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第44話「姫グリフォンの矜持」

「クルニャーン(縄張りを荒らすつもりはないよ。山頂に用事があるだけなんだ)」


 目の前のグリフォンに話しかける。

 とりあえずは話し合いを試みる。


「ガルルゥ!(なんだ貴様は? 人と慣れ合って誇りもないのか! それに見たこともない魔物だな)」


 グリフォンって高飛車なんだな……。

 それともこの個体だけ?


 どうやらうなり声はライオンがベースのようだ。

 見たことなくて悪かったね。

 毛が無いだけで、猫ですよー。


「クルニャン!(リル、ここは任せて!)」


 後方をチラリ見て、クルニャと伝える。

 言葉が通じるなら、どうなるにせよ俺が対応した方が良さそうだ。

 戦いになるとしても、戦うのは俺の役目だからね。


「クルニャーン!(俺たちは先を急いでる! できればお前たちとは戦いたくない!)」


 グリフォンに伝える。


「ガルゥー!(ふっ、なめおって。変な姿をしてるけど、貴様は猫だろ。それも下位種のな。猫ごときが私に勝てるものか!)」


 うーん……、話し合いができない。

 一応猫だと気づいてくれたけど。


 ツンツンガルガルしてくれちゃってまあ……。


 そんなやり取りをしている間に、他のグリフォン数体が羽ばたいて来て、近くに舞い降りた。

 みんな(わし)の上半身と翼に、獅子(ライオン)の下半身だ。


 全部で十体か……。


 やってきたグリフォンがうなり声をあげる。


「ガルルル……(姫様。愚かなやつらは、いつもと同じく返り討ちにしてしまいましょう!)」


「ガルゥゥ(その役目は私めに!)」


 なんだ? みんなメスの個体か?

 初めにやってきたグリフォンはどうやら姫様だったみたいだ。


 どうやらガルガル系女子に囲まれてしまったようだ。


 もう素通りさせてもらうのは、無理だろう。


 だったら、押し通らせてもらおう。


「クルニャーン!!(面倒だから同時にかかってこい!!)」


 俺は前に出て、グリフォンたちを挑発する。


「ガルルゥゥゥ!(なめおって!)」


「ガルガルゥゥ!(グリフォンの魔法を人のそれと一緒にするなよ!)」


「ガルルルゥ!(上位魔法に包まれて後悔するがよい! くらえっ!)」


 グリフォンたちは俺を囲む位置に移動して、魔法の集中砲火をはじめた。


 四大元素魔法の乱れ撃ちが俺に向かって飛んでくる。

 それぞれ単一の属性だけど、威力はなかなかのものだ。


「クルニャ……(だけど……)」


 火魔法は、“火無効”を持ってるから避ける必要すらない。

 風魔法は、風刃の凶悪さに比べれば、そよ風みたいなもの。

 水魔法は、土魔法で壁をつくってかわす。

 土魔法は、物理で殴りこわす。


「クルニャン?(もう終わりか?)」


 傷一つ負うことなく立っている俺を見て、グリフォンたちが息をのむのが伝わってきた。


「ガルゥゥ(くっ……)」


 姫グリフォンがいまいましそうに俺の方を見る。


 さてどうしようか?


 というのも、加減が結構むずかしい。

 強すぎる魔法を撃つと殺してしまうからだ。


 女性っぽいグリフォンたちを滅殺するのは、酷くためらわれる。

 それにこいつら……、俺との戦いにフェアで、リルたちを人質に取ろうとする様子もないんだよね。


 リルは簡単に人質にはならないだろうけど、ディーンなんかはグリフォンから逃れられないだろう。


 なんかね……。


 悪い奴じゃないと、思っちゃったんだよね。


 よし、これでいこう。


「クルニャン!(いくよ!)」


 “雷魔法”と“風魔法”を合成。


 威力は抑えて弱めにね……。


――――雷爆嵐(サンダーストーム)


 俺を中心に周囲に雷撃がほとばしる。

 

「「「ガルゥ!?(ぐああぁっ)」」」


 グリフォンたちに雷撃が直撃する。


 一瞬の後、全グリフォンがその場に崩れ落ちる。


「クルナー(上手くいったかな)」


 俺は姫グリフォンに近づく。

 意識はあるようだけど、雷撃をうけたためか上手く体を動かせないようだ。


「ガルゥ……(くっ……殺せ!)」


 いや、殺さないから。

 殺さないために雷撃使ったんだからさ。


「クルニャン(俺たちの目的は黄金の木の実なんだよ。だからもう邪魔しないでね)」


 グリフォンたちは負けを認めてくれたと思う。

 姫グリフォンは俺の言葉を聞いてうつむいて沈黙している。


 ふいに姫グリフォンは顔を上げ、


「ガルゥ……(命を奪おうとした私たちを許すとは、なんという心の広いお方……。お名前をお聞きしても?)」

  

 俺の名前を聞いてきた。


 あれ? なんか様子が変だぞ?


「クルニャン(お、俺の名前はシュンだけど)」


 不意打ち受けるとつい答えちゃうことってあるよね。


「ガルガルゥ……(シュン様……)」


「クルニャ……(おーい……)」


 姫グリフォンの眼差しから敬意に似たものを感じる。


「ガルゥゥ!!(よいか、お前たち! われらはこれよりシュン様の配下となる!!)」


 ちょっと姫様……。


「ガルゥゥ!(姫様の仰せのままに!)」


「ガルルル!(我ら一同、姫様とシュン様とともに!)」


「ガルガルッ!(ついに姫様にも春がやってきたわね!)」


 ちょっと……。

 勝手に配下になられても……。

 それに姫のお相手にされちゃってない?


 こいつら人の話を聞いてくれない!?


 俺が欲しいのは配下じゃなくて、モフモフした毛なんだってば~!


「クルニャーン!(リル、助けて~!)」

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