婚約破棄ヒロイン
なんで思い通りにならないの!
あたし、ヒロインなんだからっ!
そんな声が聞こえるのですが……
今、現在、ここでは生きているのですよ?
何かあったら、苦しいのはご自分ですけど?
まあ、自分では無いので放っておきますけど、何か?
何なんでしょうね、あれ。
たぶん、私と同じあの小説を読んでたあの世界の人なのでしょう、
ヒロイン……
ああ、あの……身の程知らずの少女のことですか……
そういえば、あれ結婚式で終わったんでしたっけ?
花吹雪の中、馬車で花嫁の幸せそうな顔と、それにキスをする王子の姿……
幸せに……
そこで終わる人生なら良かったんでしょうけど?
マナーっていうか……
義務の社交が出来なくてもいいならね、
あの小説が終わったあとの、二次を読んだらヒロインにはなりたくないよね?普通。
私なら嫌だ。
何?初夜の儀式とか、他国との社交とか。
他人の見てる中で、閨事なんて無理無理。
だいたい、みんな数ヵ国語、話せるんだもの……
ちゃんと通訳いるけど、ね。
あちこちで聞こえる噂なんて通訳して貰えるわけないでしょ?
まあ、なりたいなら、ならせてあげる。
浮気性な役立たずな王太子なんて、いらない。
うふふ。
「どうしたのですか?」
ヒロインを押さえ込んでいる騎士に問いかけます。
「この者がっ!ディーンさまにっ」
まあ、許しもないのに話しかけてきたのですね。
「あなた、王太子さまに無礼をなさってはなりません。下位のものは話しかけられるまで、待つのがマナーですのよ。わかりましたね」
「愛されていないくせに!」
あー……そう来ましたか……
わかりました。
放っておきます。
お好きになさってください。
護衛の騎士たちに少女を他の部屋に連れて行かせる事を命じ、宰相閣下や近衛長官にことの顛末を伝えるように言いました。
序でに、殿下にも……
お知り合いならご自分でなんとかするでしょう。