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色々と整理のために、再開します。

不定期ですが、早めにエンドマークに辿り着こうと思ってます!

……思ってます……○| ̄|_

 先代勇者グレンドルフが放った鑑定系のスキルを軽く払いのけたせいか、案の定、凄く警戒されてしまった。彼の頭の中では、きっと真っ赤なレッドランプが明滅しまくってるだろうね。

 そんな彼を一時放置して、私とリュースはこそこそと情報交換を進める。

 リュースの話では、ルードや神獣カーバンクルと相談の上、魔物二匹は人の目がすくない山や森を重点的に、人間の居住地区はリュースがと手分けをして捜索することになった。連絡を取り合いつつ包囲網を狭めながら、最後の捜索地パレストに来てみたら。


「彼がいた。動きが妙だし、尾行しながら【聖鑑(ホーリー・ギヴレス)】をかけてみたら先代勇者だったってわけ」


 【聖鑑】とはなんぞや? と思って訊いてみたら、なんと妖精族が使える鑑定系の最上位スキルなんだとか。聖なる神の鑑定ってことらしい。

 それを使って正体を見破ってみたものの、相手の様子がおかしい。どうも教会や王城を偵察しているみたいなんで、しばらく監視しようかと考えている最中に彼に発見されてしまったと。


「話してみたらさ、城の地下に囚われている女性を助けるために下調べしてるって」

「え……?」


 私の顔色がさっと変わったのを見て、リュースは眉根を寄せた。

 リュースに報告しようと思って来たんだし、グレンドルフが関係しているとなると、丁度良かったのかもしれない。


「何か、あったの?」

「彼を呼んで、借り家に来てちょうだい。その女性に関する情報をお伝えするからって」

「う、うん」


 リュースは私の様子を窺いながらそろそろと離れて行く。それを見送って、すぐにパレストの城下にある借り家に転移した。

 インベントリの中を覗いたけれど、最近は忙しくて碌なものが残っていない。いつもリュースが用意をしてくれてたからなー。

 仕方がないので、ここに常備しているお茶にするかと動いたところに、リュースとグレンドルフが現れた。

 間近で見る先代勇者グレンドルフは、赤茶けた長い髪に琥珀色の瞳だ。【偽装】しているのは判っているけれど、この警戒心バリバリの鋭い目付きと容貌になんとなく見覚えがあるような気がする。


「私はアズ。リュースの師匠で保護者。あなたと同じく異界から召喚された者よ。元勇者グレンドルフ。さあ、お掛けになって」

「異界召喚者だと?」


 あ、この声にも聞き覚えがある。

 確信が持てた私は、素知らぬ顔で彼に向かいの席を勧め、リュースにお茶の用意を頼んだ。

 後は、どこで会ったかを思い出せれば……うーん。


「ええ。ただし、聖女の召喚に巻き込まれてだけれどね。そして、現在は大樹海の魔女アズ。お見知りおきを」

「巻き込まれて……それが、魔女?」


 この顔にこの声で、髪が銀髪に目を碧眼――って、ああ! 確かこの人、私がフェルンベルトのお城から逃げ出した時に出会った男だ。

 初めての空中飛行で酔っちゃって落ちた時、私がクッション代わりにしてしまった相手。


「魔女はともかく、この姿に見覚えはない?」


 私は放置していた老婆スタイルを【変容】スキルで、召喚直後の姿に変えてみた。あの時は、こんな装備を付けてなかったけれどね。


「お前は、フェルンベルトで会った……俺の上に落ちてきた女だな!」

「やっぱり覚えててくれたのね?」

「よく覚えてるさ。何もかもおかしな女だったからな」


 手際よくお茶を淹れていたリュースが、彼の一言でプッと噴き出す。流し目でひと睨みし、イラっとした気持ちを抑えて咳払い。


「おかしな女でごめんなさいね。確かに、不審だったわよね、私」


 服装も容姿も微妙だわ、いきなり落下してくるわ、挙句の果てにスパイみたいな言い訳をしてたしねぇ。


「なるほどな。あの時、逃亡中だったのか」

「ええ。逃げ出すために初めて魔法を使ったから、飛行スキルで飛び出してあの為体よ。あの時は、本当にごめんなさいね」

「いいや。それで色々と辻褄が合う。俺はあの時、聖女召喚が行われる予定だと情報を掴んでいてな、どう忍び込もうか考えていたんだ」


 うわーっ! ここで恋愛脳な女の子なら「運命ね♡」なんて目を輝かせるんだろうけれど、まったくそんな気分にならない私。

 枯れてるなー。


「あー……あの後に、侵入してみたの?」

「侵入したはいいが、大混乱の真っ最中だったぞ? お前が逃げたからだよな?」

「逃亡というより、第三者に魔法で拉致されたって状況を偽装して逃げ出したの。だから、警戒が強まったのかもね」

「……まあ、今となってはどうでもいい。どちらにしろ、あの時点では遅すぎたのだしな」


 気づけば爽やかな香りが辺りに漂い、無意識に強張っていた肩から力を抜く。

 どこで手に入れたのか、リュースは薄っすらと青い色のついたお茶を、私たちの前に置いた。ミントの香りに似ているけれど、なんとなく甘い匂いもする不思議なお茶で喉を潤し、再びグレンドルフに視線をやった。


「それで本題に入るけど、お城の地下から女性を助け出すつもりなんですって?」


 自己紹介はこれで終わりと、仕切り直す。


「そうだ。以前、俺に力を貸してくれた女なんだが……」


 そういうと、グレンドルフの眼になんとも複雑な感情が浮かんだ。


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