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第35話「適応するって大事だよね」

 俺たちは街に戻ることにした。

 

「ねえ、ライミーもうちに来ない? 広いから遠慮しなくて大丈夫だよ!」


 リルがライミーを自宅に誘っている。

 まだ短い付き合いだけど、悪い子じゃないってことはなんとなく分かったからね。


「…………行く。

 …………特に予定ないから」


 そういうわけで、ライミーも一緒に家に帰ることになった。


 ただ……、俺には帰る前にやることがある。


「クルニャン!(ちょっと待ってて!)」


 そう、サンダーバッファローのハンバーグを食べて、スキルを手に入れたのだ。

 スキルは“雷魔法”だった。

 

「クルニャ!(ちょっとみんな川から離れていてね!)」


 使い方はいつものように感覚的に分かる。

 俺は川に向かって雷撃を放った。


 川に雷撃が走り、バチバチっと大きな音がする。

 少しすると、魚が数匹プカーっと浮いて来た。


 うん、いい感じ!

 使い勝手の良さそうなスキルだ。


「シュン、凄いね! また新しいスキルを覚えたんだね!」


 リルは、俺がスキルを見て(・・)覚えてると思ってる気がする。

 実際は食べて(・・・)覚えてるわけだけど。

 最近はあまりないけど、以前はわざとダメージを受けて覚えることもあった。

 ダメージを受けて覚えることが最近なかったのは、以前よりは強くなったからかもしれない。


「クルニャン!(リルの美味しいご飯のおかげだよ!)」


 美味しいし、スキルを覚えられるし、リルのご飯は最高だよ!


「…………食べた魔物?」


 お!?


 ライミーは何か気づいたのだろうか。


「クルルゥ(食べた魔物のスキルが手に入るんだよ)」


 ライミーは鋭いし、知識も多そうだから気づいてくれるかもしれない。


「…………魔物のスキル?

 …………??」


 ライミーが首をかしげる。


 もしかしてだけど、気づくどころか……俺の言葉――猫の言葉が理解(わか)ってる?

 態度から全部伝わってるわけではなさそうだけど、ところどころが伝わってる気がする。


 いいことを思いついた!


「クルニャーーン!(ライミーはプニプニしてて可愛いな~! これからも一緒にいたいな~! それと……、全身おっぱい!!)」


 言い切ってから思ったけど、全然いい案じゃなかった!?

 大体本心ではあるんだけど……。


 これで伝わってるかが分かるかも。

 だけど伝わってたらと思うと、ちょっと怖い。


 俺は恐る恐るライミーを見上げる。


「…………シュンのいじわる」


 ライミーは照れた様子で、ほっぺたをふくらませてる。

 少し顔が赤い気もする。


 これ、伝わってるやつだ。

 ど、どこまで伝わったんだ??


「クルナー!(ちがうんです、ちがうんです! 今のは、試してみたというか、本心というか、悪気はないんですぅ~)」


「…………シュンの言葉。

 …………少しだけ分かるよ」


 少しだけだよと、ライミーは言う。


 少しだけでも、言葉が伝わるのはやっぱり嬉しいかもしれない。

 リルとの間では言葉が通じなくても、気持ちが通じ合えてると思っている。


 けど、言葉が伝わるとそれはそれでできることが広がる気がする。

 以前、なんとか言葉を伝えようと、文字を書こうとしたことを思いだす。

 言葉が分かるようには書いた文字が伝わらずがっかりした記憶だ。


「ライミー、いいな~。リルにもシュン語を教えてね」


「…………いいよ」


 リルがライミーの手を取ってお願いしている。


 シュン語って……。

 猫たちには伝わるから、猫語だよ。

 

 これはいよいよ、ライミーにはうちに来てもらわないといけない。


 リルの料理でおもてなしだよ。

 俺や猫たちをいっぱいモフっていいからね。

 ミーナのご飯からは……、俺が身をていして守ろう。


「クルニャー!(家に帰ろう!)」





 俺は毎度のことながら、ズルズルと水牛を引きずって街まで運んでいる。

 気分はあれだね……、家で待ってるたくさんの猫たちのために食料を運ぶ働きアリだよ。


 待ってろよ、みんな!

 腹いっぱい食べさせてやるからな!


 首が少し痛くなってきたよ……。

 早く猫たちを育てて、俺はアーリーリタイアするんだ……。


 雷魔法が手に入ったし、ステータスの確認だ。

 俺は自己鑑定を発動する。


――――――――――

名前:シュン

種族:ファイアドレイク・キャット

レベル:136

体力:211

魔力:227


スキル:「自動翻訳」「自己鑑定」「火無効」

「毒無効」「暗視(強)」「飛行」「風刃」「猛進」「毒弾」

「咆哮」「火魔法」「風魔法」「雷魔法」

「混乱耐性(中)」「精神耐性(弱)」 


称号:「シャスティの加護」「毒ノ主(アスタロト)」「蠱毒の覇者」

――――――――――


 スキルが増えていくのは、やっぱり嬉しいね。

 これも猫女神(シャスティ)様の加護のおかげだな。


 「シャスティの加護」――――尋常ならざる適応力を手に入れる。異世界(どこ)でも生きていける。


 このスキルの説明を見るたびに浮かぶ言葉がある。


 生き残る種とは、最も強いものではない。

 最も知的なものでもない。

 それは、変化に最もよく適応したものである


 俺の場合は自分が生き残るだけではなく、仲間を守りたいのが第一だけど、そのためにも変わっていくことは必要だろう。


 そんなことを改めて思ったりした。





 街に到着した。

 

 ギルドへの報告は後にして、家に帰ってきた。


 リルがAランク冒険者になったためか、街に入るのもとてもスムーズだった。


 門のところで、水牛を運ぶための台車を貸してくれたよ。

 猫が街中で台車を引く姿はシュールだったと思うけど、街の人も段々慣れてきた気がするよ。


 ライミーのことで街に入る時に止められるかなと思ってた。

 スライム娘は今まで街中で見たことがなかったからね。


 驚かれてる感じではあったけど、止められなかった。

 Aランク冒険者の信頼度、はかりしれないな。


 最悪、俺と同じ従魔扱いになるかなと思ってたけど、どうやら獣人と同じ亜人のくくりかもしれないね。

 これは、冒険者登録もできちゃう予感。

 今は仕事で留守にしてるミーナに、あとで聞いてみないとね。


 そういえば、


「クルニャー?(ライミーってどんな種族なの?)」


 ちょっと気になって聞いてみる。


「…………ぞく?

 …………ポヨ族」


 ぽよ族?


「ポヨ族って言うんだ。リルは銀狼族だよ。ポヨ族ってなんだか可愛いね」


「…………ぽよ」


 確かに可愛い響きだ。

 プニプニポヨポヨさせてください、お願いします。




 帰宅して庭でくつろいでいる時のことだった。


 ドサッと音がしたので振り向くと、ライミーが地面に倒れていた。


「クルニャッ!(ライミー!)」


「ライミー! どうしたの!」


 ライミーはとても苦しそうな表情をしていた――。




挿絵(By みてみん)


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↓▼△魔物っ娘と魔獣の軍勢が世界を席巻する△▼↓
『ダンジョン育ちの“魔獣使い” ~魔物っ娘と魔獣たちの最強軍勢を率いて~』


↓ちょっとシリアスな、シュンとリルの出会い編↓
『万物異転、猫が世界の史を紡ぐ【出会い編】 ~出会ってすぐにモフられる~』
こちらも本作も、それぞれ独立した作品として楽しめます。
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