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「ボク、賢い?」



 スライム自体がどういう構造で話しているかはわからないけれど、初めて会った時とは違う気がする。こちらの言葉への理解度、話し方が良くなっている

 特に話し方。言うなれば舌っ足らずな子供のようだったのが流暢に話し出したような

 行動も少し違う気がする。この部屋以外での行動を見たことがないからはっきりとは言えないけれど



 ――でもどうして急に賢くなったのかしら



 モンスターの間で何かあったのかも知れない。もしかしたらスーちゃんが外で何か食べたとか。他には――目についたバスケットを凝視する

 スーちゃんはこれを昨日食べた。違う種類もあるけれど、今日も食べた。振り返ってみればスーちゃんがこんな風に話し始めたのは食べてからな気がする

 明白ではないからどれも気がする、だけど

 スーちゃんの体をテーブルに置いて、バスケットの中に残っている葉を手に取る。スーちゃんに向ければスーちゃんは体内に取り込んで消化した



「……スーちゃん、何かお話してみて?」

「お話? 何の話、する?」

「今日あった事とか……」

「うん、わかった!」



 了承したスーちゃんは今日これまでの事を話し出した

 城内の散歩をしていると、他のモンスターに出会ったらしい。残版処理や荷物運び、ドアを開けたり補助など色んな指示を受けてそれをこなしたのだと話してくれた。そういった雑用は毎日で、スーちゃんだけではないらしい。最下級モンスターは下っ端扱いなのね。同じスライムと話したりもするけれど大体内容は同じとのこと


 お互い跳ねながら一言で報告しあう姿が思い浮かんで和んだけれど口にはしないでおいた

 一日が始まってからまだ間もないからそんなに出来事はなく話はすぐに終わった。でも確信した。スーちゃんは賢くなっている。今のスーちゃんにきちんと話せば協力してもらえるかも知れない



「スーちゃん、私外がどうなっているのか知りたいの。手伝ってもらえる?」

「手伝う?」

「そうよ。噂話とか、モンスター同士の話とかを聞いたら私にその内容を話してほしいの」

「……わかった!」



 話した内容を呑み込んで処理するような間を空けた後にスーちゃんは承諾してくれた。そっとスーちゃんを降ろすと小さく跳ねたあと扉へと向かった。見送ろうと出入り口まで近付く。開けてあげたいけど私じゃ開けられないので、スーちゃんが張り付いて開けるのを見ていた

 扉が開き、部屋の外が見える。今日は遠くにモンスターがいるのがわかって少し身を引いた



「スーちゃん、気をつけてね」

「わかった、気をつける!」

「……本当にわかっているのかしら……」



 声を潜めて注意を払うように言っておくと元気な返事が返ってきた

 スーちゃんを送りだして、扉が閉まった音で息をつく。幾分賢くなったとはいえ周りのモンスター達にはもっと知能の高いモンスターがいるし、少し心配だった


 それでも今の私が頼れるのはあの子だけ


 私が出来るのはあの子の無事を祈る事と、様子を見に来ている他のモンスター――リザードマンの前で下手を打たないようにいつもどおりに振る舞う事

 初めて部屋に来た時に見た大きな鏡の前まで向かう。鏡に手を宛て(わたくし)と目を合わせた。表情は引き締まり気合のこもった意志ある瞳に、胸を撫で下ろして笑みを浮かべた



 ――スーちゃんからの報告を待ちましょう




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