戦姫、一緒に来るってよ!
「ルド殿、其方は本当に規格外であるな」
「姫様、この場合、規格外の話で済むものでしょうか?」
「まったく、化け物にも程があるだろ! ルド、頼むから大概にしてくれよ」
「ルドさんはきっと、人の姿をした化け物ですぅ。ドラゴンとかベヒーモスに生まれる筈が、間違って人間としてうまれちゃったんですぅ。きっとそうですぅ」
「ルドさん・・・・姐さんやフィオの言う通り。化け物っぷりも程々にしてくれよ。もう、お腹いっぱいなんだけど」
皆んなが酷い事を言ってくるんだが! すんごい傷ついたぞ! 化け物、化け物って、俺は人間だ! 元も人間だし今も人間だっつうの!
「おい、ルドが化け物なのは置いといて」
おい、置くなギルマス!!
「兎に角、グランシェル伯爵領に早く行け! お前の化け物っぷりについては、後でゆっくり聞いてやる!」
「引退については?」
ちゃんと言質を取っておかねば、後で有耶無耶されちゃ困る。
「・・・・時間が無いぞ、紅き三ツ星も準備を急げ! ルドもさっさと準備しろ!」
「おい、せめてこっち見ろ」
顔そらしてんじゃねえ! 引退について聴く気ないだろ!
「取り敢えず、今は緊急事態という事で引き受けるが、引退については後でちゃんと聴いてもらうぞ!」
「・・・・分かった。・・・・多分な(ボソ)」
「おい!」
このタヌキじじぃ! 絶対俺は引退するからな!
「ルド、引退の話は今は置いとけ。今は、メルキオス迷宮の調査が先だ。紫電の鴉の安否も気になる」
「あぁ、分かってるよマリーダ。・・・・ハァー、一時間後に東門の前に集合って事で」
「おう、一時間後に」
「はいですぅ」
「ルドさんと冒険かぁ〜。楽しみ!」
「リジー、油断しちゃダメですぅ」
「分かってるって!」
「じゃあマリーダ、一時間後に」
「あぁ、一時間後」
「はいですぅ」
「了解っす」
「うむ、妾も分かった!」
・・・・ん? 何で殿下が返事してる?
☆☆☆
コレもいるかな? 迷宮ならコイツ有った方が・・・・一応コレも持っていくか。
俺は家で、必要な物をマジックバックに詰め込んでいた。
メルキオス迷宮か、ダンジョンは五年振りくらいか。あそこは色々と厄介なんだよなぁ〜。ん? おっ、そろそろ時間だ。急がないと!
慌てて、家を飛び出して・・・・おっと、鍵閉めないと。
一旦引き返して鍵を閉めた時、ある事を思い出した。
・・・・アイツの領域を通るとしたら・・・・アレ必要だな? 東門に行く前に、買って行くか。
「すまんマリーダ、遅れた!」
「遅いぞルド! 何やってる!」
「いやぁ、ちょっと買う物が・・・・・・・・所でマリーダ、あれはどう言う事だ?」
「私に聴くな!・・・・ついて来る気なんじゃないか?」
「おいおい」
其処には、完全武装のクシャーナ殿下が立っていた。
そのいでたちは、まさに戦姫。って何で居るの? リサーナ! ってお前も完全武装? 何やってんの! ん? エバンさん?
「エバンさん、ちょっとこっちに」
手でチョイチョイと合図して、エバンさんを呼んだ。
「ちょっと、どうなってるんですか!」
「いやぁーそれが、姫殿下が行きたいと」
「いやいや、其処はちゃんとダメって言わないと」
「そうなんですが・・・・チラ・・あんなに楽しみにしている姫殿下にそれを言うのはちょっと」
チラっと俺も殿下を見る。満面の笑顔で、此方を見ていた。うぐっ、確かにあれは言いにくい。だがしかし!
「エバンさん、遊びじゃないんですよ。危険なんですって! 止めないと! 陛下は許可を出したのですか」
「えーと、ルド殿に伝言が・・・・読みますね」
そう言って、エバンさんは懐から手紙をだした。
[ルド・ロー・アス殿。我が娘が、わがままを言ってすまん。されど、これも王族の務めとも言えよう。すまぬが連れて行ってやって欲しい]
ヴァラデウス・ベレディクト・イスルカ
追伸 不束な娘だが宜しくたのむ。
「以上です。ルド殿、私からも宜しくお願いします」
「え、あっ、はい?」ん? 何か最後のおかしくないか?
「って、いや、だから危ないって! それに、手紙の最後方おかしくないですか?」
「えっ? あぁ、子を思う親心ですよ」
そう? なのか。まぁ、子どもおらんから分からんが。でも、どうしたものか。チラ・・・・ハァー。ちゃんと言った方がいいよな。
「殿下、申し訳ありませんけど連れて行けませんよ」
「な、何だと! しかしルド殿、私は足でまといになどならぬぞ! それに、王族として今回の問題に対処せねば」
「殿下、王族と言う時点で問題です。何かあったら責任が取れません。リサーナも黙って無いで何とか言ってくれ」
「私は殿下のお側に着いて行くだけです」
「おい」
「ルド殿頼む。決して足でまといにはならぬから・・・・・・頼む
!」
ジーーー、「・・・・」ジーーー「・・・・」
「・・・・・・・・んー、もう! 分かりました。だからそんなに見つめないで下さい! 但し、俺の言う事をちゃんと聴いて下さい。それと、連れて行くのは殿下とリサーナだけです。そちらの、殿下の護衛は置いていきます」
「お待ちを、さすがにそれは!」
「エバンさん、森の中をぞろぞろと行軍してたら魔物に発見され易い上に、到着するのが遅くなります」
「確かにそうだな。さすがに二、三十人も連れて行けないな」
「ふむ、Sランク冒険者のルド殿とマリーダ殿の意見だ。飲もう」
「姫殿下! ですが危険です!」
「こちらは無理なお願いをしているのだ。それくらい構わぬ」
「しかし!」
「エバン殿、姫様は私が命かえましても」
「ぐっ、分かりました。リサーナ殿、姫殿下を頼みます」
「はい」
ハァー、こりゃ大変な事になったな。殿下に何かあったら俺死刑とかかな?
「まぁ、ルドさんが居るから平気でしょ?」
「そうですぅ、一万匹のゴブリンやオークの群れに襲われても平気だと思うですぅ」
「いやいや、さすがにその数は・・・・」
「ルドさん、無理ですぅ?」
「・・・・いや、前にクォルカの迷宮でゴブリンが大量発生した時、ルド一人でそのくらい倒してたろ」
俺は顔を逸らした。あぁ〜、あったそんな事!
「ほう、そんな事が! ルド殿についての話は面白い。マリーダ殿、他にも色々教え欲しい」
「別にいいですよ殿下」
おい、マリーダ! 殿下に変な事言うなよ!
「と、兎に角、出発しよう。途中までは馬車で移動する」
「あぁ、分かったよ」
「うむ、分かったのだ」
ハァー、疲れるなぁ。出発前からどっと疲れた。
「所で、ルドさんは何で遅れたんだ?」
「リジー、きっと今回の依頼に役立つ凄い物を用意してたですぅ」
「あぁ、成る程! さすがルドさん」
「別にそんな物用意しとらんぞ。酒を買ってて遅れただけだ」
「「「「「お酒?」」」」」
「何故お酒なのですか?」
不思議に思ったのか、リサーナが聞いてきた。
「ちょっと使い道があるんだ。自分達で飲む為じゃないぞ」
?????
皆、首を傾げて訳か分からないという顔をしていた。
コレ持って行かないと怒るんだよなぁ〜アイツ。
その頃、王城にて。
「よろしかったのですか陛下。クシャーナ殿下を行かせて」
「ふむ、あの者なら大丈夫であろう。それに、これを機にクシャーナを・・・・ふおっほほ」
「成る程、しかし殿下自ら申し出るとは思いませんでした。
エバンの言う通り、案外上手くいきそうですな」
「ふむ、昔からおの子の様に育ったクシャーナがのぉ。まるで恋する乙女のようになるとはのぉ」
「クシャーナ殿下も大人になったと言う事でしょう。しかし、本当に何かあったらどうするのです?」
「うむ、彼ならクシャーナを危険に晒す真似はせぬし、ある意味、彼の側が最も安全じゃろ。それに、もし怪我でもした時は、傷ものしたから責任をとれと言えよう。大怪我は困るが」
「さすが陛下。しかし、殿下にルド殿を籠絡出来ますかね」
「まぁ、慌てずとも何とかなるじゃろ」
「はい、殿下の美しさなら」
「「はっはっはっ」」
オッサンの知らない所で、謀略は進んでいた。絶世の美人王女をオッサンに嫁がせようという。羨まけしからん謀略が!
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