設定
○ 異界
他のファンタジー小説などでいう、異世界と同義。
シベリアなど一部の地域では、巫師は自ら異界に赴き、そこから知識をもち帰るとされている。一説には、ルーンやラウルといった魔道は、この方法によって発見された。
○ オガム
アイルランドで、ドルイドが使用した魔道。ルーンと似ており、文字を刻むことによって、効果を生じる。
ドルイドはオガムのほかにも、呪歌を詠唱して天候や兵士の士気を操ったり、人身御供を用いて将来のできごとを予測したり、といった魔法を使用していた。だが、ドルイドが用いた魔法は全て、ドルイド教の伝統とともに、いちど断絶している。現行のオガムは、19世紀以降に再構築されたものだが、復元はいまだ不完全。
ドルイドの魔法で現存するものは、オガムが唯一である。また、オガムの体系だけでも、いちおう魔法の行使は可能。以上から、SSSはオガムのみをもって、独立した1つの魔道として扱う。
○ 陰陽道
中国から日本に伝わり、日本で発達した魔道。記録に残る範囲では、日本に伝わったのは7世紀初頭まで、さかのぼることができる。必ずしも、現実の陰陽道と同一ではない。
○ 気
文脈によって、マナと元素のどちらかを意味する。両者は容易に、双方向的に変換し得るので、区別する意義は、さほど大きくない。
中国において、呪術的なエネルギーを「気」と称することもあれば、五行の1つ1つが気であると説明されることもある。つまり中国では、「気」を物質である元素と、エネルギーの両方の意味で用いている。
特殊相対性理論の、「質量とエネルギーの等価性」とは無関係。
○ 帰神法 / きしんほう
巫術のうち、自己に神または霊を憑依させることによって、効力を生じるもの。
成功率と安全性に問題がある。
前者については、憑依する側の霊の意向次第という面があるので、技の成否について、常に不確定要素がつきまとう。対して、陰陽道・宿曜道・ルーンなどは割合い論理的で、一定の所作をとれば、安定的に魔法を発動させられる。
後者については、術者に憑依した霊が、術者の人格を乗っとる危険がある。
○ 鬼道
古代日本に伝わっていた魔道。帰神法を多用する魔道の1つ。
日本は古代より、陰陽道や宿曜道といった、他国の魔道を継受してきた。それらの魔道は日本では、憑き物落としの技術として普及・発展した歴史がある。結果、鬼道はそれらに自然淘汰されてゆき、その伝統を断絶させた。
○ 元素
あらゆるものを構成する、最も基本の要素。
魔法の法則は主観的なものゆえ、五行をもって元素とするのも、四大をもってするのも、タレスの水一元論や、ヘラクレイトスの火一元論を採るのも、誤りではない。
何かしらの物質があれば、元素は存在する。ゆえにそれをエネルギー源として、すなわちマナに変換して、魔法を発動することができる。裏を返せば、真空状態では魔法は使えない。
なお、現在の自然科学における元素の定義は、上記のものと異なる。上記の定義に該当するものは、かつて原子とされていたが、のちに素粒子にとって代わられるなど、現在も流動的である。
○ 五行
中国で万物を構成するとされた、5つの物質。具体的には、木、火、土、金、水。
○ サモンズ
霊を呼び出す魔法。
呼び出すまでがサモンズであって、呼び出された霊が術者の命に服するか否かは、サモンズとは関係がない。呼び出した霊が術者に従わず、最悪の場合その者を攻撃する可能性がある。そのため、帰神法と並んで、特に危険な魔法の1つに位置づけられる。
他のファンタジー小説、テレビゲーム、カードゲームなどでいう、召喚と同義である。
○ 式神
人が呼び出し、または創り出して使役する霊。
上記のうち、「呼び出す」行為がサモンズにあたる。
本来は、陰陽道に特有の概念である。だがSSSでは、西洋の魔術などで呼び出される悪魔や精霊なども、式神と呼ぶ。
人を呪った際は、対象者に害悪をもたらすために、式神が放たれる。
他のファンタジー小説、テレビゲーム、カードゲームなどでいう、召喚獣と同義である。
○ 四大
インド、ヨーロッパ、中央アメリカで、万物を構成するとされた4つの物質。具体的には、地、水、火、風。
○ 宿曜道
インドから日本に伝わり、日本で発達した魔道。9世紀初頭に、日本に伝来した。 必ずしも、現実の宿曜道と同一ではない。
○ 仙骨
魔法使いになれる素質。
保有する者の男女比は、文化によって異なる。日本やヨーロッパでは、女性の比率が圧倒的に高い。
遺伝性があり、近親者に魔法使いがいる者は、仙骨を発現しやすい。しかし、仙骨があると10才ごろまで免疫が育ちにくく、ちょっとした病気が命とりになることが多い。10才を過ぎると、逆に長命な傾向にある。
仙骨が発現する年齢は多様で、高齢になってから突如現れることもある。恐怖を感じたときや、興奮したときに発現するケースが多い。
仙骨を持つ者は、感情をコントロールするすべを身につけないと、魔法が暴発して、自分や周囲に害を与える危険がある。特に怒りが他の感情を完全に排除したときに、魔法が暴発するケースが多い。よくあるのは、単純に魔法が術者の意図しないときに、あるいは意図しない対象に向けて放たれたり、自身も手に負えない式神を呼び出して、これに命を奪われたり、といったパターンである。
仙骨を持つ者同士は、運命的に出会いやすい傾向にある。
○ 帝室庁侍衛部典儀課 / ていしつちょう-じえいぶ-てんぎか
帝室庁は内閣府の外局。元々は宮内庁とは別個に、皇室に関する事務を担っていた。警察予備隊の組織と同時に、秘密裏に設置された。根拠法は法律ではなく秘密条約で、存在は秘匿されている。その秘匿性のため、国内法に抵触しそうなことがらもむりなく扱えることから、管轄事項がどんどん増えていった。現在は、国家戦略に関する、さまざまな活動を行う。
侍衛部の他には、国内外の世論を誘導する宣示部、いわゆる諜報機関の諜知部、職員の健康増進や治療にあたる医事部などがある。国が重要とみなした事項を幅広く扱うので、部ごとの独立性が極めて高い。
侍衛部はその中で、当初は皇居警察本部とは別個に、皇室の身辺警護を担っていた。だが、のちにそれに加えて、政府要人や国賓の警護も行うようになった。
典儀課は、要人に向けて放たれた式神の除去を担う。そのほか、儀式や行幸のスケジュールに関して宮内庁に、他国訪問のスケジュールに関して外務省に、助言を行う。いわば、陰陽寮を現代に蘇らせたようなもの。時には、防衛省・海上保安庁・警視庁などから、助力を依頼されることもある。
○ 東京成鸞館高等学校 / とうきょう-せいらんかん-こうとうがっこう
東京都台東区にある高校。
起源は加賀藩の藩校。明治維新後に石川県立高校になった。戦後私立高校となり、姉妹校として1981年に開校された。
偏差値は、全国でも上位に入る。だが、理系は軒並み医学部への進学を目指すため、東大進学率はそれほどでもない。そのせいで、あまり名が知られていない。
中学校も併設されている。中学校は1学年60人で、高校には自動的に進学できる。高校は1学年150人で、90人を新たに試験で選抜する。
成鸞館高校を略して「ナル高」、成鸞館中学を略して「ナル中」という。
○ ハナ・カフナ
ハワイ諸島に伝わる魔道。使い手を、カフナという。
チャントと呼ばれる祈祷文を詠唱し、天候を制御したり、病人を癒したり、人を呪殺したりすることを得意とする。ほかには、ワイルアといって、術者自身がマナを体内に蓄えることにより、自身の周囲に存在する元素だけを利用する場合よりも、強力な魔法を発動する技術も有する。
○ 巫師 / ふし
巫術を行使する魔法使い。シャーマンの訳語。
○ 巫術 / ふじゅつ
自ら直接、異界に赴いたり、自身に神や霊を憑依させるなどして、超自然的な存在に働きかけ、それによって効果を生じる魔法。帰神法を含む。
該当する魔法を多用する魔道には、鬼道、トゥスが存在するほか、ツングース語派、ウラル語族、マヤ語族に属する言語の話し手たち、北米先住民のいくつかなど、かなり多くの民族に伝わる。
○ 北下荘大学 / ほっかそう-だいがく
鎌倉市にある私立大学。
文・法・経済・教育・理・看護の、6つの学部を擁する。江戸幕府が開かれたときには、すでに「北下荘」として、鎌倉に存在していた。明治維新後に、私大となった。
偏差値は、私大の中でトップ3に入る。他の2校と併せて、受験業界では、「私立御三家」と俗称される。
○ 魔道
魔法の体系。鬼道、修験道、トゥス、陰陽道、宿曜道、スーフィズム、カバラ、ラウル、ルーン、オガム、ハナ・カフナなどが該当する。
○ 魔道士
SSSの関係者はこの言葉を、「いずれかの魔道に属する魔法を行使する魔法使い」か、「公務員である魔法使い」の、どちらかの意味で用いる。
○ マナ
事象を制御する魔法は例外なく、マナをエネルギー源として発動する。ハナ・カフナでは、特に重視される概念である。
○ 魔法
事象の予測と制御に関する実用的な技術のうち、自然科学の見地からは、相関関係または因果関係が証明されないもの。実用的なものに限定されるので、ただの迷信は含まない。
○ 魔法円
サモンズを行うときに描く図形。必ずしも円でなく、例えば多角形でもよい。しかし、線が閉ざされて、外と中が完全に区別されることが必要。
式神から自身を守るために、作成される。サモンズを行う際に、魔法円を描くことは、常識かつ必須。
○ 魔法使い
魔法が使える人間。山伏、道士、リシ、マゴス、フェアリードクター、メディスンマンなど。
○ 寄り人 / よりびと
主として帰神法を行う巫師。
東北地方のイタコ、沖縄のユタとノロを含む。
現実には、寄り人は憑坐と同義語である。神や霊が憑依する山・岩・木・動物・人などを広く依代といい、そのうち人間であるものを、特に憑坐という。
だが、本作における寄り人は、霊媒と同義である。
○ ラウル
フィンランドに伝わる魔道。使い手を、ラウラヤという。
呪歌の詠唱によって、発動する。天候の制御、傷病者の治療、呪詛、呪詛返しなどの行為ができる。
最奥秘伝として、あるものがこの世に存在するようになった経緯を言い当てる歌を歌うことにより、そのものを意のままに操る、というのがある。これを唱えると、以後そのものは術者を、一切害することができなくなる。
○ ルーン
イングランド、スウェーデン、デンマーク、アイスランドなどに伝わっていた魔道。文字を刻むことによって、効果を生じる。上記の地域には、ルーンのほかにセイズ、ガンドという魔道も存在したが、現存しない。
○ 霊
魔法使いだけが知覚できる、生き物のように自らの意思で動いているらしいもの。幽霊、精霊、妖怪、妖精、悪魔などと呼ばれるものが、該当する。
肉体を持たず、魔法使いでない人間には、姿が見えない。物理的な現象の影響を受けない。だが、自らは物体に、物理的な影響を、与えることができる。
○ SSS
Sorcerous Secret Service(ソーサラス・シークレット・サービス)の略。直訳すると、魔道秘密検察局。
帝室庁侍衛部典儀課を指して、その存在を知る人間の間で、用いられる。が、正式な呼称ではない。この呼びかたが広まった理由は、誰かがふざけて言ったのを、語呂がいいからという理由で、周囲の者も使い始めた、というもの。




