あっと言う間に越えて
「ハァー、ハァー、ハァー。死ぬかと思った」
「だらしない。王国一の冒険者が聞いて呆れる」
「怖いものは怖いんだから仕方ないだろマリーダ!」
オッサンは絶叫系が苦手である。
「凄い体験であったな。妾は自慢したいくらいだ。うっぷ」
「私もです姫様。あっ、姫様。木陰で少し休みましょう」
リサーナがフラつく殿下に肩を貸して、木陰に連れていった。二日酔いに絶叫空の旅では仕方ない。
「あうう、吐きそうですぅ」
「大丈夫かフィオ?」
「リジーも顔が真っ青ですぅ」
フィオとリジーも四つん這いになって、今にも死にそうな顔をしていた。
「大丈夫かお主ら?」
「クリュレミア、ありがとうな。サローニカの近くまで送ってくれて助かったよ」
「気にするな。対価は貰ったしの」
サローニカとはメルキオス迷宮がある街の名だ。グランシェル伯爵領最大の街で人口三万を超える。大半の人が迷宮に関係する商売に携わっている。
「ルドよ、また遊びにくるのだぞ!」
「おう、リュリュティアもありがとうな」
「うぬ!」ちみっ子が両手を腰に置き、ペッタンコの胸を張る。かわいいので頭をナデナデしてやる。
「こら! やめぬか! うぬぬぬ」
「はっはっはっ、そう嫌がるなよ」
「ぬぬぬぬぬ」ほっぺを膨らませ抗議するちみっ子。
かわいい奴め。・・・・あっ! そうだ。
「リュリュティア、コレをやろう」
マジックバックから取り出したのは・・・・オッサン特製着ぐるみその二。
「何じゃコレ?」
「リュリュティアにやるよ。今着てるのとは別の奴だ」
「ふむ、手触りは悪くないのぉ。着てみてもよいか?」
「おう、試してくれ!」
リュリュティアは、新たな着ぐるみをゴソゴソしながら試着をし始めた。
「ふふふ、また面白いのを作ったの!」
クリュレミアが試着したリュリュティアの着ぐるみを見て、面白そうに笑った。ドラゴンの彼女達に、そもそも服の概念が無いのだが、クリュレミアもリュリュティアの着ぐるみ姿を気に入っている。だってかわいいもん。
今回のも、中々の自信作で、いい素材が手に入って作ってみた。
「どうだ!! 似合うか!!」
「おおっ、似合ってるぞリュリュティア」
リュリュティアは、モコモコの羊になっていた。
「「「「「かわいい!!!」」」」」
うんうん・・って、いつの間に・・・・まったく気配を感じ無かったぞ。オッサンの横に、いつの間にかみんなが立っていた。
「か、かわいいですぅ!!」
「モコモコしてる〜!!」
「何だこのかわいい物体は!・・・・持って帰りたいぞ!」
マリーダ、持って帰っちゃダメだからね。
「おぉーー! 何と・・・・あぁーー! ハァハァハァ。くっ、何故こんなにかわいいのだ」
「・・・・・・・・」
殿下、落ち着いて! 過呼吸になって・・・・えっ、リサーナ? 静かにしてる思ったら、リサーナは鼻血を出しながら悶絶していた。
リサーナ・・・・お前・・・・ヤバイ奴だコレ。
「何じゃお主らぁーー?!」
異様な状況に、ちみっ子はクリュレミアの後ろに隠れた。
しかし、その隠れる姿に「「「「「かわいい!」」」」」
その姿に、さらに萌るのだった。
「ハァー・・・・みんな、元気が出たなら急ぐぞ。クリュレミア、リュリュティア。それじゃあーな」
「うむ、帰る時にまた寄るがよい!」
「ルドは良いが・・・・その者等は来なくてよい」
「「「「「ツンツンな所もかわいい!!」」」」」
「ぬぬ、しゃーーー!!」
リュリュティア。その格好で威嚇しても逆効果だぞ。
「「「「「おほおぉーー!!」」」」」
ほら。
最後にモフモフを望む女性陣だが、ちみっ子は嫌に嫌がった。何とかモフモフをしたい女性陣が、王都のお菓子チラつかせたりと策を労するが失敗。そんなやりとりが三十分は続き、さすがに止めに入った。
あのぉー、俺達急がなきゃいけ無いんですが?
みんなはようやく諦めたので、クリュレミアとちみっ子は帰って行った。
「あぁー、最後にモフモフしたかったですぅ」
「ほっぺスリスリしたかった」
「なでなでも捨てがたいですね。姫様」
「妾はギューがしたかったぞリサーナ」
「・・・・娘にしたかった」
「「「「「えっ!!」」」」」
マリーダがぶっ込んでくるとは・・・・。
「「「「それは・・・・悪くないかも」」」」
オッサンは・・・・ちょっと、みんなから少し距離をとった。何となく・・・・距離をとった。
誤字報告ありがとうございます。助かります。
何とな書き始めて三ヶ月程が経ちました。少しでも面白いと思ったら☆をください。あると結構モチベーションになります。




