実力
俺は筆記試験を終えて次の実技試験の会場へ向かっていた。
筆記試験を受けた結果、よく分からなかったから運任せにした。四択だったし。
「ん?」
会場に着いたらものすごい列ができていた。また待たなければならないと思うと俺は気が重くなった。すると俺の前にいる髪がサラサラの男が話かけてきた。
「きみ、平民なのかい?」
「ああ、そうだけど」
「やはりそうか! 知らないだろうからこの優しい僕が教えてやろう」
「なにを?」
「ここの試験官はなんでもその試験官と対戦するらしい、そしてその内容は一人一人違うらしいよ」
「へーそうなのか、わかりやすくていいじゃないか! ちなみにそれどこ情報?」
「それは、受けた人達に一人ずつきいたのさ」
「ご苦労様だな、教えてくれてありがとう」
「おお、それなら貴族であ――」
いいこと聞いたな、そういえば父さんと野性の魔獣以外と戦うのは初めてだな。ん? なんかサラオ君が言ってるが今は、試験に集中しよう。
あらからサラオ君はずっと喋っていたけど途中で諦めて喋るのやめたな。次はサラオ君か、その次は俺の番だな。
「――次256番、入れ」
やっと俺の順番に回ってきたか。
俺はゆっくりと扉を開けて部屋の中へ入った。
「お前で最後だな、256番リアム・ウェルシュ」
「そうですね、俺の後ろには誰も並んでいませんでした。」
「それじゃあ、始めるぞ」
「はい」
「お前の全てを俺に示せ」
「質問いいですか?」
「……なんだ?」
「別にこの木剣使わなくていいですよね? 」
「ああ」
「じゃあ、俺剣使えないんでこれでいきます」
(なんだこいつ舐めているのか? 素手だと? 騎士を目指す奴で剣を使わない奴はいない。)
俺は支給された木剣を壁へ立てかけ拳を握り構える。
そして俺は試験官の男へ向かって地を蹴った。
そのまま真っ直ぐ進み拳を試験官の男へ繰り出した。
すると拳と剣がぶつかり合い部屋に衝撃音が走り試験という名の戦いが幕を開けた。
(こいつ、なんてパワーしてやがんだよ! 16歳でここまでの力は普通ならないはずだ。一体今までなにしてたんだ!)
(流石に受け止めるよな、今一撃でわかったのは確実に俺より格上ということだ、面白くなってきた!)
そしてまた二人の攻防が始まった。
右の拳と左の拳を交互に繰り出して試験官の男に攻撃するも簡単に防がれてしまう。そこから手数を増やし左右の足で蹴りも攻撃するも防がれる。
「はぁ…はぁ…やりますね」
「まぁな、これぐらいやらなきゃここの教師は務まらんからな」
(ん? ちょっとまて、こいつ魔法を使ってねぇ。なぜ気づかなかった。)
試験官の男は背中に冷たい汗が流れたのを感じとった。
(なんて恐ろしいガキだ)
「じゃあ、今から本気出しますね」
「なに?」
「はァァァァァッ!!」
すると俺の身体から白い光が吹き出した。強化―己の身体機能を数倍に引き上げることができる無属性の魔法。
「ほう、中々の練度だな」
(これなら、上級生も相手できるだろうな)
真っ向勝負なら今は勝てない…だけど今持っている力を全てぶつけることができれば一矢報いることはできるはずだ。
この二人の頭の中から試験という文字がすっかり抜け落ちていた。そして二人の闘いは激しさを増すばかり。
「ハァァァァア!!!!」
「ウォォォォオ!!!!」
二人の雄叫びと同時に拳と剣がぶつかり合うそして二人が纏っている魔力が増大されていく。
――――――――――――――――――――――――
学園長室――
「それではフィリア様、こちらの学園ではそのように扱いますので」
「はい、よろしくお願いします学園長先生」
「では、また入学式でお会いしましょう」
「ええ、それではいきましょうか、コレット」
「はい、姫様」
するとそこに地響きが起こる。
「きゃッ!」
「姫様!!」
「なんじゃ!!!! この魔力の高まりは!!!!」
――――――――――――――――――――――――
ところ戻って試験会場――
「「ウォォォォォォォォオッ!!!!!!!!!」」
水を纏った剣と炎の纏った拳がぶつかり合いを続けていた。
俺は正面に炎を発火させ、後ろから蹴りを試験官の男に命中させた。
「くッ! この!」
試験官の男の攻撃が大振りになった。
――今だ!
「第3の拳……掌波ッ!!」
俺の掌から打ち出された衝撃波が試験官の男の腹に剣ともにめり込み吹き飛ばした。
「がはッッ!!」
倒したかのように思えたが試験官の男は立ち上がった。
「くそッ。 やるじゃねぇか」
「くっ!」
「それじゃあ続きをはじめようぜ!」
そして再び闘いが始まろうとした時ーー
「そこまでじゃ!!!!!!!!!!!!!!!!」
老人の声が会場全体に響き渡った。