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第37話「肉じゃがをカレーにリメイク!?」

 イモムシは意外にもクセに……、

 ……とりあえず土魔法を手に入れた。


 今までに覚えた魔法は四つ。

 “火魔法” “風魔法” “土魔法” “雷魔法”


 この内、火、風、土魔法は四大元素魔法に属する。

 雷魔法は派生魔法に分類されるらしい。

 持ってない四大元素魔法はライミーが使ってた水魔法だけになった。


 水魔法を使ってくる敵と戦いたいね。

 ミーナに水魔法を使う魔物を教えてもらおうと思った。


「クルニャン!(さて、最下層をめざそう!)」


 俺はダンジョン探索を再開した。





 俺の記憶が正しければ、もうすぐドラゴンのいた最下層だ……。


「クルルゥ……(なんか嫌な予感がしてきた……)」


 ここに来るまで考えてなかったけど、ボス復活とか新たなボス出現とか無いよね。


 この考えがフラグだったかもしれない……。


 ドラゴンのいた最下層の広間まで近くというところまで来ると、重いものを引きずるような音が聞こえてきた。

 ズルズルズルというその音が不安をかき立てる。


 不安に思っていてもらちが明かないので、俺は広間に近づき物陰からそっと中をのぞいてみた。


「クルゥ……(何あれ……)」


 広間をドラゴンだったもの(・・・・・)が徘徊していた。


 肉はほぼ削げ落ちていて、骨だけの状態に近い。

 大きさは以前のままなので、とてつもなく巨大だ。

 俺とのサイズ感は、まるでカブトムシと象だ。


 ドラゴンゾンビ、またはドラゴンスケルトンといったところだろうか。


 どうしてこんなことに……。


 ちゃんと火葬しなかったのがまずかったか。

 ドラゴンの濃密な魔力の残滓(ざんし)が原因とかだろうか。


 理由は分からないけど、目の前のものが現実だ。

 意思と呼べるかすら分からない何かが、ドラゴンの骨を動かしている。


 素材を手に入れるために戦うか、それとも放置して逃げるか。

 こんなダンジョンの奥底には人も来ないし、放置しても危険はないだろう。


 でも……。


「クルナー……(戦うか……)」


 素材は捨てがたいし、俺はもっと強くなりたい。

 そんなわけで逃げずに戦うことにした。


 俺が広間に出ていくと、何かを感じ取ったのかドラゴンスケルトンがこちらを振り向いた。


「グギギギッギィー!!!」


 歯ぎしりに似た音を立て、こちらへ殺意を向けてきた。

 その殺意は生あるもの全てを(ねた)むかのように、暗くよどんだものを感じさせる。


 以前、リルを助ける強さを手に入れることができたのは、このドラゴンを(かて)にすることができたからだ。

 そのドラゴンの今の姿を見て、少し悲しい気持ちになった。

 以前のドラゴンはまさに自然そのものと言っていいほど、雄大で強大な存在だったからだ。


「クルニャー!(成仏させてやるからな!)」


 俺はドラゴンスケルトンと対峙(たいじ)した。


 ――炎熱嵐(ファイアストーム)――


 火と風の魔法を合成した。

 アンデッド系には火属性が効きそうだと思っての攻撃だ。


 炎の竜巻が、ドラゴンスケルトンを包む。


「グギギィ!!」


「クルニャー?(効いたか?)」


 俺は油断せずに、様子をうかがう。


 炎が消え去ったあとには、ほとんど変わらない姿のドラゴンスケルトンがいた。

 いや……、わずかに残っていたドラゴンの肉が燃え落ち、完全に骨だけの状態になった。


「ギッギッギィー!!!」


 炎は全く効いていない様子で、俺に向けて骨の腕を振り下ろしてきた。


 攻撃をかわそうとして――。


「ルニャ!?(なっ!?)」


 かわしたつもりが、ドラゴンの一撃をもろに食らった。

 俺は弾き飛ばされ、洞窟の壁に激突した。


 痛っててて……。


 すぐさま起き上がって体勢を整える。


 攻撃を食らった理由はなんとなく分かった。

 どうやら骨だけのためか、関節の動きに縛られず動かせるようだ。

 かわしたと思ったら、そこから攻撃が伸びてきた。


 新手の戦闘スタイルだな……。

 真似したくはないけど。


 それにドラゴンスケルトンは、赤竜の時に火耐性を持っていたためか、火属性の攻撃が効きづらいようだ。


「クルニャー……(どうしよ……)」


 良い攻撃手段が思い浮かばない。

 地道に打撃で攻撃していっても、巨大すぎて削りきるのに時間がかかりすぎる。

 当初の目的の素材をボロボロにするのも、なんだかなあと思うし。


 何か弱点みたいなものはあるのだろうか。

 

 そもそも何が骨を動かしてるんだろうか。


 何か霊的なもの?

 それとも何か呪い的なもの?


 全然わからない……。


 とりあえず俺は全力をぶつけてみることにした。




 “火魔法”と“風魔法”と“土魔法”を合わせようと意識を集中する。

 集中といっても時間はわずか一瞬だ。


「クルル……(うーん……)」


 何か足らない感じがあるんだよな。

 料理の味付けをしてて、調味料が一つ足らない感じというか。


 肉じゃが作ってたのに、醤油(しょうゆ)が切れてて困る感じだ。


 四大元素魔法のうちの一つを持ってないからだろうか?

 四つを合わせたら何か完成する予感がある。


 誰か俺にせうゆを!!


 というのは冗談として、どうしようかな……?


 三つだけの合成でも、結構な威力が出る予感はある。

 

 よし!


 水魔法の代わりに、雷魔法を合わせよう。


 名付けて、肉じゃが作ってたら醤油が無かったからカレーにしちゃったよ――だ。


 “火魔法”と“風魔法”と“土魔法”を合わせ、さらに“雷魔法”をスキル合成する。


 おっ!?


 なかなか良さそうだぞ。


「クルニャーン!!(行くぞ!!)」


 ――聖光の祝福(オーロラブレス)(もどき)――


 複数の光り輝くレーザーが、ドラゴンスケルトンを各方向から貫く。


「グギギギィィィ!!」


 ドラゴンスケルトンは(まばゆ)い光に包まれた。


 おそらくだが、分かったことがある。

 四大元素魔法を全て合成すると光属性的な魔法になるのだろう。


 今回は水魔法が無かったから完全ではないけど、それに近いものにはなった気がする。

 やっぱり、アンデッドには光属性だよね。


 今度の魔法は間違いなく効いてる手応えがある。


 光が徐々に収まっていく――。


 その時、ドラゴンスケルトンの方から、黒い光が俺に向かって飛んできた。


「クルニャ!?(何だ!?)」


 あまりの速度に俺は避けきれず、黒い光を浴びてしまう。

 黒い光に禍々(まがまが)しさを感じた。

 黒い光を浴びた瞬間、黒い髑髏(どくろ)を幻視した気さえした。


 もしかして……、完全な光属性では無かったために、完全に倒すことができなかったのか……?


 やばいか!?


 俺は内心あせったけど、黒い光は俺の体に吸収されてすぐに消えた。

 特に痛みやダメージは無い。


 気になって自己鑑定をしてステータスを確認したけど、特に変わった様子もない。

 状態異常も特に無かった。

 

 今の黒い光は、いったい何だったんだ……?


 まあ、いいか……。


 耐性をいくつも持ってるから、どれかで抵抗(レジスト)できたのかもしれない。

 そんな兆候はなかったけど、そういうこともあるだろう。


 気を取り直してドラゴンスケルトンの方を見ると、さっきまでの禍々(まがまが)しさが消えている。

 不快な歯ぎしり音も、もう止んでいる。

 そこにあるのはただの巨大な竜の骨だった。


 ちょっとキラキラ光ってる気がするけど、竜の骨ってそういうものなのだろう。


 予定外のことがいろいろあったけど、当初の目的達成だ。

 やっぱりダンジョンは一筋縄では行かないと、あらためて思ったのだった。

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