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存在意義

作者: 春並 創

 カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・。


時計の針の音だけが響いている。決して針の音が大きいというわけではない。この時計よりも大きく音を発するものがこの部屋にはない。しかし、音を発しないだけで、多くのものは存在している。


机に椅子、本棚、テレビ、冷蔵庫・・・。人間が生活するには充分なものが存在している。存在するものの意義として、それらは使用されていた。机には物が置かれ、本棚には本が並べられ、冷蔵庫にはものが冷やされていた。しかし、現在機能していないものもあった。


照明器具は物を照らすためにこの部屋に存在していたが、この部屋に照らさなければならないものはない為、その機能を果たしていない。テレビはそれを観るものの為に映していたが、観るものがいない為その存在を全うしていない。ものにはそれぞれ存在することに理由がある。更に、ものにはそれぞれ役割がある。


机は物を置くためであり、ものを冷やす為ではない。その役割や理由は多岐に渡る。ものを作る役割、ものを運ぶ役割、ものを壊す役割・・・。それらが作れなくなった時、運べなくなった時、壊せなくなった時・・・存在する理由を失った時。それはもはや存在しているとは言えない。存在を失ったものは、存在を全うするものによって、その存在を抹消される。


床に転がっている人間の死体もそうだ。この人間も存在する理由を失った為、その存在を抹消された。この人間を殺したのは天井から垂れているロープかも知れない。もしくは割られた窓から入ってきた人間かも知れない。しかし、確かにこの人間は役割を終えた。


時計の針の音だけが響いている。死体に知らせる為ではなく、ただただ時間を刻み続ける。

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