表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/66

オッサンは宣言する


 帰りたいあまりに、急いで家に帰った結果。


「剣、置いて来ちゃった。どうしよう」


 気づいたのは朝になってから、それもベットの上で思いだした。


 うーーーむ、どうするか・・・・取り敢えず起きるか。


 ベットから起き上がり、洗面台へ。年々しんどくなっていく朝の日常に、なんとも言えない。冷たい水で顔を洗って、目をシャキッとさせる。


「ハァーー、取り敢えず朝メシに・・・・あっ!」


 昨日のゴタゴタで、なんも買ってなかった。今日も食いに行くか? いやでも、もう時間的に閉まる時間か?


 現在の時刻は、鐘が十回なったから午前十時。昨日、色々あった事で疲れたのか、いつも六時過ぎには目が覚める筈が、今日は珍しく寝坊した。


「んー、昼メシまで待つか。あっ、今日は報酬の支払い日だった。ギルドに顔を出して、その後メシにすればいいか」



☆☆☆



「おはようエルナ!!」


「・・・・朝からうるさい・・・・でっ、どうだったの晩餐会?」


「大変だった」


「でしょうね。疲れた顔してるし。それで、何のよう?」


「いや、何のよう? じゃないだろ。今日が依頼の報酬支払い日だろ?」


「そうだったわ。ちょっと待ってて」


 エルナこそ疲れてんじゃないか? 


「はい、これがタイラントバッファローの報酬。そしてこっちが、マジックバックの下取り料。そんで、新しいマジックバックと・・じゃあさっさと確かめてサインして」


「なあ、年々俺に対する扱いが、酷くなっていってる気がするんだが?」


「気の所為、気の所為」


 いやいや、絶対そうだって! そもそも、初めて会った時はルドさんだったのに、今じゃ呼び捨てじゃんか!


 まぁ、いいけどさぁ。


「ルド・ロー・アスっと」


 ふむ、いい出来! やはりサインはこう・・スラスラっと書くとカッコイイんだよね。何気に、異世界の文字の中で一番練習したのが名前だったなぁ。名は体を表すならぬ、字は人を表すみたいな? 


「あんたさぁ、その図体で何でこんなに達筆なの?」


「わぁ、ほんとだぁ〜。ルドさん字の綺麗」


「リズ、あんたルドさんに教えて貰いなさいよ」


「何で私?」


「リズの字、汚くて読めないからよ!」


「メーアだって人の事言えないじゃん! たまに誤字とかあるし!」


 エルナの背後で、口喧嘩を始めた二人。あーだこーだと、互いに言い合い。取っ組み合い寸前だ。


 おい、そろそろ止めろ。エルナが怒りだす前に! だが、遅かった。


「リズ! メーア! あんた達うるさい!!」


「「ひゃい!!」


 二人はぴーんと、背筋を真っ直ぐに伸ばし、綺麗な気をつけいをした。


「さっさと仕事に戻る!」


「「了解です!!」」


 リズとメーアは、腕の角度まで揃えた綺麗な敬礼をエルナに向かってした。二人の目には、鬼教官を見るような畏怖と敬意が入り混じっていた。


 ・・・・エルナ、二人に一体何をしたんだ? 


「何か?」と、こっちを睨みつけてくる。


 受付嬢がそんな顔すんな! と言うか睨むな! 


 俺はエルナ目をしっかり見て・・・・「いえ、何でもありません」と言って目を逸らした。


 この時オッサンは、四十年近い人生を二度も生きた経験から。エルナを絶対怒らせていけない人として、認定したのであった。


 怖かった。どんな魔物よりも、本当に怖かった。



「何だ騒がしい。一体何の騒ぎだ?」



 声の方に目をやると、髭を生やした小太りの男が、階段から降りてくるのが見えた。ビシッとスーツを着たその男の正体は・・・・王都冒険者ギルドのギルドマスター、ロウゼンだった。


「何だ、ギルマスか」


「何だとは何だ! ギルマスに向かって! って、ルドか。

だったら丁度いい、お前に依頼だ」


「・・・・断る!!」


 オッサンは断った。


「そうか、依頼内容はベクター伯爵領のって、断る? 依頼をか! どうして?!」


「断ると言ったら断る! 俺ばっかり働かせるな!」


「働かせるなって、お前以外にこの依頼をこなせる奴が居ないんだ! しょがないだろ!」


「しょうがないで済むか! 最近更に、俺への依頼が増えてきてる。休みが殆どねぇじゃねぇか!!」


 俺は拒否する。断固として拒否する。


「ルド・・・・働ける内が花だぞ?」


「だから、働き過ぎだっていってんだ!!」


「ちょっとルド、あんまり大きな声出さないで! ギルマスも!」


「エルナ、俺は決めたぞ」


「何をよ?」


「俺は引退する。するったらする!!」




「「「「「「「「何だってえぇぇぇーー!!」」」」」」」


  

 その日、王都の冒険者ギルドホールに、激震が走った。



 その頃、姫殿下は・・・・。



「なに? ルド殿が剣を忘れただと・・・・」


「はい、姫殿下」


「姫様、良かったですね。またルド殿に会える口実が・・」


「にゃにをいってりゅのだリサーナ! わりゃわは、べちゅに・・・・」


『『分かりやす』』


 姫殿下は今日も、分かりやす過ぎです。

 

 姫様・・・・少し心配になる分かりやすさですね。


「うにゅぬぬ」と、真っ赤になりながらモジモジする殿下。

小動物系のかわいさがある。所々がビックだけど。


 今日も姫殿下は、可愛らしいですね。と孫娘を見る様に暖かい視線を送るエバン。それにたいして・・・・。


 さすが姫様、イジリがいがあります。ルド殿もルド殿でイジリがいが・・・・ぬふふっふ。


 一人だけ、変なベクトルで殿下とルドを見ていた。



誤字報告ありがとうございます。助かります。

少しでも面白いと思ったら☆を下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ