初めてとの出会い2
最初に目に入ったのは、翼である。
『名無し』は一目でわかると聞いたが確かに一目でわかった。
それにそいつは羽毛のようなものに包まれているが服を着ているようには見えない。
「まあ、聞きたいことも言いたいこともあるだろうが挨拶が先だ、一応先輩にあたるからな」
そう天江さんに促されたので挨拶をすることにした。
「はじめまして今日から配属になりました須原ゆうきっていいます。よろしくお願いします!」
新しい職場での仕事は大変になりそうだ。
まさかの無反応である。流石にここまで歓迎されてないとは思っていなかった。
「まあ、ここのやつらはこういうやつだよ、気にすんな紹介は俺がしてやるから」
天江さんはそういうと左側に手を伸ばした。
「左から紹介しよう彼というかなんというか、まあ彼は見てのとうり『名無し』だコードネームはクレイだ12歳らしい、喋るところは見たことがない」
そう紹介された『ネイムレス』は身長こそ12歳のそれだが、見た目は確かに人間ではないというか
まさに泥人形である。ファンタジーものにでもでてきそうな「クレイゴーレム」のような見た目だった。
「よろしくお願いします。」
確かにこれでは喋れるかどうかも確かではない心のなかで少し納得した。
「次に彼は人間だ名前は片岡光19歳だ。まあ見た目どうりガラのいいほうではない」
天江さんのいうように片岡光という少年の見た目は髪は金色で装飾品をゴテゴテと身に着けたその見た目は感じのいいほうではないのは一目でわかる。そんなことを考え彼を見ていると突然彼は口を開いた。
「いいか、お前が何歳だろうとしったことじゃねぇ!ここでは俺が先輩だ。そしておれのことは
『ライトニングガイ』と呼べわかったな片岡なんて呼ぶんじゃねえぞ!」
ライトニングガイか・・中二病でも引きずっているのだろうか、
なんで署内にこんなやつがいるのだろうか。
「あ、天江さん。なんであんな名前名乗ってんですかあの子」
つい、事態のわからなさに助けを求めてしまう。
「あの子は複雑でな。ある研究所のご子息だったんだが、火事で両親を失いそのときたまたま
片岡の隣にいる『名無し』に助けられてそれ以来『名無し』はヒーローなんだとよ。この町じゃ『名無し』の肩を持つやつは白い眼で見られるし、あんな風貌なのもそのせいなのかもしれないな。」
ほかにも聞きたいことはあったが少年の意外な過去に俺はそれ以上追及しないことにした。
「そして真ん中のやつが見ての通り『名無し』だ。最も見た目は人間から離れているかもしれんな年齢などの細かいことはよく知らん片岡とはコミュニケーションをとってるようだから喋れるのかもしれんが喋るとこは見たことがない。『ストームウィンドウ』と呼ばれている。」
この部屋に入ってずっと気になっていた。どう考えても飾りには見えない羽が生えていて、全身が羽毛で包まれている。それに服を着ていない羽毛で隠れてこそいるがつまり・・
などと考えているうちに紹介は次に進んでいく。
「この人は鹿倉賢さん今年36歳だったかな。一応ここで『ファンタスティックバブル』って名前もある」
俺は彼を一瞥した。少し太っているように見えるが背が高いおかげかそこまで気にならない85kg
ぐらいだろうか、他には特に何の特徴もない人のように見えた。
「あ、あのやはり『ファンタスティックバブル』って呼んだほうがいいんでしょうか?」
ここにいるってことは明らかに人間の見た目をしているが『ネイムレス』に関係し彼らにを尊敬や憧れを抱いているかもしれない。このなかじゃ仲良くできそうだし機嫌をそこねて仲が悪くなるのは避けたいところだ。
「いや、それはやめてくれ」それは、落ち着きながらも少し暗い返事だった。
一般人としては普通の解答なのだろうがここにいる以上何かの理由があるの思っていたので、
意外な答えだった。
彼はそう答えたあと
「私には、そう名乗る資格はないし、名乗るつもりもないよ」
そうつぶやいたが誰も聞きとることはできなかった。
「片岡、あいつはいないのか?」
天江さんはあたりを見渡しそう尋ねた。
俺は、紹介された人と『ネイムレス』を数えた。
泥人形の『クレイ』、片岡君いや『ライトニングガイ』、鳥人間とでもいおうか『ストームウィンドウ』
、鹿倉さん、天江さん、そして俺、天江さんの話だと7人なはずだから確かに1人足りない。
最後の1人は人間なのだろうか、人間だといいんだが。
「姐さんなら、さっき出てったよ。それに『ライトニングガイ』だ」
『ライトニングガイ』はぶっきらぼうに答えた。
うーん彼の言い方じゃ人間かどうかわからない少し情報があれば心に余裕もできるってもんなんだが。
そんなことを考えていると後ろの扉が勢いよく開いた。
「あ、姐さんお帰りなさい。新人きたらしいですよ」
これが姐さん『ライトニングガイ』が呼ぶだけであって『名無し』なのか、
しかしなんて風貌だ。足や腕には真っ赤な装甲のようなものをつけ薄い緑の肌に炎のように赤く模様が浮かんでいる。それに、こいつも服を着ていない手足を除けば全裸だ、手足を隠す半裸だ新しすぎる。『名無し』には服という概念が存在しないのか。そんな俺を横目にこの『名無し』は会話を続ける。
「興味ないね。この顔だよ、私らが自分たちと少し違うからって自分の普通を押し付けて優位に立ってないと怖くて仕方ない、そんな顔。だから前に出てった2人みたいにすぐいなくなっちゃうのよ」
いきなりの言葉に少しいらだちを感じたが、
その言葉に今までの苦労を思わせるおもみもまた感じた。
「あまり新人をいじめないでやってくれ。こいつに辞められると俺も困るんだ。
こいつは『バーストガール』24歳らしいからガールと呼ぶにはきついものがあるが
他の『名無し』に比べると会話してくれるだけまだましってところだな。まあ、
言葉遣いはいいとはいえんがな。面倒見がよく施設では目立った存在だったらしい」
「ふん、よく言うわ。私たちが言葉遣いが悪くて読み書きが得意じゃないのは、あんたたちが人間として扱わないからじゃない。まあ一度、学校に通わせようって小学校に試験的に3人行ったけど結果は今の『クレイ』を見ての通り失敗、『クレイ』もあんなに学校を楽しみにしてたのに、段々と心を閉ざすようになって、今じゃ土の皮をかぶっちゃて可哀想に昔は「おねえちゃん」って言ってくれたのにさ。
まあ私が言いたいのは人見た目で判断するような奴とは仲良くしないってことよ」
そうはいうが、人間なんだろうか。まあ口ぶりからは
どうやら本当に『名無し』から慕われているらしい。それに他のやつらに比べてよく喋る。
それになんだ『クレイ』のあの体は本物じゃなかったのか。それでもまだ疑問は多い
「悪かったよ確かに君たちの見た目には驚いたさ。それより君たち『名無し』は服きないのかい?」
「『名無し』か、、そうですね人間様はさぞ自分と違うことを気になさるのですね」
彼女はそういうとそっぽを向きどこかへ行ってしまった。何の答えにもなってない、
それに皮肉であろうがちゃんと敬語は使うんだな。
「須原さんだっけ、姐さんや『ウィンド』さんは俺たちみたいに生殖器が存在しないんだよ。
だから公然わいせつには当たらないから服は着なくていいんだよ」
「そういう問題なのかよ」
『ライトニングガイ』この子はそれで納得しているんだろうが俺にはすでに理解ができない。
これは俺がここを逃げ出すのも遠くはないかもしれないな。
「天江さんいいんでしょうかそういう理解で」
この人ならもう少しましな答えをくれるかもしれない
「そもそもやつらに人権はないんだから人間の法はあてはまらないだよ」
これはこれで別の角度な答えだが求めている答えでもない気がする。
まあ、答えなんてないんだろうが今日は考えることをやめることにした考えてもわからないことが
多すぎる。
その後、俺は軽く引き継ぎの業務をし今日の仕事は終わりをむかえた。