが、『グゥー』とお腹が鳴り、結局「メシ食ってから考えよう」となった。
「メシメシ・・・・・・・・」
オッサンは絶望した。何故なら・・・・。
「・・・・何にも無い」
しまったなぁ、買い出し行くの忘れてた。どうするか?
・・・・あっ、そうだ。久々に朝の屋台に食いに行くか。
急いで支度し、財布を持って玄関を出る。王都は霧がかかって幻想的な街並みだ。何処の家も、朝食の支度の為、煙突から白い煙が出ている。
「屋台は、ロンデール通りだったな」
まだ、少し早いが営業してるだろ。多分・・・・。時間で言うと午前六時くらいなんだけね。
ロンデール通りに到着すると、やはり早すぎた様で、開店準備の真っ最中だった。
「あぁ、やっぱ早かったか」
「あれ? ルドかい?」
後ろから急に名を呼ばれ、振り返ってみると、若い頃から世話になっていた、屋台のおばあちゃんがいた。
「おっ、ポルナばあさん。久しぶりだなぁ」
「そりゃコッチのセリフだよ、本当に久しぶりだねぇ、元気してたかい?」
「ボチボチさ」
二十代の頃は、よく此処で食べていた。此処で朝食を食べて、冒険者ギルドの依頼された仕事に出かけていた。
「ところで今日はどうした?」
「いや、久しぶりに、屋台でメシ食おうと思って」
「久しぶりにも程があるだろ。十年近くも顔出さずに」
「はっはっは、すまん。忙しかったもんで」
「ふん、まあいいさね。お前さんの活躍は聞いていたしね」
十年近くも顔を出せなかったのには、訳がある。二十代後半になると俺もそれなりに有名になり、国のあらゆる地域やはたまた他国からも依頼が来たりしたのだ。最も忙しかった時は、王都に一ヶ月と居られなかった事すらあった。
「久しぶりにウチの料理、食べていきな、まだ開店してないけどね」
「じゃあ、そうするよ」
「はいよ!」
ポルナばあさんは、屋台開店の準備を始めた。俺はお客用の椅子に腰掛けて、作業を見ていた。五分程で準備が終わり、客に出す料理の支度を始めた。
「うーん、良い匂いだ。懐かしいな、ポルナばあさんの腸詰めスープ」
「懐かしいも何も、コイツの作り方を教えたのは、アンタだろ」
「教えたと言うより、ばあさんのスープにソーセージ入れたら、もっと美味しくなるかもと、思っただけだし」
「はい、できたよ! 熱いウチにどうぞ」
「おっ、美味しそうだ。頂くよ。ズズゥ・・・・モグモグ・・・・旨い、凄く旨いよ!」
「当然さね」
その後、朝メシを食いながらポルナばあさんと昔の話で盛り上がった。それなりに有名な俺が、旨そうに食べていた事もあってか、屋台に客がひっきりなしやって来る。
「ポルナばあさん、客も多いしそろそろお暇するよ」
「まいど・・・・それにしても、客がいつもの三倍はいるねぇ」
用意されてる椅子は、全て埋まり、並んで待ってる人まで居る。並んで待つ光景は、異世界では結構珍しい。
「ルド坊、これからもウチに食べに来な。お前さんが来れば、いい客寄せになる」
「人を客寄せパンダにするな! いや、この場合、招き猫?」
「何をブツブツ言ってるんだい?」
「あー、何でもない。じゃあなばあさん」
「はいよ、また来な」
ポルナばあさんのメシ、旨かったなぁ。機会があれば偶に来るかな。膨れた腹をポンポンしながら、オッサンは家に帰るのであった。
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