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第一章 六話「振り返るは地獄」

シクトリアヌ湖で異変を感じたアスラオスとシオン。二人は急いで魔法城下町に戻るが、そこにあったのは地獄だった。

セントラント魔法城下町は、一帯が濃い霧に覆われており、城下町の住民は不安を募らせていた。

「これは… 悪なる力がここに集おうとしていますね…」

そう呟くのは、セントラント城下町の中心にそびえ立つ一つの城、アリアント城の女王、ラスシアール・シン・セントラントだった。

「結界のしっかり見ておくように。異常が起きたらすぐ魔法鉄道を向かわせて」

ラスシアールはそう言うと、手に持っていた金色の杖で床を突いた。

「親愛なる民を守る為に、我、力を解放せん」

ラスシアールの足下に魔法陣が展開される。

「アルシフォンスターアルガーダ…」

アルシフォンスターアルガーダ。別名、降り注ぐ星の監視。光属性最上位監視魔法である。広範囲を徹底的に監視し、あらゆる隠蔽魔法の効果も効かない最強の監視魔法をラスシアールは行使した。



「監視魔法か… なら、強行突破が最善か…」

そう呟くのはフードを被った男。男は山の頂上からセントラント魔法城下町を見下ろしていた。

「悪しき魔物よ… 今こそその欲望を満たす為に喰らい尽くせ。」

男がそう言った瞬間、山から溢れんばかりの魔物が表われ、城下町に向かって行った。


「監視魔法に反応… こ、この数は…!! 今すぐ南側に近衛隊と魔法鉄道を向かわせて!!」

ラスシアールが指示はすぐに、セントラントに停車している魔法鉄道全てに伝わった。勿論、セントラントに向かっているシオンにも。


「じ、女王様から緊急の連絡…」

「どうした、シオン」

シオンがラスシアールからの連絡を受け、言葉を無くす。

「セントラントが… 襲撃を受けたって…」

連絡の内容を知ったアスラオスも驚愕する。

「急ごう。一刻も速く」

シオンはアスラオスの言葉を受け、D51の速度を上げた。


~10分後~

D51が進む先に霧が立ち込めた。シオンはD51の前照灯をつけ、霧の中を進んだ。

「もうすぐセントラントが見えるよ」

シオンはアスラオスに語りかける。

「セントラントに襲撃か… 事態が大きくなければいいが…」

D51が霧の中に入って間もなく。霧を抜け出し、セントラント魔法城下町が目の前に映った。

「そ、そんな…」

シオンは驚愕する。目に映るのは綺麗な城下町では無く、激しい炎に包まれた見るに悲惨な城下町だった。

「シオン、あれを見ろ」

アスラオスが指を指した方向には、魔物が建物を壊し、住民を食い荒らしていた。

「俺は汽車を降りて住民の救助を行う。シオンは魔物を掃討してくれ」

「分かった」

シオンが魔力を込める。するとD51が光り、宙に浮いた。D51は飛行を開始し、セントラント魔法城下町へ飛んだ。


「よし、降下する」

セントラント魔法城下町の上空へ来た時、アスラオスは運転席から飛び降りた。降下しながらサーベルを抜き、真下の魔物に刃を向ける。

「アルゼンタルスクエア!」

シオンは着地と同時に全方位衝撃魔法を行使。周辺の魔物を一掃した。

一方シオンは上空から見える魔物を全て殲滅し続けていた。

「数が多すぎる…!」

魔物鉄道が飛行魔法を行使する際は、大量の魔力を消費する。さらに立て続けに攻撃魔法を行っている事もあり、シオンの魔力は徐々に少なくなっていった。


城下町で住民の救助を行うアスラオス。近付く魔物を倒しながら燃える城下町を走る。

「あ、あれは!」

アスラオスが、前方に負傷した男を見つけた。

「おい!大丈夫か!!」

その男は鎧を身につけており、アスラオスはすぐに近衛隊の人だと分かった。男は右足から出血しており、歩くのは困難だった。

「こんなの… 嘘だ…」

男が呟く。

「おい、何言って…」

アスラオスは男が指を広場を指していることに気づく。アスラオスは指のさす方向を見た。

「こ、これは…」

広場に散らばる腕と足。ベンチや銅像に肉片がこびりつき、広場が血の色に染まっていた。

「…っ この匂い…」

アスラオスは血肉の臭いを嗅いで鼻を押さえる。

「デ、デスタイアント…」

男はまだ呟く。

「デスタイアントがこんな狭い広場に居る訳…」

アスラオスがそう言った時。広場の地面が噴気し、地中から巨大な魔物が出てきた。

アスラオスは男を抱えて走った。しばらく走り、建物の屋根に飛び乗り、広場を見た。

土煙が晴れ、建物をなぎ倒しながら表れた魔物は、いくつもの触手を持ち、目は赤く、城一つを丸のみに出来るくらい大きな、上級変異魔物、『デスタイアント』だった。

「そんな… デスタイアントが何故ここに…」

デスタイアントは建物をさらになぎ倒しながら城下町を破壊し始めた。

建物の中に隠れていた人が逃げる為に出てくるが、デスタイアントはその長い触手ですぐに人を捕まえ、口の中に放り込んだ。骨が砕ける音がアスラオスの耳に入る。

シオンも上空からデスタイアントを視認した。

燃え盛る城下町に、デスタイアントの恐ろしくも不気味な咆哮が響いた。

おはようございます、こんにちは、こんばんは。筆者のleyteです。

前回の投稿から一週間ですかね。ちょっと投稿が安定しました。


今回の内容はいかがでしたでしょうか。ちょっと久しぶりの戦闘という事で気合いが入りました。次回はほぼほぼ戦闘かもしれません。


本小説をお読み下さり、ありがとうございます。

感想、アドバイスなど、どしどしお願いします。

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