それぞれの事情
あの事件からしばらくが経過した。
事件は避難誘導により目撃者がほぼいなかったため、交差点でのガス爆発という扱いになった。
事件を詳しく調べるため参考人となった『バーストガール』からの話によると、
『ダイナム』が暴れた理由はわからないらしい、『名無し』はその性質上、就職などが厳しく生活苦に陥りやすい。しかし、彼はその物体を爆発させるダイナマイトのような能力により、施設に職業斡旋があり生活が安定し、その一部を施設に寄付しており、事件の数日前にも『バーストガール』に意気揚々と話していたらしい。
それに気になるのは暴れだす直前につぶやいていたことだ。
しかし、今日はできるだけ『名無し』のことは考えない!
なぜなら今日は先日の一件により有給をもらえたからだ。
そして俺は一人暮らしの日課としてスーパーにいた。
平日の昼間ということもありそれほど人も多くない。
子供にクマの着ぐるみが風船を配っている。
この時間は気温も温かく時間がゆっくり流れるようだ。
手早く買い物をすまし、出口に向かった。
「ほらクマさんが風船くれるって」
「ありがとう!あっ」
どうやら子供が風船を受け取るときに受け取り損ねたらしい、掴むものがいない風船は宙にまい木に引っかかった。
「あー飛んでっちゃた」「ほら、クマさんもう一個くれたよ、よかったね」
そういうと親子は立ち去った。
微笑ましい光景だ
なんだろうか突然ヌイグルミがあたりを気にするかのような動きをしているきがする。
2、3度ほど首を振る、まるで誰もいないことを確認するかのように。
なんとなく身を隠してしまう、これも刑事の性だろうか。
周囲を見終わると、そばに置いてある袋から何かを取り出した。
水鉄砲だろうかプラスチック製と思われる大きなサイズのものだ。
そんなものをいったいどうするのか、それとも何もなく勘違いなのだろうか。
そんなことを考えていると、ヌイグルミは木に引っかかった風船に向かって撃った。
飛び出したのは水ではなくシャボン玉だった。
そのまま、シャボン玉はまっすぐ風船に飛んでいき風船にぶつかると風船を包み込み破裂した。
音はなくおそらく気づいたのは俺だけだろう。あのシャボン玉の動きは、、、
ひとまず今日はその場を立ち去ることにした。
翌日、俺は鹿倉さんに尋ねてみた。
「あの、聞きたいことがあるんですけど。昨日スーパーにいましたか?なんていうかヌイグルミ、、」
「・・・今日の夜ひまかな?」
「あ、はい大丈夫です」
あまり人前では話したくないってことだろうか。
そして今日の勤務を終え、居酒屋の個室にいた。
「あ、すいません。生2つ、あと、、、、、」
先に注文をすませる。
「で、何かききたいことがあるんだよね」鹿倉さんが口を開いた。
「聞きたいことっていうか、、」
そして俺は昨日見たことを話した。
「そうか、見られてたんだね。そうだね僕はあそこでアルバイトをしているんだ」
「え、アルバイトしてるんですか?僕らの職場って給料いいんですよね」
たしかに、あそこのルールはなく、呼んだときにすぐに反応できるなら、何をしてもいいことにはなっている。アルバイトがそれにあてはまるかは別だが、しかしそれ抜きにしても十分生活はできるはずだ。
「そうだね、でも私はあそこをやめたいんだ。あの場所に私はいてはいけないんだよ」
「え、なんでですか、あのときも鹿倉さんのおかげで」
鹿倉さんは黙ってしまった。
「あの、シャボン玉の力?に関係あるんですか『ライトニングガイ』みたいにスーツの力なんでしょうか?」
「あのスーツはシャボン玉の大きさなんかを調整もできる普通のパワードスーツだよ」
「じゃあ、シャボン玉のあの動きは?」
「・・・あれは『名無し』の力なんだよ」
「じゃあ、鹿倉さんは『名無し』なんですか、でも、、」
見た目は人間に見えるし、、、
「僕は『名無し』でも人間でもない中途半端な存在なんだよ」
?よくわからない。
「そんなことあるんですか、でもそんなこと、資料にも書いてなかったですよ」
「うん、『名無し』にはわかっていない事が多いからね、天江さんは知っているが、私はハーフのようなものにあたるんだよ。あそこにいるのは『名無し』に関する資料を作るためだよ」